C1 Writer  (1970)  [Carole King]  Ode 




Carol King: Piano, Vocal
James Taylor: Guitar, Back Vocal (2)
Danny Kootch: Electric & Acoustic Guitar
Charles Larkey : Bass
Joel O'Brien : Drums
Ralph Schuckett: Organ 

1. Spaceship Races [C. King, G. Goffin] 
2. Goin' Back [C. King, G. Goffin] 
3. To Love [C. King, G. Goffin] 
4. What Have You Got To Lose [C. King, T. Stern, G. Goffin] 
5. Eventually [C. King, G. Goffin] 
6. Sweet Sweetheart [C. King, G. Goffin] 
7. Up On The Roof [C. King, G. Goffin]  A10 A15 B16 B40 C4 E1 E5 E8 E15 E28

全米84位


           
ご存知キャロル・キングのソロ・アーティストとしてのデビュー盤。次作の「Tapestry」C3が大ブレイクしたため地味な存在であるが、アルバムとして非常にいい出来で、私の大愛聴盤だ。残念ながら曲毎のパーソネルが不明で、曲によってはダニー・クーチがアコギを弾いているケースもあるため、JTがどの曲に参加しているのか正確には分からないが、各曲を注意深く聞き、彼らしいアコギが聞こえるか否かの判定結果で上記の曲をリストアップした。

1.「Spaceship Races」はオープニングにふさわしいスケールの大きな佳曲で、ダニーのリードギターが太い音を出し、曲の色彩を決めている。中盤のブリッジの部分でJTらしいフィンガー・ピッキングのアコギがわずかに聞こえるのみだ。2.「Goin' Back」はザ・バーズやダスティー・スプリングフィールド等によって歌われた名曲で、最近ではダイアナ・ロスのカバーなどスタンダードの地位を確立している。数あるバージョンのなかでもキャロル本人の演奏が最高であり、その理由はひとえにJTのアコギの素晴らしさにある。多重録音によるJTのギターがフルボリュームで左右のスピーカーから聞こえ、曲の厚みと深い奥行きを作り出している(その音の鮮やかさは、最近のリマスターCDによってより顕著になった)。漂うようなアルペジオと、時々挿入されるあの独特な低音弦の動き、サビの部分ではダニーのエレキギター・ソロの前にアルペジオでソロをとるが、そのリズム感とコクのある音色が本当に最高で、数あるJTのアコギ演奏のなかでベストの出来。また歌詞の要所でJTのハーモニー・ボーカルが聞こえ、エンディングはお馴染みの「ラララ」をキャロルとデュエットするという豪華な内容だ。この1曲のために買っても絶対に損はない。

3.「To Love」はカントリー調の軽い感じの曲で、導入部のフィルインでJTらしいギターが聞かれる。あとのアコギ演奏は裏拍のコード奏法のみで、その代わりにダニーのエレキギターが頑張っている。4.「What Have You Got To Lose」は洗練された曲で、アコギによるイントロのジャズ奏法のような洒落たコードと、通して演奏されるラテン調のリズム・ギターが心地よい。普段のJTにはない演奏パターンなのでダニーが弾いている可能性が高いが、曲の途中でJT特有の低音弦の動きも聞こえるので掲載した。

5.「Eventually」は理想社会到来の希望を歌った、彼女らしい穏健なプロテストソングで、ここでは始終JTらしいギターが響いている。6.「Sweet Sweetheart」はザ・バンドが歌ってもおかしくない感じのカントリーとR&Bのフュージョンサウンドだ。後年彼女はよりアーシーなサウンドに変化してゆくが、その萌芽がすでにデビュー盤にあると言える。最後の 7.「Up On The Roof」は作曲家としてのキャロル屈指の名曲で、オリジナルはドリフターズが歌ってヒットした。キャロルの演奏はテンポを落とし、じっくりと歌う。ここでのJTのアコギは完全に曲の一部と化し、わくわくさせるような色彩感を付与している。JTはこの曲がお気に入りのようで、その後「Flag」A10 でカバー、コンサートでの常連曲になっている。

その他JT不参加の曲で、「Child Of Mine」などの名曲や、「Rasberry Jam」というジャズ・ワルツもあり、JTの音楽ファンには必携のアイテムだ。


C2 Willard   (1970) [John Stewart]  Capitol 


C2 Willard

John Stewart: Guitar, Vocal
James Taylor: Guitar, Back Vocal (1)
Bryan Garofolo: Bass (1,3,4), Back Vocal (1,3)
Peter Asher: Bass (2), Back Vocal (1,2,3)
Russ Kunkel: Drums (2,3,4), Percussion (1)
Joel O'Brien: Drums (1) 
Bill Mummy: Cow Bell (1)

Peter Asher: Producer


1. Big Joe
2. Clack Clack
3. All American Girl
4. Oldest Living Son


元キングストン・トリオのメンバーで、フォーク、カントリー音楽界で息の長い活動を続け、また1967年モンキーズで4週間連続1位の大ヒットを記録した「Daydream Believer」の作者でもあるジョン・スチュアート(1939-2008)初期の代表作。JTにとって最も初期のセッション録音だ。

1.「Big Joe」の出だしから控えめながらJT独特の音使いが聞こえる。ジョンの歌声はジョニー・キャッシュのように低く渋い声で、いかにもアメリカを歌う声にふさわしい。JTの声はバックコーラスに埋まり聞き分けることは難しい。エンディングで、ほんのちょっとだけ聴こえる男の人の声はJTっぽい。2.「Clack Clack」は大統領選挙キャンペンーン中に暗殺されたロバート・ケネディーのために書いた曲で、本曲のローヤリティーを彼の死後設立されたメモリアル・ファウンデーションに寄付するとの注書きがあり、彼の死を悼む歌詞が悲痛。3.「All American Girl」はアメリカ国歌の一部が導入部となって始まる。JTは時折リードギターのようにオブリガードを挿入する。4.「Oldest Living Son」は戦争で長男を無くした家族を歌ったもので、随所にJT独特のギタースタイルが出ている。

本作はピーター・アッシャー初期のプロデュース作品で、上記の他にダニー・クーチ、キャロル・キング、ラルフ・シュケット(ピアノ)、ジョエル・ビショップ・オブライエン(ドラムス)、クリス・ダーロウ(フィドル)といった彼の人脈といえる人々や、ナッシュビル録音ではチャーリー・マッコイ(ハーモニカ)やフレッド・カーター(ギター)などの有名セッション・ミュージシャンが参加している。ジョン・スチュアート本人のフィンガースタイル・ギターも味わい深い。キャロル・キングやダニー・クーチのプレイは初々しく、シンガー・アンド・ソングライター時代の黎明期である1970年の匂いが感じられる貴重な作品だ。


C3  Tapestry  (1971) [Carol King]  Ode


C3 Tapestry

Carol King: Piano, Vocal
James Taylor: Guitar, Back Vocal (5)
Danny Kootch: E. Guitar (3), A.Guuitar (5), Conga (4)
Charles Larkey : Bass, String Bass (4)
Russ Kunkel : Drums (1,2,4,5)
Joel O'Brien: Drums (3) 
Curtis Amy: Flute (2), Tenor Sax (3) 
Barry Socher : Violin (4)
David Campbell : Viola (4)
Terry King : Cello (4)
Joni Mitchell: Back Vocal (5)
Merry Clayton: Back Vocal (3)                            

1. So Far Away E15
2. Home Again 
3. Way Over Yonder
4. You've Got A Friend  A3 A15 B16 C4 E7 E8 E10 E13 E14 E15
5. Will You Still Love Me Tomorrow ? [C. King, G. Goffin]  C4 E15 E28

1971年 3月発売  全米1位


70年代のシンガー・ソングライター全盛時代の頂点に位置する、ポピュラー・ミュージック史上の大ベストセラー。71年夏5週間全米1位を続けた「It’s Too Late」、それは衝撃的な曲だった。当時の私は中学1年生。恋愛の経験もなく、本や映画の概念だけでイメージをふくらませていた訳で、音楽の嗜好だけは結構ませていたんですよね。あるいは彼女の中にある母性に惹かれたのかもしれない。当時彼女は作曲家からパフォーマーへの過渡期にあり、ステージ恐怖症との戦いであったという。JTのバックバンドの一員としてコンサートでピアノを弾き、途中1〜2曲自分の歌を歌わせてもらうことで、ソロ・アーティストとして自立する自信を身につけたと言える。アルバム作り自体は前作C1の延長線上にあるが、なんといってもJTがカバーして彼唯一の全米1位を記録した4. 「You’ve Got A Friend」など、収録された曲が粒揃いで、ひとつひとつが個性と魅力に溢れ、しかも調和が取れていて、アルバムを埋めるための捨て曲がまったくない。

JTは4曲に参加、前作よりは控えめなサポートに徹している。愛する人との切ない別れを歌い、全米14位とヒットした名曲 1.「
So Far Away」、故郷と愛する人への憧れを歌った2.「Home Again」、ゴスペル調の3.「Way Over Yonder」と、キャロルの歌は力強い。左のスピーカーから聞こえてくるJTのギターは控えめな音量でミックスされているが、美味しい料理の香味料のようにしっかり貢献している。シレルズが60年に大ヒットさせたこれまた名曲の5.「Will You Still Love Me Tomorrow ?」は、テンポを落として情感たっぷりに歌われる。ここでのJTのギターは最後の部分でメロディーを奏でるなど、より目立つ存在で、しかも当時恋人だった(実際は録音時にはもう別れていたようだが)ジョニ・ミッチェルとバックボーカルを担当している。センターでリードをとるキャロルに対し、JTが左、ジョニが右に固定されているため、各人の声は混ざることなく、はっきりと聞き分けることができる。本当に贅沢な曲だ。なおオリジナルのLP盤の見開きジャケットには二人がヘッドフォーンを付けて歌う写真が掲載されている。

1999年に再発されたボーナストラック入りリイシューCDでは、JTが当時の思い出を語ったコメントを寄せている。

(2007年7月24日追記) JTの参加曲につき、
4. 「You've Got A Friend」が漏れていましたので、追加しました。キャロル・キングのピアノの陰に隠れて地味な演奏ですが、ギターの音が聞こえます。


C4 The Carnegie Hall Concert (1996)  [Carol King]  Ode/Epic/Legacy




Carol King: Piano, Vocal
James Taylor: Guitar, Vocal (1), Back Vocal (2,4)
Charles Larkey : Bass (1)
Strings: (1,4) 

1. You've Got A Friend  A3 A15 B16 C3 E7 E8 E10 E13 E14 E15
2. Will You Still Love Me Tomorrow [C. King, G. Goffin]  C3 E15 E28
3. Some Kind Of Wonderful [C. King, G. Goffin]  C5
4. Up On The Roof [C. King, G. Goffin]  A10 A15 B16 B40 C1 E1 E5 E8 E15 E28

1971年6月18日ニューヨーク、カーネギー・ホールにて録音

1996年10月発売


「Tapestry」C3を発売し爆発的な人気が出始めた頃、キャロルがニューヨークで行った伝説のコンサートの実況録音が発売された。彼女にとっては作曲家からパフォーマーへの転向を宣言する、地元での凱旋公演であり、タイムマシンに乗って25年前に帰ったみたいなものだ。大喜びで買って帰り、感動して聞きましたね。ほとんどが彼女の弾き語りで、途中から夫君のチャールズ・ラーキーがベースで、ダニークーチが何曲かエレキギターで伴奏を付けるだけだ。ステージ恐怖症とのことで、最初はすごく緊張していて、固くなっているのがわかる。曲が進むにつれ、観客の暖かい声援もあり、次第に落ち着く。当日のライブがカットなしで収録されているため、歌うことによる自己解放が精神を高揚させ、ハイになってゆく素晴らしい過程がありのままに収められている。

そのハイライトが「Beautiful」を歌ったあとで、「すぐに戻ってくるわ」と言って退場し、ギターを持ったJTを引き連れて登場、大歓声に「おどろいたでしょう!」と茶目っ気たっぶり。「これから皆さんのためにささやかな歌を歌います。いや大きな歌かもしれない」と言って1.「You've Got A Friend」を歌いだす。ジェイムスのギターとボーカルが加わり、リード、ハーモニー・ボーカルを交代しながらデュエットで歌う。キーの関係でJTはいつもより低めの声だ。JTによるこの曲のカバーが全米1位になったのは6月なので、ヒット真っ最中の演奏ということになる。このバージョンは以前キャロル・キングのCD2枚組ボックスセット「A Natural Woman The Ode Collection 1968-1976」(1994)に未発表音源として収録されたのが初出である。この曲が収録されたキャロルのC3、JTのA3には、ボーカルでの二人の共演はなく、キャロルがバックを担当したJT初期のコンサート活動でもこの曲は演奏されていないので、これが当時の音源としては唯一のデュエット・バージョンだ。80年代の終わりに5年ほどニューヨークに住んでいた時、タウン・ホールにおけるキャロル・キングのコンサートを見る機会があった。民主党の大統領候補(確かハート議員といったかな?)の支援コンサートだったと記憶しているが、アンコールでJTが出てきてこの曲を歌ったときは、観客の熱狂が5分以上も続いたことを覚えている。

続くおなじみのヒット曲3曲はメドレーで演奏される。2.「Will You Still Love Me Tomorrow」の最初のピアノが始まっただけで大きな拍手が起きる。JTはギターの他に、彼としては高い声を出してハーモニー・ボーカルをつけている。切れ目なく61年にドリフターズでヒットした3.「Some Kind Of Wonderful」に移るが、ここではJTは伴奏のみ。4.「Up On The Roof」は再びJTがハーモニーを付け、大拍手のなかで二人の共演は終了する。あとはアンコールとしてキャロルが「Natural Woman」を一人で演奏してコンサートは終了する。ライブの臨場感、シンガーアンド・ソングライター時代の幕開けを告げる時代の匂いあふれる名演といえよう。


C5 Music (1971) [Carol King]    Ode


C5 Music

Carol King : Piano, Vocal
James Taylor : Guitar, Back Vocal (2)
Danny Kootch : Guitar, Back Vocal (2)
Charles Larkey : Bass (1)
Russ Kunkel : Drums
Bobby Hall : Percussion
Abigale Haness : Back Vocal (1)

1. Some Kind Of Wonderful
[C. King, G. Goffin]  C4
2. Song Of The Long Ago
3. Too Much Rain 
[C. King, T. Stern]

1971年12月発売 全米1位



「Tapestry」C3 と同年に発売されたキャロルの3枚目にも、JTは3曲ほど参加している。C4でも共演していたドリフターズのヒット曲 1.Some Kind Of Wonderfulは、数あるキャロルの名曲のなかでも最もスウィートな作品で、JTのギターはスローな曲の中でリズミックな動きを見せて、曲に変化と彩りを与えている。2.「Song Of The Long Ago」はJTに大きな影響を受けて作ったとキャロルが言っているとおり、曲想がJTの「Long Ago And Far Away」A3 に良く似ている。この曲ではギターの他に、二人で「ラララ」と歌うパートと、バックコーラスで彼の声を楽しむことが出来る。スローテンポの 3.「Too Much Rain」で聞こえるアコースティック・ギターは、ダニーと二人で弾いている。聞いた感じでは左チャンネルがダニーで、右がJTのようだ。

「Sweet Seasons」やカーペンターズがカバーした「It's Going To Take Sometime」などのヒット曲・名曲を収録、前作のムードを継承しながらも、よりソウルフルで明るい音楽性を追求したアルバムだ。


C6 Blue (1971)  [Joni Mitchell]  Reprise

C6 Blue

Joni Mitchell: Dulcimer, Vocal
James Taylor: Guitar
Russ Kunkel: Percussion
Sneeky Pete: Steel Guitar

1. All I Want  E25
2. California  B4
3. A Case Of You  B4

1971年 6月発売  全米15位 


当時恋愛関係にあったジョニ・ミッチェルのソロアルバムの3曲にギターで参加。このアルバムはジョニ・ミッチェルの最高作であるだけでなく、70年代のシンガー・アンド・ソングライター時代を代表する傑作だ。濃いブルーで統一されたジャケット(レコードの場合は中袋まで同じ色だった)がこの作品の雰囲気を象徴している。これほど繊細で張り詰めた感じの作品は他にない。上記3曲ともジョニはダルシマーを弾き、JTはいつものスタイルでギター伴奏を付ける。ラス・カンケルはクレジットではドラムスとあるが、実際に演奏しているのはコンガなどのパーカッションだ。

二人の親密な関係がそのまま絶妙なコラボレーションとなっていて、二人の演奏はまるで愛の会話をしているようだ。特に1.「All I Want」の歌詞は、愛する人へのポジティブな思いに溢れていて、人を愛したことがある人ならば、本当にぐぐっとくるぞ。JTのギターも研ぎ澄まされた感性で、非常に清冽な世界を醸し出すことに大いに貢献している。カナダ生まれのジョニが、当時住んでいたアメリカ西海岸への愛着を歌う、明るい感じの 2.「California」も素晴らしい曲だ。出だし部分のギターとダルシマーの絡みがカッコイイ。3.は「A Case Of You」は静謐な感じがするラブソングだ。

本アルバムの他にコンサートの共演音源 (B3, B4) などを残したが、結局はうまくいかず別れてしまう。彼女の次作の表題曲「For The Roses」は、時代の寵児となり自己を失いそうになったJTのことを歌ったものという。しかし、その後も音楽仲間としての交流は続き、お互いのアルバムにゲスト参加している。上記以外の曲では、変則チューニングを多用したジョニのギターが光っており、「Carey」では当時全盛期だったCSNYのステファン・スティルスがベースとギターで参加している。


C7 With Friends And Neighbors(1971) [Alex Taylor] Capricorn

C7 With Friends And Neighbors

Alex Taylor: Vocal 
James Taylor: Guitar 
Tommy Talton: E.Guitar
Johnny Sandlin: Bass
Paul Hornsby: E.Piano
Bill Stewart: Drums
King Curtis: Tenor Sax


1. Night Owl [James Taylor]  A1 B1


当時アレックス、ケイト、リヴィングストンの3人がそろってソロアルバムを発売したため、大いに話題になり、ローリングストーン誌でテイラー・ファミリーの特集記事がでるほどだった。JTよりも先に音楽活動を始めていた長男アレックスは、ダニー・クーチとならんでJTを音楽活動に引き込んだ張本人だ。彼自身は曲を書かず、ブルースやサザン・ロックのスタイルだったため、レコードデビューには相当苦労したらしい。弟のリヴィングストン・テイラーと同じカプリコーン・レーベルでの製作で、バック・ミュージシャンもリブのファーストアルバムとほぼ同じ、マッスル・ショールズ系のスタジオ・ミュージシャンだ。

彼の歌声は、晩年のガラガラ声とは異なり、JTよりも若干太いけどよく似ている。JTは自作の1.「Night Owl」1曲のみ参加している。まず曲がスタートする前のJTのアコギの音合わせが収録されていて、お馴染みのフレーズを弾き出してからバンドがフィルインする。ブラスセクションが加わった分厚いR&Bサウンドで、JTのアコギはその中に埋もれているが、エレキギターが右チャンネルに、アコギが左チャンネルに固定されているため、耳をよく澄ませばJTのプレイを聞くことが出来る。

本作ではJTの曲として上記の他に「Highway Song」が入っている。売れ行きは今ひとつだったが、その後も彼はスワンプロッカーとして地道な活動を続け、ファンの間でカルト的人気を博するようになる。JTと同じく酒と麻薬に苦しみ、特に前者については最後まで克服できなかったようで、1993年飲酒が原因の心臓麻痺のため惜しくも他界。テイラー兄弟全員による共演作を期待していたので、大変残念だ。


C8 Sister Kate (1971) [Kate Taylor]  Cotillion


C8 Sister Kate

Kate Taylor : Vocal
James Taylor: Guitar
Danny Kootch : E. Guitar (1)
Lee Sklar : Bass
Russ Kunkel : Drums
Carole King : Piano (2)
Sandra Crouch : Tambourine (1)
Memphis Horns : Horns (1) 

Peter Asher : Producer
                        
1. Look At Granny Run, Run [Jerry Ragavoy, Mort Shuman]       
2. Do I Still Figure In Your Life [Pete Dello]


兄の成功がきっかけとなって製作された、妹ケイト・テイラーのデビュー盤。自作曲はなく、JTの作品「Lo And Behold」、「You Can Close Your Eyes」の他、弟リヴィングストン・テイラー、キャロル・キング、エルトン・ジョンの曲が、オリジナルとは異なるアーシーなR&B サウンドを基調とするアレンジでカバーされている。録音当時の緊張のためか、少し固めの声には線の細さも感じられるが、若さ、誠実さと知性にあふれ、ブルーアイド・ソウルのひとつの個性であるとも言える。

JTは2曲に参加。1.「Look At Granny Run, Run」はフィラデルフィアのシンガー、ハワード・テイトによる比較的地味なヒット曲(1966 全米67位)で乗りのよいR&B だ。ケイトのボーカルも張り切ってシャウトしている。JTのギターは大編成のバンドの中に埋もれ、R&Bに特徴的なナインスのコードでリズムをきめているのが微かに聞こえるのみ。2.「Do I Still Figure In Your Life」はスローテンポで、後のイーグルスの「Desperado」に見られるようなゴスペル・フィーリングにあふれている。ここでは彼らしいアコギの伴奏を楽しむことができる。

JTとキャロル・キングのバック・ミュージシャンが勢ぞろいで、アットホームな雰囲気の良い作品だ。キャロル・キングのピアノや、チャールズ・ラーキー、リーランド・スクラーというベースの名手の競演も面白く、特にダニー・クーチのギターが通常よりもギンギンにフューチャーされていて聴き応え十分。

[2023年3月追記]
本作についての詳細は、キャロル・キング・ディスコラフィー「ゲスト・セッション参加作品」 G9を参照ください。


C9 No Secrets (1972) [Carly Simon] Elektra


C9 No Secrets

Carly Simon:Vocal, B. Vocal, A.Guitar 
James Taylor: Back Vocal
Lowell George: Slide Guitar
Jimmy Ryan: Guitar
Nicky Hopkins: Piano
Bill Payne: Organ
Klaus Voorman: Bass
Lim Keltner: Drums

Richard Perry: Producer

1. Waited So Long

1972年11月発売  


 
カーリー・サイモン3枚目のソロアルバムで、本作および、収録曲「You're So Vain」の大ヒットでスーパー・アーティストの仲間入りを果たした。私生活ではJTとの恋愛・結婚という幸せの絶頂期に製作され、敏腕プロデューサーのリチャード・ペリーの手により、繊細でありながら大胆という彼女のパーソナリティーがフルに発揮され、生き生きと光輝く姿が見事に捕らえられている。

JTは1曲に参加。私小説的な作品を作品を売り物とするカーリーが、「私は処女じゃないのよ」とユーモラスに、あっけんからんと歌う。セクシャルな事を、品良く歌うのは彼女の持ち味のひとつで、女性の自立、自己主張を掲げるウーマンリブの風潮が底流にある。バックミュージシャンが豪華で、ジム・ケルトナー、クラウス・ブーアマン、ニッキー・ホプキンスという少しアーシーなロックをやらせるとピカイチのリズムセクションをバックに、ローウェル・ジョージとビル・ペインのリトル・フィート組が合流。サザンロック風のサウンドで、特にローウェルのスライドギターが曲にしなやかなカラーを付け加えている。JTは歌詞第2番の1節で、ちらっとセカンドボーカルを入れる。そして歌詞最後の「But I've Already Waited So Long」でカーリーと一緒のコーラス、さらにエンディングでは、彼女が「I'm Sorry」と歌った直後に、JTが少しすねたような声で「I'm No Virgin」と歌い、抱腹絶倒の楽屋落ちを演じている。

それにしても当時私は10代のウブな若者でしたが、ノーブラのジャケット写真には興奮したなあ。


C10 Clouds In My Coffee (1995) [Carly Simon]  Arista




Carly Simon: Vocal, Piano
James Taylor: Guitar
Danny Kootch: E. Guitar
Unkown: Drums
Unkown: Bass
Ben Taylor: Back Vocal (1)

1. Angel From Montgomery [John Prine]
2. I'm All It Takes To Make You Happy

1995年11月発売


1969年から 1994年までの代表曲を集めたカーリーサイモンのボックスセットに、1972年録音の未発表曲が2曲収録された。タイトルの「Clouds In My Coffee」は、彼女最大のヒット「You're So Vain」の歌詞の1節から。彼女が自分で選んだ曲が、年に関係なくテーマごとに3枚のCDに分けて収録されている。添付されたブックレットには、彼女自身の寄稿と、若い頃の写真が沢山掲載され、あたかも彼女と二人で向かい合っているようなプライベートな気分になる。

この2曲のブロデュースは、初期のエルトン・ジョンで有名なポール・バックマスター。1.「Angel From Montgomery」は当時新進気鋭のシンガー・アンド・ソングライター、ジョン・プラインの作品で、同タイトルのデビューアルバムに収録されていたもの。カーリーは、かなりハスキーで太い声で歌っていて、60年代のフォーク時代と70年代のシンガー・アンド・ソングライターとの過渡期にあるようだ。ここでは本ボックスセット製作時に、JTとカーリーの息子ベン・テイラーのボーカルがオーバーダビングされており、コーラスの他、エンディングで「ラララ〜、ウーウー」というアドリブ・ハミングが聞こえる。JTのギターは地味な演奏。途中から入るエレキギターは正にダニーのものだ。ドラムはラス・カンケルのように聞こえるが解らない。このボックスセットには曲毎のパーソナルが掲載されていないので、誰が何を演奏しているのかが解らないのが、大変残念だ。2.「I'm All It Takes To Make You Happy」はより洗練された感じの曲で、JTのギターも「Sunny Skies」のようなピッキングで、ちゃんと聞こえる。

1.は後に発売された他のベスト盤にも収録されているようだ。2.が聞けるのは長らく本作だけだったが、2015年の「Songs From The Trees」に収められた。