C42 Love's Gonna Get Ya ! (1985) [Ricky Skaggs] Epic |
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Ricky Skaggs : Vocal, A. Guitar, Producer
James Taylor : Duet Vocal
Gary Innis : Piano
Leland Sklar: Bass
Eddie Bayers : Drums
1. New Star Shinning [John Hall, Joanna Hall]
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カントリー、ブルーグラス音楽界のスーパースター、リッキー・スキャッグスは、1954年ケンタッキー州生まれ。幼い頃よりその才能を認められ、有名ミュージシャンと共演、楽器はなんでも抜群のマルチ・インストルメンタリストでもある。
1.「New Star Shinning」は、オーリアンズおよびソロで活躍し、JTおよびカーリーサイモンとの縁が深いジョン・ホールと、奥さんのジョアンナ・ホ−ルとの共作による現代のクリスマスソングだ。当時ジョン自身による演奏はなく、ずっと後の1993年ウッドストックのミュージシャンによるクリスマス・アルバム「Woodstock
Holidays」にオーリアンズによる演奏が収録された。このアルバム自体は何の変哲もないカントリー音楽といった感じで、私には物足りなく思えるのだが、この曲だけはバックにお馴染みのリー・スクラーも加わり、サウンドがとても洗練されていて、とてもいい出来だと思う。
リッキーは歌詞の1、4番を歌い、JTは2、3番を担当するので、彼のソロボーカルがたっぷり楽しめる。二人の多重録音によるコーラスが美しい。この曲はクリスマスシーズンにシングルカットされた。また小さなホールあるいはスタジオで二人が歌う様(ただし口パク)を撮影したプローモンション・ビデオが製作されている。
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C43 Innocent Eyes (1986) [Graham Nash] Atrantic |
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Graham Nash: Keyboard, Vocal
James Taylor: Addtional Vocal
Craig Doerge: Keyboard
Michael Landau: Guitar
George Perry, Tim Drammond: Bass
Bill boydston: Linn Drum Programming
Mike Fisher, Joe Lala: Percission
Craig Doerge, Stanley Johnston, Graham Nash: Producer
1. Sad Eyes
注: 写真上 : Inocent Eyes (オリジナル盤)のジャケット表紙
写真下 : Reflections (グラハム・ナッシュ 3枚組CD Box)の表紙
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1980年代後半のシンセ・ポップ全盛期、昔からのアーティストの多くが時流に遅れまいと挑戦し、ほとんどが惨敗したが、このアルバムもその一枚だった。今改めて聴いてみると、決して悪い出来ではなく、曲自体はいいものが多いため、音作りが少し古臭いことを除けば意外に楽しめる。要するにグラハム・ナッシュというアーティストと音楽の相性の問題に過ぎないと思う。
1.「Sad Eyes」のJTは Addtional Vocalとある通り、二人のヴォイスは初めから最後まで完全に融けあい、彼の声がよく合うことを証明している。これはシンプルでとてもいい曲だと思う。曲を埋め尽くす打ち込みのリズムとシンセサイザーのサウンドもそれほど気にならないのは、曲が持つポップな味わいのためか?マイケル・ランドウのギターがいい味を出している。2004年に発表された「Crosby/Nash」C82を聴いて思うに、昔のCSNY時代はスティルスやヤングが目立っていたけど、その後のグラハムさんはいい曲を書いているなあ。
レコードからCDへの切り替えは、1989〜1990年に雪崩のように一気に行われたが、そのあおりを受けて80年代後半に出たアルバムの多くがCD化されずに廃盤となり忘れ去られていった。この作品も不幸な運命を辿った一枚だ。
[2009年5月追記]
2009年2月に発売されたグラハム・ナッシュのCD3枚組ボックスセット「Reflection」には、「Sad Eyes (2008 Stereo
Mix)」が収録された。これはオリジナル録音を埋め尽くしていたシンセサイザーの分厚い壁を取り除いて、アコースティック、エレクトリック・ギター中心の伴奏に改めたリミックス版だ。シンセサイザーのうちストリングス的な音のみが残り、効果的な背景を成す役割に転じている。その結果JTのハーモニー・ボーカルがより聴こえるようになった。あるいはJTのボーカルパートを強調するリミックスも施されたかもしれない。風通しが良くなったサウンドはスッキリして今風であるが、良い悪いは別として時代の匂いを感じさせるのは、オリジナル録音のほうだ。
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C44 For Sentimental Reasons (1986) [Linda Ronstadt] Asylum |
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Linda Ronstadt : Vocal
James Taylor : Harmony Vocal
Don Grolnick : Piano
Denis Budimie: Guitar
Ray Brown: Bass
Louie Bellson : Drums
Warren Luening : Trumpet
Nelson Riddle: Arrangement
Orchestra Cunduct: Terry Woodson
Peter Asher: Producer
1. Straight Up And Fly Right [Nat King Cole, Irving Milles]
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1983年リンダはマンネリの打破を図るべく、スタンダード・ジャズのアルバム「What’s New」を発表、好評をうけて1984年には「Rush Life」を製作、それに続く3枚目が本作である。いずれのアルバムも、巨匠ネルソン・リドルがアレンジを担当していた。ジャズボーカルやボサノヴァなどで絶妙のアレンジをする人で、クラウス・オーガマンと並んで業界最高の存在。本作が最後の仕事のひとつとなった。
1.「Straight Up And Fly Right」は、ナット・キング・コール最初のヒット曲(1943年)で、彼は後に歌に専念して歌手として大成することになるけど、後のジャズピアノに大きな影響を与えたといわれるスウィングしまくり軽妙洒脱なピアノトリオでの歌が最高なんだよな。
そんな大名曲のカバーに挑戦するなんて、リンダも本当に大胆不敵なんだけど、これはJJTをゲストに呼ぶという作戦勝ちだ。ナットのオリジナルでは、コーラスの部分はバンドメンバーによるユニゾンの合唱なんだけど、ここでのJTのハーモニーは大変エキセントリックだ。リンダは神妙に歌っているけど、JTの飄々とした軽妙さは彼にしか出せない味じゃないかな?間奏のドン・グロルニックのピアノソロはグルービーの極み。このような物凄い演奏ができるのに、通常は悠然と地味なプレイをする人なのだ。
その他の曲としては、ディズニー(ピーター・パン)の「星に願いを」、モンクの「Round Midnight」、これまたナット・キング・コールのヒット曲で、ダニークーチがソロアルバム「Kootch」で、アップテンポのゴキゲンなアレンジにしてカバーしていたタイトル曲や、「My
Funny Valentine」など誰もが知っている曲が目白押しだ。リンダの声も意外なほどにしっくり合っていて歌心に溢れ、聴いてて気持ちがいい。
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C45 Back In The Higher Life (1986) [Steve Winwood] Island |
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Steve Winwood : Vocal, Synthesizer, Piano, Mandolin, Moog Bass, Drum Machine
Programming
Rob Mounsey: Additional Synthesizer
John Robinson: Drums
James Taylor: Harmony Vocal
Russ Titleman, Steve Winwood: Producer
1. Back In The High Life Again
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1948年イギリス生まれで、スペンサー・デイビス・グループ、トラフィックを経てソロになり、長年にわたり活躍を続ける天才アーティストのソロ時代の代表作。もう35年も前かあ〜。本作収録の「Higher Love」が全米1位の大ヒットとなり、80年代のシンセ・ダンス・ポップの時代を見事に生き抜いた天才ロッカーの才能と執念を感じる作品だ。1986年のグラミー賞で、アルバムが「Best Engineered Recording, Non Classical」、「Higher Love」が「Record Of The Year」と「Best Male Pop Vocal Performance」を受賞したのは衝撃的だった。
JTのゲスト参加は意外だった。最初買った時はJTが参加していたなんて知らなかった。彼も本当に交友範囲が広いなあと思って、パーソナルをよく見ると共同プロデューサーがラス・タイトルマンだった事が分かり、その方面の人脈だったかと納得。といっても1997年の音楽テレビ局VH1の番組「VH1
Honors」で一緒にこの曲を演奏しており、単なるお付き合いでもないのだろう。
1.「Back In The High Life Again」は各種シンセサイザーの電子音とマンドリンのアコースティックなサウンドの組み合わせが見事なアレンジ。レイ・チャールズを思わせるソウルフルなスティーブのボーカル。そしてコーラス部分にJTのセカンドボーカルがハーモニーをつける。洗練された二人の男の存在感が凄い。途中からシンセサイザーとドラムのリズムパターンがどんどん変わってゆくので飽きさせない。途中のシンセサイザー間奏はアイリッシュ風。エンディングでは、僅かだけどJTのアドリブボーカルも飛び出す。本当にカッコイイ曲だ。ちょっとホメ過ぎかな?
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C46 Hot Water (1988) [Jimmy Buffett] MCA |
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Jimmy Buffett: Guitar, Vocal
Steve Cropper: Electric Guitar
Hugh McCracken: Guitar
Jeff Miraoff: Guitar (3)
Michael Utley: Keyboard (1,2,4)
Richard Tee: Keyboards (3)
Donald 'Duck' Dunn: Bass (2,4)
Alex Blake: Bass (3)
Timothy B. Schmit: Bass (1), Back Vocal (1,2,4)
Russ Kunkel: Drums (1,2,4), Percussion
Buddy Williams: Drums (3)
Ralph McDonald: Percussion
Robert Greenidge: Steel Drums (4)
Greg 'Fingers' Taylor: Harmonica (2)
Grover Washington Jr.: Sax (3)
The Neville Brothers: Back Vocal (4)
James Taylor: Back Vocal
Michael Utley, Russ Kunkel: Producer
1. L'Air de la Louisiane [Jesse Winchester]
2. Prince Of Tides [Jimmy Buffett, Michael Utley]
3. Pre-You [Jimmy Buffett, Ralph NcDonald, William Salter]
4. Great Heart [Johnny Clegg]
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「Volcano」 C32に続き、ジミーバフェットのアルバム4曲にゲスト出演。今回は元イーグルスのティモシー・B・シュミットと一緒にバック・ボーカルをしている。1.「L'Air
de la Louisiane」は渋好みのシンガー・アンド・ソングライター、ジェシー・ウィンチェスターの曲で、全編フランス語で歌われる。始終ジミー、ティモシー、JTの3部合唱で、2台のアコースティック・ギターの絡みも素晴らしく、短いながらもリラックスして大変よい出来だ。熱心なJTファンの間でも評判の高い曲。
ジミーの語りから始まる2.「Prince Of Tides」はフォークロック・タイプの軽快な曲で、間奏のギターソロはヒュー・マックラケンだ。エンディングにドリフターズで有名なスタンダード「Save
The Last Dance For Me」の一節が出てくる。3.「Pre-You」は、有名なパーカッション奏者であるラルフ・マクドナルドとの共作。ジェフ・ミロノフ(クレジットの名前の綴りは明らかに間違い)、リチャード・ティー、アレックス・ブレイク(マンハッタン・トランスファーのバックなどで活躍)、グロヴァー・ワシントン・Jrのサックスというニューヨークの一流セッション・ミュージシャンとストリングスによる極めて洗練されたブルージーな音作りで、AORの隠れた傑作。今の彼女と歩いていた時、以前の恋人にばったり会い「She's
pre-you」と言う歌詞も洒落ている。サウンド的にはジェフ・マルダーかマイケル・フランクス風といったところ。JTは、ふらっと現れてハーモニーをつける。4.「Great
Heart」はスティール・ドラムが入ったトロピカル・フォークロック。
[2023年9月追記]
ジミー・バフェット氏は、2023年9月にお亡くなりになりました。ご冥福をお祈りいたします。
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C47 Life Is Good (1988) [Livingston Taylor] ATCO Critique |
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Livingston Taylor : Vocal, A. Guitar
James Taylor : Vocal
Mike Demicco : E. Guitar
Scott Petito: Bass, Keyboard
Mike Gugielmo : Drums
John Sebastian : Harmonica
Robbie Dupree, Amy Fradon, Bob Leinbach, Leslie Ritter: Back Vocal
Artie Traum, Scott Petito : Producer
1. City Lights [Pat Alger]
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「Over The Rainbow」 1973 C12 以来、15年ぶりの共演。ハッピー・トラウムの弟で、自身ギタリストとして著名なアーティー・トラウムがプロデューサーとして名を連ねている。全体的にメロウで耳あたりのよいサウンドで、良質のAORといったところ。ただし打ち込みっぽいサウンドのため、歌手と伴奏の一体感、深みが感じられず、その結果彼の持ち味である手作りの味わいが損なわれてしまっている。80年代末の音楽環境を考えると、彼のようなタイプのミュージシャンがレコードを作れた事自体が奇跡のようなもので、そういう意味で予算上の制限もあったと思われるため、プロデューサーのせいにするにはアンフェアーかもしれない。
そのなかで1.「City Lights」に関してはドラムスなどが打ち込みでなく、丁寧に製作されているように思われ、上記の欠点は気にならない。この曲はカントリー音楽界の大物シンガー・アンド・ソングライターのパット・オルジャーの作品で、彼は以前はウッドストックに住んでいて地元ミュージシャンによるマッドエイカーズなどのセッションアルバムにも参加、その頃から本作の共同プロデューサー、アーティー・トラウムとの親交があったらしい。カリフォルニアに憧れてメキシコ国境を越える人々を歌った哀愁あふれる歌だ。最初のヴァースはリヴ、次にJTが歌い、二人のコーラスとなる。さすが兄弟で声の相性はピッタリだ。バック・ヴォーカルには、AORの大物ロビー・デュプリー、プロデューサーのスコット・ペティトとデュオで活躍するレスリー・リッター、ジョン・ホール脱退後のオーリアンズに在籍していたボブ・レインバックなどが参加。ジョン・セバスチャン(元ラヴィン・スプーンフル)のハーモニカも聴こえる。ジャケット・デザインは日本を代表する素朴派のイラストレーター、矢吹申彦。歌詞カードがなく、聞き取りに苦労していたが、最近インターネットで見つけることができた。
[2008年8月24日追記] アーティー・トラウム氏は2008年7月20日、肝臓がんのため亡くなりました。謹んで同氏のご冥福をお祈りいたします。
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C48 Oh Yes I Can (1989) [David Crosby] A&M |
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David Crosby : Vocal
James Taylor : Back Vocal
Craig Doerge : Piano
Russ Kunkel : Drums
Leland Sklar : Bass
Joe Vitale, Kim Bullard : Synthesizer
David Crosby, Craig Doerge, Stanley Johnson: Producer
1. Oh Yes I Can
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ザ・バーズ、CSNY、CSNおよびクロスビー・アンド・ナッシュのアルバム、そして数多くのセッション参加作を残してきたデビッド・クロスビーの長いキャリアの中で、ソロアルバムはこれで1971年以来2作目というのは意外な感じがする。麻薬中毒と武器の不法携帯などのトラブルが続き、しまいには薬物中毒の更生施設から脱走したために服役という修羅場を経て、とうとうその悪癖を断ち切ることができた彼が、再生を期してこのアルバムを製作したもの。JTの他にジャクソン・ブラウン、ボニーレイット、ラリー・カールトンが参加。特にアコースティック・ギター界に革命を引き起こした故マイケル・ヘッジスの参加は大きな話題となった。
JTはタイトル曲 1.「Oh Yes I Can」のバック・ボーカルで参加。歌詞は本作のテーマそのもので、ラブソングの姿を借りて、これまでの生活への決別と、新たな人生への決意を歌う。クロスビーのボーカルは誠実で、真実を歌う強さが感じられる。彼と同じく麻薬常習癖からの脱却に大変な苦労をしたJTにとって、この曲は大きな意味があると思われ、短くはあるが「Oh
Yes, I Can」という決定的なフレーズに効果的なハーモニー・ボーカルをつけている。
[2023年1月追記]
デビッド・クロスビー氏は、2023年1月19日亡くなりました(享年81)。ご冥福をお祈りいたします。
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C49 On The Mark (1989) [Mark O'Connor] Warner Bros. |
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Mark O'Connor: Violin
James Taylor : Vocal, A. Guitar
Jerry Douglas : Dobro
Edgar Mayer : Double Bass
John Jarvis : Synthesizer
Eddie Bayers : Snare Drums Played With Hands
Mark O'Connor, Ed Seay, Paul Worley: Producer
1. Intro: Ol' Blue
2. Ol' Blue [Public Domain] E6
写真上: On The Mark (1989) 表紙
写真下: An Appalachian Christmas (2011) 表紙
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1961年生まれのマーク・オコナーはブルーグラス界の神童として、幼い頃からギター、フィドルをこなすマルチアーティストだった。本作は、大部分の曲でバイオリンをフィーチャーしたインストルメンタルで、デビット・グリスマンに共通するジャズとクロスオーバーした新しい音楽に取り組んでいる。カントリー、ブルーグラス界における他のフィドル奏者と異なり、音程・リズムが完璧で全く乱れず、淀みのないフレーズで歌いまくる様は、正に天才だ。
レコーディングとしての、JTとの共演は1988年の「Never Die Young」 A13が初めてで、当時彼らはJTのバックとしてコンサートツアーをやっていたようで、1989年のコンサートの音源が残っている。このレコーディングは、スタジオで皆が車座になってライブで録音したそうで、非常に緊密な雰囲気のインタープレイが楽しめる。1.「Intro:
Ol' Blue」は43秒足らずの短い風景で、リハーサルと思われるジャム・セッションの器楽演奏がフェイドイン。演奏が止んで本番開始の前に、JTがイントロの要領を確認する。トラックが2.になってJTのアコギの演奏が始まり、各プレイヤーが加わってゆく。
2.「Ol' Blue」はブルーという名の犬との交流を歌ったもので、その生と死を描く、愛情と悲しみにあふれた素晴らしい曲だ。マークのバイオリンの他、ドブロのジェリー・ダグラス、ベースのエドガー・メイヤーといった名手達に囲まれて、JTは丁寧に気持ち良さそうに歌う。軽やかなアルペジオのアコギの伴奏も最高。各ミュージシャンの相手に対する尊敬の念が伝わってくる名演だと思う。ちなみにこの曲は、マークの招きによりJTが出演した1990年のテルライド・フェスティバルで、本作と同じメンバーで演奏され、その模様はビデオ
E6で見ることができる。
マーク・オコナーとJTはその後も共演を重ね、そのコラボレイションは年を経るごとに親密度を深め、2000年にクラシック界のチェロ奏者、ヨー・ヨー・マ、エドガー・メイヤーと共演した「Appalachian
Journey」C72に結実する。
[2011年10月追記]
2.「Ol' Blue」は、同じ録音が2011年9月に発売されたマーク・オコナーのクリスマス特集「An Appalachian Christmas」に収録された。
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