C32 Volcano (1979) [Jimmy Buffett] MCA |
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Jimmy Buffett: Guitar, Vocal
James Taylor: Guitar (4), Back Vocal
Alex Taylor, Hugh Taylor: Back Vocal (1,2,3)
Barry Chance: Guitar (1,2,3)
Keith Sykes: Guitar (1)
Harry Daily: Bass (2,3)
Nobert Putnam: Bass (4)
Russ Kunkel: Drums, Percussion
Andrew McMahon: Electric Piano (1,2,3)
Mike Utley: Piano (1,2)
Greg 'Fingers' Taylor: Harmonica
Dave Loggins, Paulette Brown, Brenda Bryant, Venetta Fields, Debbie McCall,
Andrew McMahon : Back Vocal,
Nobert Putnam: Producer
1. Treat Her Like A Lady [Jimmy Buffett, Dave Loggins]
2. Survive [Jimmy Buffett, Mike Utley]
3. Lady I Can't Explain
4. Sendin' The Old Man Home
1979年8月1日発売
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ジミー・バフェットはナッシュビルのカントリー・シンガーとしてデビューしたが、その後活動をフロリダのキーウエストに移し、カリブの香りを加えたトロピカル・カントリー・ロックと言える独特のサウンドで人気を確立した。音楽のみならず、著作、マルガリータヴィル・ブランドのファッションおよびナイトクラブなどのビジネスで成功し、大金持ちになった。音楽的なピークは1970年代で、その後レコードの売り上げは減少したが、「パロットヘッズ」と呼ばれる熱心なサポーターにより人気は定着、ニューオリンズのマルディグラを思わせるコンサートが定番となった。
ジミー・バフェットは海と酒に対する執着という共通点で、JTと仲が良かったようで、ソロアルバム「Dad Loves His Work」1981
A12 では曲を共作している。当時JTはカーリーとの仲が悪化していたはずで、兄弟のアレックス、ヒューとともに本作のセッションに招かれ、毎晩のように飲んだくれて憂さ晴らしをしていたらしい。その酒癖はかなりひどかったようで、その乱痴気騒ぎの様子がジャケット内部のスナップ写真からうかがえる。本作のタイトルはカクテルの名前から取ったものらしく、全体的に酔った勢いにまかせて内輪で製作したレコードのようで、どこか緊張感に欠ける感じだ。
ケニー・ロギンスの親戚であるデイブ・ロギンスとの共作 1.「Treat Her Like A Lady」は普通のフォークロックといった感じの曲で、コーラスにテイラー家3人のバックボーカルが聴ける。A12にも参加していたグレッグ・フィンガーズ・テイラーのハーモニカソロがかっこいい。2.「Survive」はテンポを落としたバラードで、バックコーラスはテイラー3人以外にかなりの人数が加わっている。3.「Lady
I Can't Explain」はアップテンポのフォーク・ロックで、ここでもハーモニカが頑張っている。4.「Sendin' The Old Man
Home」ではJTのギターが聴ける。左チャンネルで彼が弾いているギターは小型のマホガニー・タイプのようで、いつもと音の感じが異なっていて、初期のライ・クーダーのようで面白い。4曲のなかでは一番印象に残る曲だ。
[2022年4月追記]
「曲毎のクレジットがないため、どの曲に誰が参加しているか不明」としていたが、資料を入手できたので、修正しました。
[2023年9月追記]
ジミー・バフェット氏は、2023年9月にお亡くなりになりました。ご冥福をお祈りいたします。
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C33 Power (1979) [John Hall] Columbia |
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John Hall: Vocal, Guitar
James Taylor, Carly Simon: Vocals
Tony Levin: Bass
Louis Levin: Keyboards
Eric Parker: Drums
Judy Linscott: Percussion
Sax: Bryan Cumming
John Hall: Producer
1. Power [John Hall, Joanna Hall] B12
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1979年の「No Nukes」コンサート B12 のテーマソングとなった「Power」のスタジオ録音版を本作で聴くことができる。ライブ盤ではJTとドゥービー・ブラザースのマイケル・マクドナルドがリードボーカルをとっていたが、ここではジョンがリードをとっている。JTとカーリーのバック・ボーカルは最初は控えめだが、後半になると前面に出てきて、実質的に3人による合唱となる。エンディングで聞こえるカーリーの自由な伸びのある声が印象的だ。サビの間奏のギター、エンディングのサックスソロの出来も大変よく、名曲・名演といえよう。
奥さんのジョアンナ・ホールによる歌詞は、風や水、木(焚き火)による自然のパワー(エネルギー)を讃える内容で、原子力排除を主張するプロテストソングでありながら、とても詩的で美しいものだ。それに夫君ジョンによる哀愁あるビューティフルなメロディーがピッタリ寄り添い、非常にバランスがとれた作品となった。
このLPには歌詞カードがついておらず、聞き取りが難しいため、この曲の意味を理解することは長年の課題だったが、現在はインターネットで閲覧できるようになった。本当に便利な世の中になったもんだ。
アルバムを通して聴くと、ファンキーな曲、ポップで軽快な曲、ハーモニーが効いた曲、かっこいいインスト曲など、変化に富んだサウンドが楽しめ、ジョンのギターも随所で大活躍する。著名なスタジオ・ミュージシャンが多く参加しているわけではない(1.ではベースのトニー・レヴィンのみ有名)が、当時バンドを組んでいたと思われるミュージシャンの一体感が素晴らしく、聴いていて精神的な心地良さを覚える作品だ。そういう意味でも前作
C27よりもはるかに良い出来であり、彼のソロアルバムの代表作といえよう。
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C34 SPY (1979) [Carly Simon] Elektra |
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Carly Simon: Vocal
David Spinozza: A. & E. Guitar (1,3,4)
Joe Caro: E. Guitar (4)
Rchard Tee: E. Piano (1,2)
Warren Bernhardt: Piano (1,2), E. Piano (3,4)
Billy Mernit: Piano (3)
Ken Bichel: Polymoog (1)
Will Lee: Bass (1,4)
Tony Levin: Bass (3)
Steve Gadd, Rick Marota: Drums (1,4)
Crush Bennett: Percussion (3)
Raphael Cruz: Percussion (3,4)
David Sanborn: Alto Sax (1)
Hubert Laws Flute (4)
James Taylor: Back Vocal
Lucy Simon: Back Vocal (2)
Ullianda McCullough: Back Vocal (1)
Arif Mardin: Producer
1. Just Like You Do
2. Never Been Gone [Brackman, Simon]
3. Love You By Heart [Simon, Titus, Brackman]
4. Spy [Simon, Taylor, Mardin]
1979年6月発売
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アリフ・マーディンのプロデュースによるこのアルバムは、当時全盛のクロスオーバー・ミュージックを大胆に取り入れたサウンドだった。その分、バックの器楽演奏が前面に出すぎた感じで、彼女の持ち味である叙情的な弾き語りが影を潜めたため、いつものカーリーを期待する人には、いまひとつしっくりこないアルバムとなった。ちょうど大貫妙子が初期に製作した「Sun
Shower」1977みたいな感じで、全体としての評価はイマイチ (「Sun Shower」のほうは超名盤)ではあるが、その時代を感じさせるグルーブがあり良い曲もあるので、聞き方次第だと思う。相変わらず豪華な伴奏陣で、スティーヴ・ガッドとリック・マロッタのダブル・ドラムス、リチャード・ティーのエレピ、ウィル・リーとトニー・レヴィンのベース、デビッド・スピノザのギター、デビット・サンボーンのサックス、ヒューバート・ロウズのフルートといったニューヨークのトップ・スタジオ・ミュージシャンを総動員している。
1.「Just Like You Do」は、自己のなかにうずく欲望、夢、恐れや愛を「あなたと同じ」と歌う。「以前の私たちの勇気ある純粋さに戻りましょう」と歌いかけるところは、当時のJTとの夫婦関係がうまくいっていないことをほのめかしている。カーリーの歌はとても率直で、間奏のサンボーンのサックスが狂おしい。JTはカーリーを含む3人のコーラス隊の一部に徹しているが、彼の声を聞き分けることは可能。スローテンポの2.「Never
Been Gone」では、イントロの讃美歌のようなコーラスで、姉のルーシーと一緒に参加。3.「Love You By Heart」は、いつものパートナー、ジャコブ・ブラックマンに加えて、友人のリビー・タイタス(C25)が共作に参加している。「私の心を見せたいの/心からあなたのことを知りたいの/心からあなたのことを愛したいの」というコーラスにぐぐっとくる。
4.「Spy」はアナイス・ニンという作家の「A Spy In The House Of Love」にヒントを得た作品とのことで、JTとプロデューサーのアリフ・マーディンの共作。非常に洗練されたメロディーと歌詞で、家庭内に潜む秘密をさりげなく歌う。アップテンポの伴奏は、バック・ミュージシャンの本領発揮といったところで、ツインドラムスによる腰の強いグルーブ感が凄い。ヒューバート・ロウズのフルートが一層洒落た感じを付け加えている。
JTの声ははっきり聞き取れるが、コーラス隊の一部に専念しており、彼のみで歌ったり、アドリブを展開する部分はないし、以前のようにギターで参加している作品もない。製作過程には関与していないようだ。全米45位と、チャートも低迷。
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1980年 Flag (1979年5月1日発売)、 Dad Loves His Work (1981年3月発売)の頃 |
C35 Hideaway (1980) [David Sanborn] Warner Brothers |
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David Sanborn: Alto Sax
Don Grolnick: Fender Rhodes
Marcus Miller: Bass
Rick Marotta: Drums
Ralph McDonald: Percussion
Michael Manieri: Vibes, Marimba, Bass Marimba
James Taylor, Arnold McCuller, David Lasley: Back Vocal
Michael Colina: String Arrangement, Producer
Julian Fifer, Richard Sher: Cello
Benjamin Hudson, Carol Zeavin, Guillermo Figueroa, How Liang-Ping, Joanna
Jenner, Ronnie Bauch, Ruth Waterman, William Henry: Violin
1. Carly's Song
1980年2月15日発売
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マイケル・ブレッカー、トム・スコットと並んで、70〜80年代における間奏サックス・ソロの3羽ガラスの1人。本当にあらゆる分野の音楽で、彼のアルトが聞ける。そして本当にすごいのは、あれだけのスタジオ・セッションワークをこなしながらも、その音を耳にすると、すぐに彼の演奏だと分かるシグネチャーを持ち続けたことである。ハイノートを多用した、絞り出すようなソウルフルなサウンドは、サックス本来の豊かでまろやかな音色とは全く別のもので、黒人歌手の歌唱に近い。短い演奏時間に命をかけるホーンプレイヤーのガッツに溢れており、幼少の頃かかった小児マヒを克服したという根性のなすわざだろう。特に歌ものの間奏におけるソロプレイは、副業感覚でやっているジャズ畑のプレイヤーとは本質的に次元が異なる演奏だ。
この頃JTとカーリーの夫婦関係は既にかなり悪化していたはずなので、サンボーンがカーリーのことを慰めるために書いたのかな、などと勝手に想像しながら聞く。都会のウォーター・フロントの日暮れの中で1人佇んでいるような叙情的なイメージの曲で、サンボーンのアルトは、テーマやインプロヴィゼイションなど、始めは抑え気味だが、次第に熱くなり高揚感あふれるプレイになる。この迸るソウルこそが、他の凡庸なクロスオーバー音楽と一線を画している。アーノルド・マックラー、デビッド・ラズレーのJTバンドのメンバー3人によるバックコーラスは、テーマの部分でストリングスと一緒に聞こえるが、その音量は小さめで、3人の声は完全に溶け合っている。やはりここでの主役は、サンボーンと、ドン・グロルニック、マーカス・ミラー、リック・マロッタ、マイク・マニエリ、ラルフ・マクドナルドなど当時各ジャンルでトップだった名手達のインタープレイだ。
1976年JTのコンサートツアーで前座を担当することにより、知名度を獲得していった彼のキャリアのブレイクスルーとなった作品である。
[2024年5月追記]
デビッド・サンボーン氏は、2024年5月になくなりました(享年78)。ご冥福をお祈りいたします。
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C36 Come Upstairs (1980) [Carly Simon] Warner Brothers |
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Carly Simon: Vocal, A. Guitar (3)
Pete Hewlett: E. Guitar (1,2), A. Guitar (3)
Sid McGinnis: Slide Guitar (3), E.Guitar (1,2)
Mike Mainieri: Synthesizer (1,2), Producer
Larry Fast : Synthesizer (2, Intro Only)
Don Grolnick: Piano (2)
Tony Levin : Bass
Rick Marota: Drums
James Taylor: Back Vocal
Alex Taylor, Hugh Taylor : Back Vocal (2,3)
Laraine Newman, Mariah Aguiar, Christine Martin: Back Vocal (2)
Sid McGinnis, Pete Hewlett: Back Vocal (2,3)
Gail Boggs: Back Vocal (3)
Mike Mainieri: Producer
1. Stardust [Simon, Mainieri]
2. Them [Simon, Mainieri]
3. Jesse [Simon, Mainieri]
1980年6月16日発売
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1980年になると、JTとカーリーの関係はかなり険悪になっていたようで、ワーナー移籍後初めての本作にはその影が色濃く落ちていて、私小説的な作品を持ち味とするアーティストの性(さが)をこれほど感じさせる作品はない。特に3.に続く曲「James」(JT非参加)は、JTに捧げる最後の愛の歌として、瀕死の白鳥の泣き声「スワンソング」のような凄絶さが漂う。そして孤独感がやるせない「In
Pain」と続き、ちょっと聞くのが辛くなってしまう。といってもタイトル曲のように、男を2階に誘う妖艶なムードの曲もあり、女性という生き物の強かさ、業(女性の皆さんスミマセン)みたいなものを感じてしまう。
1.「Stardust」はロックスターを彼氏にもった女性の切なさを描いた曲で、仕事に明け暮れ家庭を顧みなかった(と少なくてもカーリーはそう思った)JTのことを歌っているのは明らか。前作までのジャス色は消え、シンプルなロック調のアレンジだ。JTとカーリーのコーラスは混ざり合っている。2.「Them」はカーリーが初めて挑戦したテクノポップ。シンセサイザーがピコピコいうなかで、声を伸ばさず無表情に歌う。男女間の不信を歌った曲で、USとして女性陣のコーラス隊が歌い、THEMとしてテイラー兄弟とバックバンドの男性が歌う。曲の出来としては決して悪くはないと思うが、感情を込めた弾き語りを身上とするカーリーにとって、場違いな感じがするのも確かだ。80年代になると、以前から活躍していたアーティストの多くが時流に乗り遅れまいと、このようなサウンドに挑戦するが、ことごとく失敗している。おそらく成功したのは、はじめからパンキッシュな要素を内包していた、あがた森魚くらいじゃないかな。
3.「Jesse」は、カーリーにしては極めてサッパリしたオールディーなロック・アレンジと、歌詞のべたつきとが不思議にバランスがとれ、それなりにいい出来になってシングルヒット(11位)した。ここではイントロの「ウー」というシンプルな部分がテイラー兄弟によるコーラスで、曲中のバックボーカルはバックバンドのメンバーによるものと思われる。
この作品に対するJTのアンサーが、1981年の「Dad Loves His Work」A11になる。離婚の話は1980年の秋から出始めたようで、その後いろいろ努力はしたものの状況は悪化する一方で、結局1982年10月に正式離婚、しばらくは絶縁状態になってしまう。その後二人がステージで再会するのは1995年、彼らの家があったマーサ・ヴィンヤードで行われたチャリティー・コンサートだった。さらにカーリーが乳がんにかかり、生きる希望を失いかけた際、彼女を支えて、励みになったのはJTという。あんなに愛し合った人達が、傷つけあい、別れ、憎しみ、そして老いて和解する。本当に人生って残酷であり、意外なものだ。全米36位。
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1982年 Dad Loves His Work (1981年3月発売)、That's Why I'm Here (1985年10月発売)の頃 |
C37 Bill LaBounty (1982) [Bill LaBounty] Curb |
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Bill LaBounty: Vocal, Fender Rhodes
Dean Parks: E. Guitar
Chuck Rainey: Bass (1)
Willie Weeks: Bass (2)
Andy Newmark : Drums (1)
Steve Gadd: Drums (2)
Larry Castro: Percussion
Ian Underwood, Nyle Steiner: Synthesizers (2)
James Taylor, Jennifer Warnes: Back Vocal
Russ Titleman: Producer
1. Didn't Want To Say Goodbye
2. Never Gonna Look Back
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AORの代表的アーティスト、ビル・ラバウンティの3作目のソロアルバム。本国アメリカでは、アーティストとしての強烈な個性に欠ける面もあり、ほとんど話題にならなかった。一方
AORへの嗜好・評価が高いというか、マニアックなファンが多い日本では名盤とされ、その後CD化もされた。一般的に米国では、この手の中道を行く音楽は「人畜無害」とされて評価されない傾向があり、黒人のソウル音楽のように徹底的にエンターテイメントするか、あるいは何だかのインパクトや主張がないと難しいようだ。そういう意味で、先入観や偏見を持たずに、いい音楽を正統に評価する日本のファンのレベルは高いといえる。
JTに声がかかったのは、「Gorilla」 1975 A7や「In The Pocket」 1976 A8でお馴染みのラス・タイトルマンがプロデューサーという関係と思われる。2曲ともソウルフルなムードのゴージャスな曲で、AOR
常連ミュージシャンのバックでビルが歌う。彼の歌声は所謂「渋い」感じて、もうちょっと声がメロウだったら大分違ったかも知れないなと思う。JTのコーラスはジェニファー・ワーンズと一緒で、彼女の少し太目の声と、JTのソフトな声がはっきり分かれて聞こえるので、とても楽しんで聞ける。彼女は、映画「愛と青春の旅立ち」の主題歌「Up
Where You Belong」 1982をジョー・コッカーとのデュエットで大ヒットさせた人。2.「Never Gonna Look Back」はシングルカットされ、全米アダルト・コンテンポラリー・チャートで22位(ポップ・チャートでは110位)を記録した。ゴージャスな味わいがある曲で、後半では少しだけどJTの声が単独で聴けるパートもある。アコギのバックが、JTの「Her
Town Too」 A11 にそっくりで思わずニヤリ。
その他の曲には、スティーブン・ビショップ、パティ・オースチン、ジェフ・ポーカロ(ドラムス)、スティーブ・ルカサー(ギター)、デビッド・サンボーン(サックス)等が参加している。その後のビルは、90年代に1枚ソロアルバムを出しただけで作曲家に専念、現在はナッシュビルを活動拠点として活躍しているそうだ。
オリジナル・ジャケットは白黒写真による彼のポートレイトというシンプルなものだったが、日本発売にあたってはプールサイドを描いたイラストに変わり、タイトルも「サンシャイン・メモリー」という邦題がつけられて、いかにもAOR風に改変された。CDで再発された際には、オリジナルデザインが解説書の裏面に印刷されていた。個人的には、ノーマン・シーフ撮影のオリジナル版のほうが主張があってずっと好きだ。
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C38 Missin' Twenty Grand (1982) [David Lasley] Capitol |
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David Lasley: Vocal, Producer
James Taylor, Arnold McCuller : Back Vocal
David Benoit: Keyboards
Marty Walsh : E. Guitar Wade Short : Bass
Willie Wilcox : Drums, Producer
Joel Peskin : Sax
1. Got To Find Love [David Lasley, Willie Wilcox]
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本国アメリカではあまり話題にならなかったが、日本では邦題「風のファルセット」で発売され、AORファンで評判となった作品。デビットとしてはロージーの「Last Dance」 1977 C22 に続く作品で、その間はJTのバンドでのバックボーカルの他、マキシン・ナイチンゲールの「Lead Me On」(1979 全米5位)、翌80年にはボズ・スキャッグスの「Jojo」や、クリスタルゲイルの「The Blue Side」(ブルージーでいい曲!)などのヒット曲を手がけた作曲家としても活動している。
本作のタイトルの「Twenty Grand」は、彼が生まれ育ったデトロイトにあったナイトクラブで、60年代の地元ミュージシャンの登竜門として、マーサ・アンド・ザ・ヴァンデラスなどがデビューした場所だ。デトロイトはモータウン・レコードの本拠地があった地で、黒人R&B音楽にのめり込んだ彼は若い頃グループを組んで、この店で前座を務めていたという。その少年時代の思い出が本作のテーマになっているようだ。
本作では中堅クラスのセッション・ミュージシャンをバックに彼のファルセット・ヴォイスが冴えている。1.「Got To Find Love」の共作者でドラムス担当のウィリー・ウィルコックスは、トッド・ラングレンのグループ、ユートピアのメンバーだった人。クリストファー・クロスが歌いそうな、いかにもAOR風といった曲で、軽快なリズムと洒落た転調にのせてデビットが気持ち良さそうに歌う。バック・ボーカルはJTの他に、昔ヴァレンタインというグループで一緒に歌い、その後JTのバックバンドの相棒となったアーノルド・マックラーだ。ここではJTの声は、はっきり識別できる。
日本では彼に対する評価が高く、本作以外にもデモテープを集めたCDなどが発売された。
[2021年12月追記]
デビッド・ラズリー氏は、2021年12月8日病気のため亡くなりました。2010年代後半から、JTのツアーなどに姿を見せなくなったが、闘病生活を送っていたらしい。ご冥福をお祈りいたします。
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C39 Wild Things Run Fast (1982) [Joni Mitchell] Geffin |
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Joni Mitchell: Acoustic Guitar, Vocal
James Taylor: Back Vocal
Steve Lukather: Electric Guitar
Larry Klein: Bass
Russell Ferrante: Obertheim Synthesizer
John Guerin: Drums
Victor Feldman: Percussion
1. Man To Man
1982年10月発売
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ジョニ・ミッチェルのアルバムに久しぶりにゲスト参加。C38のレコーディングの際、たまたま隣で録音していたのが本作で、「私にも歌ってよ」ということになったらしい。彼女はミンガスとの共同制作(1979年 実際は彼が体調を崩したため一緒に演奏することはなかった)やジャコ・パストリアスやパット・メセニーと共演したライブ「Shadow
And Light」1980で、すべてやりつくして、次に何をするんだろうという時期だった。そういう意味で本作はとてもやりにくかったと思われるが、出てきたのは意外にシンプルな作品だった。といっても新しい音楽パートナーで夫君になる(後に離婚)ベーシスト、ラリー・クレインの重低音のベースが音作りの中心となっている。ジャコに勝るとも劣らない強烈なエゴを感じるサウンドで、それが後期の彼女のサウンドを決定付けることになった。
1.「Man To Man」は甘い愛を与えながら男から男へ移ってゆく歌で、ジョニの人生そのものだ。洗練されたサウンドとソウルフルなジョニの歌、当時の男ラリーのベースと、以前の彼氏であるジョン・グエリンのドラムスとJTのバックボーカル、本当にすごい人間関係だ。
翌年彼女は初来日を果たし、私は2月28日の厚生年金大ホール、3月7日の武道館の2回のコンサートに行ったことを覚えている。彼女の作品群の中では軽めのものであるが、シンプルでストレートな味わいのあるアルバムだ。
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