C51  Voodoo In Me (1990) [Alex Taylor]  Village Green  


C51 Voodoo In Me

Alex Taylor: Vocal
James Taylor: Vocal (1)、Back Vocal (2)
Jim Shepley, Ernie Lancaster, Donald Kinsey, Dru Lombar, Bryan Bassett: Guitar
Bob Greenlee : Bass
Lucky Peterson : Keyboards  
James Payne, Denny Best: Drums

1. He Will Break Your Heart [Jerry Butler, Curtis Mayfield] 
2. Vanessa [Alex Taylor]


 
ヴィレッジ・グリーンという日本のレーベルから発売されたテイラー兄弟の長男アレックス最後のソロアルバムで、残念ながら彼はその後 1993年に心臓麻痺で他界してしまう。次男ジェイムスや三男リヴィングストンほど有名にならなかったが、サザンロック、ブルースの分野では知る人ぞ知る存在だった。といってもソロアルバムの1972年の「ディナータイム」に続く3枚目で18年ぶりというから、かなり苦労したのだろう。酒と薬の罠から逃げ出せなかったのが早すぎる死の原因と思われる。

1.「He Will Break Your Heart」はカーチス・メイフィールドが在籍したインプレッションズのメンバーだったジェリーバトラーのヒット曲で、軽快な R&Bだ。その後ライチャス・ブラザースやトニー・オーランド率いるドーンがカバーしており、特に後者は全米1位のヒットとなっている。ここでのカバーも気持ちの良いデュエットで、コーラスではジェイムスがハーモニーを担当、最初のソロにおけるアレックスのしわがれた声に年季を感じる。セカンド・ヴァースはジェイムスがボーカルをとる。そして次はアレックスというように二人のリラックスした掛け合いがとてもいい感じだ。2. 「Vanessa」はブラスセクションをフューチャーした、ちょっとヘビーな R&Bで、カバー主体の彼のレパートリーの中では珍しい自作曲。アレックスのボーカルに迫力がある。ジェイムスは「バネッサー」という控えめなバックボーカルで加わっている。プロデューサーはヒュー・テイラーの「It's Up To You」C53と同じ、フロリダを本拠地とする Bob Greenleeで、ミュージシャンも同じ人たちが参加しているようだが、曲毎のクレジットがないため、正確なパーソナルは不明。

本国の米国でも、King Snakeというレーベルから発売されたはずなんだけど、流通量は少ないようで、中古市場でもほとんど見当たらない。日本ではポニー・キャニオン配給による、Village Greenから発売された。


C52  Chippin' Away (1990) [Crosby, Stills And Nash]   Atlantic



David Crosby, Stephen Stills, Graham Nash: Vocal
James Taylor: Vocal

Stanley Johnston, Craig Doerge: Producer  

1. Chippin' Away (Tom Fedora)


写真左はPromotional Copy (見本盤)で、AB面同一曲。


戦後東西に分割されていたドイツの統一では、東西を分断していた壁の取り壊しが象徴的なイベントだった。もともとはグラハムナッシュがソロアルバム「Innocent Eyes」1986 C43で取り上げていた曲で、1989年のドイツ・ベルリンの壁崩壊を記念して行われたコンサートに出演した CSNが歌い、その後JTをゲストに迎えて録音、シングルとして発売されたもの。発売期間が短期間で、その後 CSNのベスト盤やボックスセットにも収録されず、中古市場でもあまり出回っていない比較的レアなアイテムとなった。

シングル盤のレーベルにJTの名前がはっきり表示されている。歌の全編が4人によるコーラスで、その声は完全に混じり合い、特定の人物の声を識別することは難しい。JTの歌声ははっきり聞き取れないけど、曲もボーカルも開放感に溢れたいい出来だと思う。


C53 It's Up To You  (1990) [Hugh Taylor] Village Green


C53 It's Up To You



Hugh Taylor: Vocal, Back Vocal
James Taylor: Back Vocal
Livingston Taylor: Back Vocal
Kate Taylor: Back Vocal (1,4,5)
Alex Taylor: Back Vocal (1,3,4,5)
Pete Carr, Ernie Lancaster: Guitar
Bryan Bassett: Guitar (1)
Bob Greenlee: Bass
John Hall: Piano (5)
Bob Thames: Piano (1) 
Lucky Peterson: Keyboards (2,3,4)
Horn Section (省略)

Bob Greenlee: Producer

1. World Of Difference [Reid, Noble, Calhorn]
2. It's Up To You [Jerry Fuller]
3. Brick By Brick [James Payne, Bob Greenlee]
4. What Kind Of Fool (Do You Think I Am) [Ray Whitley]
5. Ol' 55 [Tom Waits]


写真下: 再発盤のジャケット表紙


テイラー家の末っ子、ヒュー・テイラー唯一のソロアルバム。1952年生まれでJTと4つ違いになる。音楽のキャリアとしては、Jimmy Buffettのソロアルバム「Volcano」C32や、「Kate Taylor」C30など、兄弟のソロアルバムなどにバックコーラスとして参加したことがある位で、一家の第2の故郷であるマサチューセッツ州のマーサズ・ヴィンヤード島に住み、不動産や建築などの事業を行いながら、地元のバンドで休日や結婚式などに演奏していたらしい。本作からはプロ音楽家としての野心は感じられず、チャンスを生かして一生の記念のために楽しんで作ったという感じだ。自作曲はなく、彼のボーカルも線が細くてアマチュアっぽい。サウンド的にも、明らかに低予算で作られたレコードだ。それでもヒュー自身の思いと、本作のために集まった兄弟のコーラスによる強力な家族の絆が、この作品を特別なものにした。特にアレックス亡き現在、テイラー兄弟全員がそろった唯一の公式録音として大きな意義がある(非公式映像音源では、兄弟全員によるザ・バンドの名曲「The Weight」のカバーで、リードはアレックス、ケイトとヒューという珍品もあるが)。

テイラー・ファミリーに共通するR&B色の強いポップスといったサウンドで、1.「World Of Difference」のようにスケールの大きな曲では、彼のボーカルの弱さがはっきり出てしまうが、それを支える兄弟のコーラスが聞こえてくると、何故かジーンとして、どうでも良くなってしまう。2.「It's Up To You」はリッキー・ネルソンのヒット曲で、ヒューの声質はこのような甘い曲に向いている。本作でもベストの出来だ。ここではJTの声は比較的聞き取ることができる。3.「Brick By Brick」はレコーディング・スタッフによる作曲で、大工でもある彼の思いが込められている。4.「What Kind Of Fool (Do You Think I Am)」もリラックスした心地のよいR&Bだ。バックボーカルがいかにも楽しそう。5.「Ol' 55」はヴィンテージの愛車に思いを寄せたトム・ウェイツの名曲で、イーグルスもカバーしている。本人のボーカル、バックコーラスとも本作の中では最もスピリチュアルな雰囲気が漂っている。プロデューサー、バックバンドはアレックスの「Voddoo In Me」C51とほぼ同じ。ギターのピート・カーは、デュアン・オールマンもいたマッスル・ショールズ・スタジオのギタリストで、その後はロッド・スチュアート(「Sailing」など)、S&Gのセントラルパークのコンサート、ボブ・シーガー、バーバラ・ストレイサンド(「The Woman In Love」など)に参加した人。

ケイトやアレックスとのデュエット(JTは不参加)を除いて、兄弟のボーカルはバックに徹するなど、地味な作りであるが、録音時の雰囲気がはっきり捉えられていると思う。正直いって本作の発売時には、そんなにいいと感じなかったけど、年月が経った後に聴くと、ずっしりくるのは自分自身が年をとって苦労を甞めたせいだろうか、彼の苦労が本当によくわかる。本作は当時長門芳郎氏が関わった日本のレーベル、ヴィレッジ・グリーンのみで発売された。その後ヒューは妻のジェニーと一緒にマーサズ・ヴィンヤード島にある風光明媚なゲイ・ヘッド・クリフで小さなホテル「Outermost Inn」(部屋数7室 価格的には高級)を経営、現在は引退している(HP Address: www.outermostinn.com/)。本作は長らく廃盤だったが、その後リイシューされたようだ(ジャケット・デザインは異なる。オリジナルのアートワークは彼の人柄が滲み出ていて素晴らしい出来だったので残念)。



C54  Marc Cohn  (1991) [Marc Cohn]  Atlantic  


C54 Marc Cohn


Marc Cohen: Vocal, A. Guitar
James Taylor: Second Vocal
Steve Gadd : Drums
Mark Egan : Bass
John Leventhal : Guitars
Bashiri Johnson : Percussion
Marc Cohen, Ben Wisch : Producer

1. Perfect Love [Mark Cohn]



オハイオ州クリーブランド州出身のマーク・コーヘンは、若い頃ヴァン・モリソンを聞いて音楽を始めたという。ジョニ・ミッチェル、ジャクソン・ブラウン、レイ・チャールズなどを聞き、大学時代はロスアンジェルスで演奏活動を展開、その後ニューヨークに移ってプロデビューしたのが本作だ。非常にシャープで理知的なアダルト・コンテポラリー・スタイルのロックだ。彼自身はピアノを弾いている曲が多いが、本曲 1.「Perfect Love」では彼自身による達者なアコギの演奏を聴くことができる。トーキング風のボーカルがディランのようにかっこいい佳曲。曲の後半から彼のボーカルに反応するような感じで JTのセコンドボーカルが聞こえ、曲に広がりと奥行きを与えるのに成功している。そしてエンディングはJTのボーカルのみ残り、フェイドアウトしてゆく。

ショーン・コルヴィンやロザンヌ・キャッシュのプロデューサーとしても有名なジョン・ラヴェンサルが製作にあたり、若いシンガーのデビュー盤としては大いに話題を呼び、全米アルバムチャート38位を記録した。しかしながら、その後の活動は地味。



   
C55  Harvest Moon (1992) [Neil Young]   Reprise



Neil Young; Guitar, Vocal
Kenny Buttrey: Drums
Tim Drummond: Bass
Ben Keith: Steel Guitar
Spooner Oldham: Keyboards
James Taylor, Linda Ronsdat: Back Vocal
Nicolette Larson, Astrid Young, Larry Cragg: Back Vocal (2)

Neil Young, Ben Keith: Producer

1. From Hank To Hendrix
2. War Of Man
3. One Of These Days


「Harvest」 1972 C11 発売20周年を記念して、当時と同じバックバンド(ストレイ・ゲンターズ)、バックシンガー(リンダ・ロンシュタット)と一緒に製作された作品。ハードなロックなどいろいろ挑戦している彼のなかでも、穏やかでカントリーの匂いを感じる原点回帰の作品。彼の数多いアルバムのなかでもかなり売り上げの多い作品(全米16位)。昔の仲間との再会という同窓会のような懐かしさと、過去を振り返るテーマの歌詞が、男らしい哀愁あふれる独特の雰囲気を創り出している。

1.「From Hank To Hendrix」はカントリー音楽の巨人ハンク・ウィリアムスと、ロック界の伝説的ギタリスト、ジミ・ヘンドリックスが出てくる歌で、ニール・ヤングの音楽的なルーツを観ることができる。少し遅れ気味な感じのドラムス、ゆったりとしたアコギとハーモニカ、アコーディオン、そしてスティール・ギターが懐かしいサウンドを持ってきてくれる。いままで歩いてきた音楽と人生を振り返る歌詞には万感の思いが込められている。バックコーラスにおけるJTの声ははっきり聞こえる。2.「War Of Man」はクールなムードを持った曲で、ここでのバックコーラスは多人数のため、JTの声を聞き分けるのは難しい。3.「One Of These Days」は過去の友人への不義理を詫びる曲で、ヤングらしいアコースティック・ギターのいつものサウンドが心地よい。それにしてもJTとリンダの声って、よく合っているなあ。むしろJTの声は、誰にでも合うということかな? 


 
C56 Sweet Airs That Give Delight (1993) [Various Artists]  Attic 

 

Stanley Silverman : Conductor
James Taylor : Vocal, A. Guitar (6)
Bruce French, Terry McKenna, Rick Whitelaw : Guitar
Rosemary Collins, Marilyn Dallman, Gary Kulesha : Keyboards
Arthur Lang : Double Bass
David Campion : Drums
David Campion, Michael E. Wood : Percussion

1. You Spotted Snakes  (From Midnight Summer's Dream, 1968)
2. Sigh No More, Ladies (From Much Ado About Nothing, 1983)
3. Come Unto These Yellow Sands (From The Tempest 1992)
4. Where The Bee Sucks (From The Tempest 1982)
5. When Daisies Pied (From Love Labour's Lost 1983)
6. Life On The Inside [Tom Hendry, Stanley Silverman] (From Satyricon, 1969)

注) 1〜5 の作者は 詩: W. Shakespeare, 曲: Stanley Silverman

製作: The Stratford Shakespearean Festival Foundation Of Canada

 

カナダ・オンタリオ州にある古典演劇の団体、ストラットフォード・フェスティバルが1993年に発売した創立40周年記念CD盤にJTが参加したもの。ストラットフォード・フェスティバルは、ウィリアム・シェイクスピア (1564-1616) の生地と同じ名前の町を本拠地とし、彼の作品を中心とした古典劇を中心とした活動を始め、その後サミュエル・ベケット、ブレヒト、イプセン、チェーホフ、オニール、テネシー・ウィリアムスなどの近代劇もカバーするようになり、現在では毎年60万人を動員する大イベントになっているという。CDには、歴代4人の指揮者によるシェイクスピア作品を中心とした劇中歌32曲が収められており、JTはスタンリー・シルバーマンが指揮した6曲に参加している。スタンリー・シルバーマンは若い頃はジャズを演奏、一時はクラシックのコンサート・ギタリストとして活躍したが、その後作曲家を志し、ストラットフォード・フェスティバルでシェイクスピア作品の劇中歌を作曲する。近年はクラシックやブロードウェイ・ミュージカルの作曲家として活躍する他に、JTと親交を深め、アルバム「Hourglass」のチェロのアレンジや、タングルウッドで行われるボストンポップス・オーケストラとのコンサートにおけるオーケストラ・アレンジを担当している。またポール・サイモンのミュージカル「Songs From The Capeman」やアルバム「You're The One」にも参加している。

1〜5はシェイクスピアが書いた詩にスタンリー・シルバーマンが曲をつけたもの。劇が作られた当時のメロディーが残っているか否か、私は知らないが、古今多くの人が彼の詩をもとに作曲しているようだ。このCDでも2 と5 につき、スタンリー以外の人の作曲によるバージョンが収められていて競作になっている。これらは古典劇に挿入される歌なので、どちらかと言えばクラシックのオペラに近い雰囲気があり、JTの歌としては大変異質なものだ。1.「You Spotted Snakes」は、「真夏の夜の夢」(1595-1596) の第2幕第2場で妖精達が歌う、彼らの女王のための子守唄だ。オーケストラとコーラスから始まるが、途中からリズムセクションが入り、1〜5のなかでは現代的なサウンド。2.「Sigh No More, Ladies」は「空騒ぎ」(1598-1599) 第2幕第3場の歌で、JTはピアノの伴奏のみで歌う。この曲のみ、ピアニストとしてゲリー・クレシャの名前がクレジットに明記されている(他の曲については、曲毎の表記がないため、CD解説書に記載されたミュージシャン全員の名前を上記に掲載した)。3.「Come Unto These Yellow Sands」、4.「Where The Bee Sucks」は「テンペスト」(1611) の挿入歌(前者は第1幕第2場、後者は第5幕第1場)で、オーケストラをバックにJTがソロで歌う演奏時間が2分に満たない小品。5.「When Daisies Pied」は「恋の骨折り損」(1594-1595) 第5幕第2場の歌で、オーケストラとコーラスによる伴奏。 これらの歌ではJTのクリアーな発声が際立ち、「きれいな英語で歌うシンガー」の面目躍如たるものがある。

6.「Life On The Inside」のみシェイクスピア作品ではなく、ローマのネロ皇帝時代の貴族の退廃を風刺した小説「サテリコン」(ペトリニウス著、フェリーニによる映画化で有名)に基づき、カナダの演劇界の重鎮、トム・ヘンドリーが書いた同名のミュージカルで歌われた曲。歌詞の内容が普遍的で、バックもピアノ、ベース、ギター、チェロ等による小編成のバンドサウンドのため、独立した曲として鑑賞できる出来となっている。ここでは音は小さめではあるが、JTらしいアコースティック・ギターも聴こえる。控えめな演奏・歌唱ながら、とてもいい曲だと思う。

JTの参加作品の中でも、最も異色のものだ。発売当時は通信販売で入手可能だった。時々中古市場に出てくるので、根気良く探せば見つかると思う。

[2009年11月作成]


 
C57  Up 'Till Now (1994) [Art Garfunkel] Sony 


C57 Up 'Till Now

Art Garfunkel: Vocal
James Taylor: Second Vocal (1), A. Guitar
Don Grolnick : Keyboard
Mark O’Connar : Violin
Jerry Douglas : Dobro

Jamea Taylor, Don Grolnick: Producer

1. Crying In The Rain [Carole King, Howard Greenfield] C66 E17
2. It's All In The Game [Sigman, Dawes]


アート・ガーファンクルのベスト盤だけど、ちょっと変わった内容で、ソロ時代の彼の代表曲の他、S&G時代の録音、人気TV番組サタデイナイト・ライブにポール・サイモンと出演したときの寸劇、そして本作のために新たに録音された曲1. 2.が収録されている。

1.「Crying In The Rain」は、お馴染みキャロル・キングとジェリー・ゴフィン夫婦の共作で、エヴァリー・ブラザースにより大ヒットした名曲。エヴァリー・ブラザースは50年代の後半から60年代前半にかけて大活躍した兄弟デュオで、「Bye Bye Love」、「All You Have To Do Is Dream」、「Wake Up Little Susie」など多くのヒットを飛ばし、S&Gのアイドルだった人たちだ。ここではアートのボーカルにJTがハーモニーをつけていて、その音選びはオリジナルにかなり忠実ながらも、ドン・グロルニックの洒落たアレンジで、はるかに現代的な雰囲気になっている。曲の後半で聞けるジェリー・ダグラスのドブロがいい。

2.「All In The Game」は後にアメリカの副大統領になったチャールズ・ゲイツ・ドウズが作曲、カール・シグマンが歌詞をつけ、トミー・エドワーズにより1958年にヒットした古い歌で、ポップス界ではトニー・オーランドとドーンがカバーしている。ドンのキーボード、JTのアコギ、マーク・オコナーのバイオリンなど、完璧なバック演奏だ。JTが自ら歌ってもよさそうなサウンドで、こんなにいいアレンジを惜しげもなくあげちゃうなんて、勿体ない。

ベース、ドラムス、エレキギターなどについては、ミュージシャンのクレジットがないので、誰が演奏しているか不明。



C58  Tonin'  (1994) [Manhattan Transfer]  Atlantic


C58 Tonin'

James Taylor, Alan Paul : Lead Vocal
Tim Hauser, Janis Siegel, Cheryl Bentyne : Back Vocal
Robbie Buchanan : Keyboards
Dean Parks : Guitar
Mike Porcaro : Bass
Carlos Vega : Drums
Joel Peskin : Tenor Sax

Arif Mardin : Producer

1. Dream Lover [Bobby Darin]


ソニーに移籍していたマンハッタン・トランスファーのアトランティック復帰作で、過去の人脈の総決算としてゲスト特集となった。フランキー・ヴァリとの「Let's Hung On !」(彼が在籍したザ・フォーシーズンズ 1965年のヒット曲。現代風のアレンジが最高)、フェリックス・キャバリエとの「Groovin'」(ザ・ラスカルズ 1967年の傑作)、この後1997年にがんのため他界するローラ・ニーロとの「La-La Means I Love You」(デルフォニックス 1968ヒットの名曲で、本作でのカバーは名演)、他にベッド・ミドラー、スモーキー・ロビンソン、B.B.キングなど考える限り最高のゲストと、ファン心をくすぐる選曲がたまらない。

JTは「Mack The Knife」(邦題「三文オペラ」)で有名なボビー・ダーリンが、1959年にヒットさせた自作曲 1.「Dream Lover」をカバーしている。マントラ側のリードはアラン・ポール(髪がふさふさしているほう)がとっており、他の3人のコーラスをバックに2人の掛け合いが楽しめる。他の曲に比べてパンチに欠ける出来であるが、スウィートでリラックスした感じで悪くはない。マントラはこの作品の前後でピークを越えてしまった感があり、個人的にも大好きなので残念であるが、根強いファンに支えられて、現在に至るまで地味ながらも着実な活動を続けている。

[2014年12月追記]
リーダーのティム・ハウザー氏は、2014年10月病気のため亡くなりました。ご冥福をお祈り申し上げます。


C59  Angelus (1994) [Milton Nascimento]   Warner Brothers 


C59 Angelus

Milton Nascimento: Vocal, Acoustic Guitar
James Taylor: Vocal, Acousic Guitar
Jeff Bova: Keyboards
Tony Cedras: Accordion
Anthony Jackson: Bass
Chris Parker: Bass Drum
Nana Vasconcelos: Percussion

Russ: Titleman: Producer

1. Only A Dream In Rio [James Tylor, Portuguese Lyrics: Fernando Brant]  A12 E4 E8


ブラジルを代表するアーティスト、ミルトン・ナシメント(MN)は、1942年リオの生まれ。1967年リオの国際ソング・フェスティヴァルで自作曲が入賞して以来、国際的な知名度を獲得、現在に至るまでスーパースターとしての地位を保っている。その彼がアメリカのメジャー・レーベルであるワーナー・ブラザースで製作した作品で、イエスのジョン・アンダーソン、ピーター・ガブリエル、ウェイン・ショーター(サックス)、ハービー・ハンコック、パット・メセニーらが参加している。

リオ・デジャネイロ訪問の体験を書いた1.「Only A Dream In Rio」は、1985年の「That's Why I'm Here」 A12に収録され、カーリーと別れた後の長い沈黙を破って復活した、JTの新しい時代を象徴するものだった。その後デビッド・サンボーンがホストのテレビ番組「Night Music」や、ブラジルでのコンサートで二人は共演し、この曲を演奏する。本作で1.を録音するにあたり、中盤に挿入されるポルトガル語の詩が、MNのパートナーであるフェルナンド・ブラントによるものに差し替えられた。バック・ミュージシャンもアメリカとブラジルの混成部隊だ。ナナ・ヴァスコンセロス (1944-2016) はブラジルを代表するパーカッション奏者で、その演奏には精神的な崇高さが感じられる。

最初はポルトガル語で歌うMNから始まり、次にJTが英語で歌う掛け合いとなる。中盤のMNのボーカルはさすがに重みがある。お互いの相手に対する尊敬の念がひしひしと伝わる演奏だ。JTとMNのアコギ合戦も聞きもの。


C60 Boneyard (1994)  [John Sheldon And Blue Streak]


C60 Boneyard

John Sheldon : Guitar, Vocal
James Taylor : Vocal
Seth Pappas : Drums
Peter Kim : Bass
Michael James : Keyboard

James Taylor: Executive Producer

1. Little Things



JTより3才年下のジョン・シェルドンは、母親同志が親友だったため、早くからJTの音楽を耳にする機会があった。JTはシェルドン家に足しげく通い、最初のギブソンギター、J50をジョンの父から購入したという。JTがダニー・クーチと知り合い、めきめき腕を上達させて、デビューするのを目の当たりにしていたジョンは、17才でヴァン・モリソンのバンドでリード・ギタリストとして活躍するようになる。その後西海岸でセッション・ギタリストとして活躍するが、満足できずに作曲家としての夢を持ち続ける。1980年にダニー・クーチ率いるリンダ・ロンシュタットのツアー・バンドに加入した後は、マサチューセッツ州に居を構えてブルー・ストリークというバンドを結成、地元のクラブでオリジナル曲を演奏していた。そんな時、JTが彼のデモテープを聞いて気に入り、プロデューサーとして本作の製作費用を出し、1曲ボーカルに参加したのが本作である。

パンチの効いたリードギターの演奏(フェンダー・ストラトキャスター特有の乾いたサウンドだ)で始まる1.「Little Things」は、シンプルでストレートなバンドサウンドで、ジョンのあとに出てくるJTのボーカルもいつになくパワフルだ。ジョンはこのグループで3枚のCDを製作したのち、ソロとしてアルバムを製作している。そして二人の親交はその後も続き、後年JTは「September Grass」A17収録や「Bittersweet」B43という素晴らしい曲をカバーする。1.が出来として、可もなく不可もないという感じになってしまうのは、これらの曲と比較してしまうからであり、そういう意味ではちょっとアンフェアーかなという気もする。


C61 Stories (1995) [Maura O'Connell] Permanent

C61 Stories

Maura O'Connel: Vocal
Zane Baxter, Richard MClaurin
Edger Meyer: Bass
James Tayor, Andrea Zonn: Back Vocal

Jerry Douglas: Producer

1. Love Divine [Jimmy MacCarthy]


マーラ・オコンネルはアイルランドのクレア地方の生まれで、1980年代後半よりナッシュビルを活動拠点としている。ベラ・フレックをはじめとするニュー・グラス・リバイバルと親交が厚いが、ケルトでも、ブルーグラスでも、カントリーでもない、彼女自身のスタイルを持っている人だ。カントリー・フレイバーあるフォーク・スタイルというと、どこにでもありそうに聞こえるが、凡百のシンガーと異なるのが彼女の声で、アイルランド人が信じる言霊が宿っているというか、神がかった声で、その深みは神秘の湖のようだ。

1.「Love Divine」は厳粛な感じの曲で、作者はやはりアイルランド人だ。歌詞を噛み締めながら歌うマーラのボーカルが絶品で、コーラスの部分で、JTがそっと寄り添うようにセコンド・ボーカルを付ける。控えめなサポートの趣味の良さが光る逸品。

他の曲では、ビートルズの「If I Fell」をカバーしていて、こちらも最高。プロデュースはドブロ奏者のジェリー・ダグラスで、丁寧な仕事ぶりは賞賛に値する。いぶし銀という比喩がぴったりの作品だ。