S22 Leather Launderette(1988) Black Crow CRO 218
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[Bert Jansch And Rod Clements]
Bert Jansch: Vocal (1,2,5,9,11), Guitar, Banjo (2)
Rod Clements: Vocal (4,6,8,10), Electric, Acoustic And, Mandolin, Bass
Marty Craggs: Addtional Vocals
Geoff Heslop: Producer, Sleeve Design
Mickey Sweeny: Engineer
[Side A]
1. Strolling Down The Highway S1 S2 S25 S27 S29 S33
2. Sweet Rose S20 S36
3. Brafferton * [K.Tickell]
4. Ain't No More Cane [Trad. Arr. Clements] S36
5. Why Me S20
6. Sundown Station [R. Clements]
[Side B]
7. Knight's Move * [Jansch, Clements] S36
8. Brownsville [Sleepy John Estes, Arr. Clements]
9. Bogie's Bonny Belle [Trad. Arr. Jansch] S36
10. Leather Launderette [R. Clements]
11. Been On The Road So Long [A. Campbell] S3 S25 S36
Recorded Jan. 1988
1988年3月発売
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この作品はバートのソロ・アルバムではなく、「A Rare Conundrum」1977 S13 のバックとプロデュサーを務めた元リンディスファーンのロッド・クレメンツとの共作盤だ。彼は当時ペンタングルのメンバーで、「So
Early In The Spring」1988 P16 などを録音、アルコール依存症のため心身ともに絶不調だったバートをサポートしていたようだ。発売はブラック・クロウ・レコードというマイナー・レーベルでイギリスのトラッド音楽やアーチー・フィッシャー、ドクター・ジョン等の作品を発売している。
ロッドとの共演盤ということもあり、バートはボーカルの大半を担当しているものの、彼のカラーは控えめで、ライブ録音の様に素朴な音作りとなった。心身の不調のためか新しい作品はなく、昔の作品の再演やトラッドを題材に選んだ他、ロッドの作品が2曲あり、それも6,
10 という要の存在となっている。またロッドの伴奏やハーモニー・ボーカルのアンサンブルには、バートと異なる独特の泥臭さがあり、この作品ではロッド・クレメンツの音楽性がかなり表に出ているものと思われる。
1.「Strolling Down The Highway」は23年ぶりの再録音で、余裕のある瓢々とした歌が刻まれた年月を感じ、「自分の道を歩んで歌ってきたんだぜ」という風に聞こえる。2.「Sweet
Rose」、5.「Why Me」は前作「From The Outside」1985 S20 に収録された曲で、ここではテンポを上げ、エレキギター、ベース、マンドリン等を従えて力強い出来上がり。3.「Brafferton」は2台のギターによるインストもので、ケルト音楽風のスタイル。4.「Ain't
No More Cane」はザ・バンドの演奏でお馴染みのトラッドで、ラフなアレンジによるバックボーカル付の演奏。6.「Sundown Station」はロッド・クレメンツ作の放浪の歌で、リードボーカルも彼が担当している。「夕暮れの駅に連れていっておくれ。汽車が寝床なのさ。さよならなんて言って欲しくないね。わかっているだろ? 俺は風に吹かれ、雨に洗われるよそ者なのさ」という歌詞には計り知れない重みがあり、哀愁あるスライドギターのメロディーと合わさって素晴らしい出来上がりである。
7.「Knight's Move」の前半部分は、ジョンレンバーンの「The Lady And The Unicorn」の「Lamento Di
Tristan」のメロディーと同じで本作のなかでは異質の中世音楽。バートのアコギをバックにロッドがエレキでメロディーを演奏する。次の曲は正当的なアメリカの黒人ブルース
8.「Brownsville」で、作者のスリーピー・ジョン・エスティスは1920〜30年代に活躍し1960年代のフォーク・ルネッサンスの時代に再発見されたブルースの巨人のひとりで、鉛筆とゴムひもで作ったカポをつけたぼろぼろのギターを抱えた写真が有名。リードヴォーカルはロッドで彼のエレキ・スライド・ギターがいい味を出している。9.「Bogie's
Bonny Bell」はトラッドで、他の曲では控えめなバートのギターがここでは目立っている。
10.「Leather Launderette」はロッド・クレメンツ作のブギーで、リードボーカルも彼が担当(バートの声ととても良く似ているため、どっちが歌っているのか判りにくい)。タイトルを直訳すると「革ジャン用コインランドリー」?。ジャケットのイラストもそんな感じで描かれているが、歌詞の内容から革ジャンを着て行く硬派なナイトクラブのことを歌っているのがわかる。ハードボイルドで面白い曲だ。アレックス・キャンベルの11.「Been
On The Road So Long」は「It Don't Bother Me」1965 S3 のバージョンのようなトゲがなく、シンプルでさらっとした演奏が心地よい余韻が残る。本作はバートの作品のなかでは薄口で軽い出来と思うが、ロッドの控えめで趣味の良いサポートもあって、聞き込むとそれなりに味がある作品。
[2011年12月追記]
発売年を1989年から1988年に訂正しました。バートのホームページのディスコグラフィーには、1999年とありましたが、この手のマイナーレーベルのフォーク音楽で、1988年1月に録音して1年以上後に発売というのは、通常考えにくいこと。当時残された二人の放送音源が1988年4月であることからです。
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S23 Sketches (1990) Temple COMD 2035 独 |
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Bert Jansch : Vocal, Guitar, Banjo, Percussion
Peter Kirtley: Guitar, Percussion
Danny Thompson: Bass, Chimes, Percussion
Steve Baker: Blues Harp
Stefan Wulff: Percussion
Frank Wulff: Percussion, Alto-Flute, Rainstick
Danny Thompson, Bert Jansch, Peter Kirtley: Producer
Heather Jansch: Cover Art Work
1. Ring-A-Ding Bird S3
2. One For Jo S9 S9 S10 S11 S18 S36 O10 O13
3. Poison S6 S33 S36 S36 P10
4. The Old Routine S20
5. Needle Of Death S2 S2 S9 S25
6. Oh My Father S8 S33
7. Running, Running From Home S1 S14 S17 S19 S25 S36 S36 S36 O16
8. Afterwards * [Peter Kirtley] O28
9. Can't Hide Love S14 S15 S18 S19 S27 P19 P22 O17
10. Moonshine S8 S36 S36 S36 P21 O40
11. A Woman Like You S6 S27 S32 S36 S36 P3 P11 P13
12. A Windy Day
13. As The Day Grows Longer Now S3
歌詞付き
1990年11月発売
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1965年のデビュー以来、歌い続けてきた25年間の道のりを振り返った作品。レコード会社の要請により、ほとんどの曲が過去の作品の再演という作品を製作したとのことで、そういう意味で後ろ向きに捉えるひともいるだろうが、それらが最初に録音された頃と比べると歳月というものが彼の歌にどのような変化を与えたかがわかる。昔のような激しさがなくなったが、哀愁ある枯れた味わいの淡々とした歌は、年老いたブルースマンのそれのようである。ここでは彼の歌が主役であり、ピーターのギターやダニーのベースのサポートは控えめ。最近の録音の流行とは異なり、各楽器の音をクリアーに分離せず、混ぜ合わせたようなミキシングがされており、その暖かい音作りはこの作品に合っている。カバー・デザインは、元奥さんのヒザー・ジャンシュが久しぶりに担当。
1.「Ring-A-Ding Bird」は初期の名曲で、テンポを上げてさらっと歌う。終盤にオーバーダビングのバンジョーが聞こえるのが面白い。2.「One
For Jo」のバートのギターは当時とほとんど同じ。ミキシングのためか本作のダニーのベースは余り良く聞こえず、アグレッシブなインタープレイは聴かれない。3.「Poison」は少しファズが聞いたピートのエレキ・ギターとブルースハープが好調。本作はジャッケットに歌詞が印刷されており、初期/中期の曲の歌詞が入手できるのが有り難い。5.「NeedleOf
Death 」は、1965年版の赤裸々な感情の発露に対し、今回の抑制が聞いた歌声はどうだろう。前者の泣く様な声も良いが後者の枯れた歌声のほうが深みがあると思う。7.「Running,
Running From Home」はデビューアルバム S2がオリジナルだが、1980年始めのコナンドラムの演奏でもお馴染みの名曲。
8.「Afterwards」はピーター・カートレイ作のインスト。美しいコード進行とメロディーが優雅で印象的な佳曲で、特にピートのリード・ギターのタッチと音使いの美しさは素晴らしい。ちなみに彼のソロアルバム
1992 O28 では別アレンジのヴァージョンが聴ける。9.「Can't Hide Love」は、「Avocet」1979 S15 のなかのインスト曲「Kingfisher」のメロディーに歌詞をつけて、全く別の曲に改作したもの。10.「Moonshine」はピートのギターのサポートが効果的。11.「A
Woman Like You」は魔術的な雰囲気のあるラブソングだが、バートの変則Dチューニングのギターに対しピートのファズ・エレキギターが絡む演奏が新鮮。
12.「A Windy Day」はバートの作品としては本作唯一の新曲。アルペジオの伴奏によるシンプルな歌詞とメロディーによる曲で、サンフランシスコでの風の強い日の印象を綴ったもの。歌詞が1番しかないが、ショート・ショートの小説のような余韻があり、ピーターの控えめだが個性的なオブリガード、間奏のフランク・ウルフのアルト・フルートの静かなプレイが淡々と続き6分を超える曲となった。13.「As
The Day Grows Longer Now」は明るく演奏される。このアルバムは過去の名曲を集めて再録音したベスト盤であるかの様にみえるが、プライベートな雰囲気がする出来上がりとなっており、デビュー25周年記念という企画なのであろう。入門者向けではないが、長年彼の音楽を追いかけてきたファンにとっては最高のプレゼントである。
なおこの作品の録音にはアウトテイクがあり、そのうち「Color My Paintbook」、「Come Sing Me A Happy Song」の2曲がペンタングル名義のベスト盤「Anniversary」1992
O27に収録された。ちなみにバートの作品では、本作からCD中心の販売に移行しており、レコード盤はほんの少し出回らなかったものと思われる。
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S24 The Ornament Tree (1990) Run River RRA CD0012 |
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Bert Jansch: Vocal, Guitar
Maggie Boyle: Flute, Whistles, Bhodron
Paul Boyle: Fiddle
Peter Kirtley: Guitar
Richard Curran: Fiddle
Nigel Portman-Smith: Bass, Accordion
Dave Turner: Bass
Michael Klein: B.Vocal, Percussion
Steve Tilston: Appeggione, Mandoline
Michael Klein: Producer, Engineer
Paul Ansell: Design
1. The Ornament Tree (Bonny Portmore) [Trad.] O27
2. The Banks O' Sicily [Hamish Henderson]
3. The Rambling Boys Of Pleasure [Trad.]
4. The Rocky Road To Dublin * [Trad.]
5. Three Dreamers [Trad., Words: Jansch] S13
6. The Mountain Streams [Trad.]
7. The Blackbird Of Mullamore [Trad.]
8. Ladyfair * [Trad.]
9. The Road Tae Dundee [Trad.]
10. Tramps And Hawkers [Trad.]
11. The January Man [Dave Goulder] S8
12. Dobbins Flowery Vale [Trad.]
歌詞付き 1990年11月発売
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「Moonshine」1973 S8 以来久しぶりのトラッド曲集。今回は、ナイジェル・ポートマン・スミスやピーター・カートレイといった気心の知れた仲間や、マギーボイル、スティーブ・ティルストンというモダン・トラッドの若手大物と組み、アルコール依存症も治ったようで、創造性にあふれ、スタジオできっちり練り上げられた透明感あふれる出来上がりとなった。
マギー・ボイルは1987年に本作品と同じレコード会社より「Reaching Out」 O25 というソロアルバム(バートはギターで2曲ほど参加)を発表後、1988年のジョン・レンボーン・グループの作品「Ship
Of Fools」に参加していた女性で、ボーカルの他にフルートやホィッスル等もこなす。驚いたのはハリソン・フォード主演の映画「パトリオット・ゲーム」
1992(アメリカ人のCIA職員がある事件のためにアイルランド過激派に恨まれ狙われるサスペンスもの)の挿入歌に彼女の名前があったことで、シンセサイザーをバックにアイルランドの歴史の奥深さを感じさせるような歌であった。夫君のスチィーブ・ティルストンは、バートが以前のインタビューで好きなギタリストのひとりに挙げていた人で、数枚のソロアルバムを発表。上記のマギー・ボイルやジョン・レンバーン・グループのアルバムにも参加している。本作での彼らのサポートは控えめで、バートのギターを中心としたシンプルなアレンジには好感がもてる。
本作はジャケットに歌詞が印刷されており、大変有り難い。歌詞の判らないトラッドなんて..... ということで大喜びなのだが、現実は厳しいもので
2, 9, 10はスコットランド訛りがきつくて歌詞を読んでもよくわかりまへん、というものもある。今回は2曲を除きバートにとって初録音であり、この作品にかけるバートの意気込みが伝わってくる。1.「The
Ornament Tree」のイントロのギターとバートのボーカルから、今回のスタジオ録音は、クリアーで音の分離がはっきりしたものであることがわかる。愛着ある森林を切られた悲しみが切々と歌われる。それは現代の自然破壊に対するプロテストでもある。3.「The
Rambling Boys Of Pleasure」は、娘と恋に落ちた放浪者が資力がないため諦めるが、まだ若いし世界は広いから希望を失わない、という内容の歌。4.「The
Rocky Road To Dublin」 8.「Ladyfair」は、アイリッシュ・ダンス・チューン風のインストもので、ジョン・レンバーン・グループの音楽に非常に近い。
5.「Three Dreamers」のメロディーは、ボブ・ディランの初期の作品「Walls Of Red Wing」(未発表だったため、当初は海賊盤で、後に「Bootleg
Series」に収録された)にも使用された。バートによる歌詞の内容は遠い昔の若き日々の夢を描いたもので、時代背景が曖昧なトラッド的描写のなかにバート本人の夢が織り込まれているようでとても味わい深い。6.「The
Mountain Streams」は山野を放浪して生きる若者が主人公の恋と別れの話。11.「The January Man」は「Moonshine」1973
S8 にも収録されていた。「1月の男はウールのコートと革のブーツを身にまとい道を歩く。2月の男は髪から雪をはらい落とし、手に息を吹きかける。3月の男は春の訪れを知り........」といった感じで12月まで続き、また1月の男にもどって「毎年その繰り返しなのだ、永遠に.....
」という内容の歌。
この作品におけるバートのギターを含む伴奏は、シンプルで表に出ることはない。あくまでトラッドの曲が中心に据えられていて、その哀愁あふれるメロディーと歌詞を誠実に淡々と歌いあげるバートの歌を聴いていると、日常生活のストレスがふっと消えて、風が吹き抜ける朝霧の草原に立っているような透明な気分になることだろう。
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S25 Acoustic Routes (1993) Demon NINETY 7 |
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Bert Jansch: Guitar, Vocal (2,4,12,13,15,16,17)
Bert Jansch: Soundtrack Producer
Colin Harper: Sleeve Notes:,
[The Soundtrack From The Film 'Acoustic Routes']
1. Chasing Love (With Jacqui McShee) S36 P19
2. Running From Home S1 S14 S17 S19 S23 S36 S36 S36 O15
3. Don't Pity Me [McGhee] (With Brownie McGhee)
4, Needle Of Death S2 S2 S9 S25
5. Go Your Way My Love [Jansch, Briggs] (With Anne Briggs) S5
10. The Elfin Knight [Trad.] (With Martin Cathy) P18
12. Blues Run The Game [Jackson C.Frank] (With Al Stewart) S1 S11 S14 S17
S18 S27 S29 S33 S36 S36 S36 S36 S36 S36 O16
13. Let Me Sing (With Peter Kirtley) S16 S17 S18 S19 S27 S36 O16
15. High Emotion S21
16. Heartbreak Hotel [Axton, Durden, Presly] (With Albert Lee) S18 S19
S36
17. If I Were A Carpenter [Tim Hardin] (With Albert Lee) S18 S18 S19
18. Parcel Post Blues [McGhee} (With Brownie McGhee)
19. Walk On [Trad.] (With Brownie McGhee)
20. Country Blues [Doc Boggs] (With Billy Connolly)
日本発売元: MSI/TOKYO(MSIF3125)
注:6.「40 Ton Parachute」、7.「Sitar Ram」(Davey Graham)、8.「The First Girl I
loved 」、9.「Happiness Was Free」(Wizz Jones)、11.「The Blood Of The Lamb」(Duck
Baker)、14.「That'll Do Babe」(Ralph McTell) はバート不参加。
[2013年4月発売 リイシュー盤 Volume 2]
21. The Parting (With Peter Lirtley) ※ O26
22. Strolling Down The Highway S1 S2 S22 S27 S29 S33 S36 S36 S36
24. Blackwaterside [Traditional] (With Anne Briggs)※ S4 S18 S18 S27 S33
S36 S36 S36 P21 O11 O16 O42
25. Tell Me What Is True Love ? ※ S7 O27
27. First Light (With John Renbourn)
30. CC Rider (With Brownie McGhee) ※
32. Come On If You're Coming (With Brownie McGhee) ※
33. Key To The Highway (With Brownie McGhee) ※ S10 O38
34. First Time Ever I Saw Your Face * [Evan MacCall] ※ S4 S8 S18
35. Been On The Road To Long [A. Campbell] S3 S22 S36
36. Paper Houses (With John Renbourn) ※ S28 S29 S34 S36
23.「Jones」(Davey Graham And Duck Baker)、26.「First Song」 (Ralph McTell)、28.「Memories
Of My Trip」、29.「I Got Fooled」、31.「The Death Of Blind Boy Fuller」(Brownie
McGhee)はバート不参加。
※: オリジナル映像版に収録されていない曲
注) 写真上: 1993年発売のオリジナル盤
写真下: 2013年発売のリイシュー盤(2枚組)
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本作はドキュメンタリー映画「Acoustic Routes」のサントラ盤。バート本人のアイデアにより1960〜1970年代のフォーク・ムーブメントを映像とサウンドで回顧したもので、資金難のために色々苦労をしたようだが、最終的にスコットランド映画制作基金と
BBCスコットランドがスポンサーとなって制作され、1992年に公開された。残念ながら現在のところ日本では未公開。いつビデオが公式発売されるかな。ただし映画はドキュメンタリー主体で、挿入曲の完奏版が全くないため、音楽をじっくり味わうにはCDを聴いたほうが良い。そのためまずCD収録曲の解説に専念し、後半で映像版の解説をすることとしたい。
1.「Chasing Love」は本作唯一のバートによる新曲。変化に富む魅力的なコード進行とメロディーの曲で、おなじみジャッキー・マクシーのボーカルが心地良く、バートのギター伴奏も最高。なお本曲は後にペンタグルの「Live
1994」P19 に収録された。2.「Running From Home」、4.「Needle Of Death」は彼の弾き語りによる往年の名曲で、従来のバージョンに比べ演奏時間が短くシンプルでストレートな出来。3.「Don't
Pity Me」、18.「Parcel Post Blues」、19.「Walk On」はブルースの巨人、ブラウニー・マギーとの共演。3.は映像版には入っていない。5.「Go
Your Way My Love」(オリジナルは「Nicora」1967 S5 に収録)は何とアン・ブリッグス (1944- ) との共演で、私にとっては本作最大の目玉。ブルース一辺倒であったバートは彼女から強い影響を受けて、イギリスのトラディショナル・フォークへの傾倒を深め、両者を融合させて独自のスタイルを確立したという。当時いくつか共作曲を残しているが、二人一緒の録音は初めて。彼女のすこし硬めであるが存在感溢れる歌声を聴くと、ファンにとってはタイムマシンで1967年に戻ったような気がする。なお彼女のオリジナル・レコードは中古市場で高値を呼んでいるが、本曲のソロバージョンは「ブラックウォーター・サイド」というタイトルでキング・レコードからCD化されており、また1995年には彼女の2作目もCD化された。
マーチン・キャシーのボーカルによる10.「The Elfin Knight」はご存じスカボロー・フェア。本作のタイトルが変名なのは、後に述べる著作権上の問題のため。ちなみにボブ・ディランの名曲「Girl
From The North Country Fair」の歌詞もこの曲を題材としたもので、当時はこういうケースが結構あったようです。12.「Blues
Run The Game」はおなじみの曲の再演で、アル・スチュアートのギターが加わり、さらっとした演奏。15.「High Emotion」は「From
The Inside」CD版 1993 S21に新たに収録された曲の別録音で、深みのある歌詞が実に素晴らしい。16.「Heartbreak Hotel」、17.「If
I Were A Carpenter」は本作もうひとつの目玉で、「Heartbreak」1982 S18以来のアルバート・リーとのリユニオン・セッション。ただし今回はアルバートのリードがアコギであるところが面白い。相変わらず「ため」のきいたソロを聴かせるが
16.はソロが盛り上がってこれからという時に終わってしまい、取り残されたリスナーは「あれっ」とずっこけてしまう。17.はさらっとした演奏だが、さすがに聴かせる。20.「Country
Blues」はアメリカのトラッドで、映像版のナレーターを担当しているビリー・コノリーのバンジョーとボーカルとの共演。演奏自体はドック・ワトソンのバージョンとほぼ同じ。セッションの大半は、リハーサル無しの本番テイクといった感じで、安易なプロデュースのものが多く、全体的にバートや他のミュージシャンの演奏のクオリティーもイマイチといった感じだが、昔懐かしい曲の再演や、夢の共演などが目白押しで、映画を観ていない人でも十分に楽しめる、バートのファンにとっては盛り沢山の内容。
[2013年5月追記]
本映像は、公式発売されないまま長い年月が経ち、1993年に発売されたCDもすぐに廃盤となり、中古市場で高値を付けるようになっていたが、2013年に製作20周年を記念してCD、DVDが再発され、そのうち4月発売の2枚組CDを聴くことができた。Volume
1は、1993年に発売されたオリジナルと同じ内容。初公開のアウトテイクや映像で一部のみ観ることができた演奏を収めた Volume 2は、総じて出来がイマイチと思われるが、バートが亡くなった現在、これらを聴けるようになったことは、ファンにとって大変有難いことだ。
21.「The Parting」は、1989年のオムニバス・アルバム「Master Craftsmen」O26に収められた曲で、本作でもピーター・カートレイとのデュオによる演奏を聴くことができる。O26がスタジオできっちり作られた感じであったのに対し、本作の演奏は、よりライブな感じで、ピーターがハーモニー・ボーカルを付けている点が異なる点。22.「Strolling
Down The Highway」は、映像ではビリー・コノリーの前で演奏していて、プライベートな場における友人に対するプレイのようなリラックスした演奏になっているため、音源として聴く場合、その分シャープさ、パンチに欠ける内容になっている。
24.「Blackwaterside」は、今回のボーナストラックの目玉だろう。アン・ブリッグスとバートの二人による1960年代の音源は、私が知る限り残されておらず、Vol.
1 における5.「Go Your Way My Love」が唯一の共演だったからだ。映像においては、アンの歌はアカペラで撮影されており、バートのギター演奏と別になっていたのに対し、今回のバージョンでは、アンがバートの伴奏でしっかり歌っており、曲の出来としては5.「Go
Your Way My Love」に劣るかもしれないが、それでもファンにとっては夢の共演だ。25.「Tell Me What Is True
Love ?」は、映像盤にはなかった演奏。「Anniversary」 1992 または「Deroll Adams 65th Birthday
Concert」 1991 O27では、ジャッキ・マクシーが歌っていたことを考えると、この年代でバート本人による弾き語りが楽しめる貴重なトラックと言えよう。27.「First
Light」は、ジョン・レンボーンとのリユニオンとして話題となったが、映像版に一部収録されたのみで、Vol. 1に収録されなかった演奏。二人の演奏はぎこちなく、曲も魅力に欠け、どうみても良くない出来である事は明らかであるが、初めての完奏版収録という意義を認めましょう。
30.「CC Rider」、32.「Come On If You're Coming」、33.「Key To The Highway」は、バートがサンフランシスコで撮影したブラウニー・マッギーとのセッションのアウトテイク。CDには、バートが参加していない曲を含めると
6トラックが収められ、Volume2の構成をアンバランスにしているが、未発表、アウトテイクを収めたボーナス・ディクスなので、しようがないか.......。バートがイギリスでソニー・テリー(ハーモニカ)とブラウニー・マッギーのライブを観て、コンサートの後、彼に頼ん込んで目の前で弾いてもらい、一晩で弾けるようになったという、バートのギタースタイルのルーツ
33.「Key To The Highway」がメインだろう。とは言え、これらの共演は、Vol. 1に収録された 18.「Parcel Post
Blues」、19.「Walk On」と同じ雰囲気の演奏で、とりたてて新鮮というものではない。それでもブラウニー・マッギーとの共演の(恐らく)全貌を聴くことができるようになった事を感謝すべきだろう。ちなみにブラウニーのアカペラによる
28.「Memories Of My Trip」は、映像版でも観ることができる。
映像版では聴くことができなかった 34.「First Time Ever I Saw Your Face」は、「Jack Orion」 1966
S4と同じタイプのインストルメンタルで、ここでは1分ちょっとの断片であるが、出来は良い。 映像版の終盤で、バートがしみじみと演奏する様が印象的だった
35.「Been On The Road To Long」は、本ボ−ナス・ディスクのベストトラックだ。2分34秒という短い演奏だけど、彼の歩んできたキャリアを振り返るようなギタープレイ・歌唱は、聴く者の心を打つ重みがある。36.「Paper
Houses」は、映像版では自宅におけるリハーサルのシーンのみ写っていた曲で、ここではスタジオにおける完全版が初めて披露された。出来としてはまあまあかな?この後発売される映像版の予告編で、27.「First
Light」と同じセッティングで本曲を演奏しているシーンがあったので、DVDのボーナストラックとして収録されるのではないかと思われる。
「映像で一部のみ観ることができた演奏を収めた」と述べたが、映像版にあったハムリッシュ・イムラックとアーチー・フィッシャーによる.「Solid
Gone」(バートは非参加)は含まれておらず、今回のボーナスディスクですべての曲が収められたともいえないので、将来未発表曲・テイクが出てくる可能性は残っていると思う。以前みた映像は画質が悪かったこともあり、良質かつボーナストラックが詰まったDVDの発売が楽しみですね。
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Acoustic Routes (映像 Film Original Version) |
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Bert Jansch : Guitar, Vocal (2,11,14,17,22,23,25,26)
1. Lost Love (断片) ※ (S13 S19 P14)
2. Stroll Down The Highway ※ (S1 S2 S22 S27 S29 S33 S36 S36 S36 O16)
3. Chamberin (断片) ※ (S9 S10 O33)
4. Go Your Way My Love [With Ann Brigs]
6. Blackwaterside (断片) ※ (S4 S18 S18 S27 S33 S36 S36 S36 O11 O16 O42)
8. Anji (断片) ※ (S1 S2 S2 S10 S11 S14 S17 S29 S36 S36 S36 S36 S36 S36
S36 O19)
11. Needle Of Death
11114. Paper Houses (断片) ※ (S28 S34 S36 )
15. First Light [With John Renbourn] ※
17. High Emotion
20. Blues Run The Game [With Al Stewart]
21. The Elfin Knight [With Martin Cathy]
22. Running From Home
23. Let Me Sing [With Peter Kirtley]
24. Chasing Love [With Jacqui McShee]
25. If I Were A Carpenter (Tim Hardin) [With Albert Lee]
26. Heartbreak Hotel (Axton, Durden, Presly) [With Albert Lee]
28. Walk On (Trad.) [With Brownie McGhee]
29. Parcel Post Blues (McGhee) [With Brownie McGhee]
30. Been On The Road (Alex Campbell) (断片) ※ (S3 S22 S36)
31. Coutry Blues (Doc Boggs) [With Billy Connolly]
注:5.「Blackwaterside」の歌の部分※ (Ann Brigs)、 7.「Solid Gone」※(Hamish Imlach)、9.「Sitar
Ram」、10.「40 Ton Parachute」(Davey Graham)、 12.「The First Girl I loved」、13.「Happiness
Was Free」 (Wizz Jones)、 16.「That'll Do Babe」 (Ralph McTell)、18.「Round Midnight」※、19.「The
Blood Of The Lamb」 (Duck Baker) 、27.「Memory Of My Trip」(Brownie McGhee)はバート不参加
注) すべて未完奏(※はCD未収録)のため、※の曲については他の作品のカバー欄に本作を含ないこととした。
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懐かしい取り合わせと珍しい映像が盛り沢山で、大変楽しめる映像。完奏曲が1曲もないが、その分進行がスピーディーで密度が高い出来となった。1960年代のイギリスのフォーク・シーンをバート自身が中心になって回想したもので、当時の伝説的なシンガー、ギタリスト達の姿を後世に残す映像作品がなかったことが製作の動機という。
本作のナレーターは、近年コメディアンとして成功し、俳優(トム・クルーズ主演の「Last Samurai」2004年、ダスティン・ホフマンが監督したマギー・スミス主演のオペラのコメディー「Quartet」に脇役で出演)としても有名なビル・コノリー(1942-
最後にバンジョーを弾きながら30を歌う)。彼が当時のアルバム・ジャケットを取り上げながら、軽快な話術で登場人物を紹介してゆく。バートのファースト・アルバム
S2のエピソードから始まり、「Lost Love」のギター演奏場面が少しだけ入る。コノリーの前でバートが2.「Stroll Down The
Highway」を演奏した後に、コノリーによりハムリッシュ・イムラック(1940-1996)が紹介され、アーチー・フィッシャー(1939- )、アン・ブリッグス(1944-
)も加わって、彼らの活動場所だったグラスゴーのHowf Folk Clubがあった建物を訪れての黎明期の回想、バートによる 3.「Chamberin」の断片、アン・ブリッグスによる4.「Go
Your Way My Love」となる。この曲ではバートのギターは入るが写っていない。レコードによる彼女の「Snow」のアカペラがかかり、コノリーとバートによるレッド・ツエッペリンの「Black
Mountainside」のエピソード。ここではアン・ブリッグスが無伴奏で 5.「Blackwaterside」を歌う姿を拝むことができ、そのままバートのギターによる
6.の断片に引き継がれる。年老いたとはいえ、あの意思の強そうな表情は健在。コノリーのコメントの後、ハムリッシュがフィッシャーと一緒に 7.「Solid
Gone」をプレイする。
ほんの数秒だけど1959年のデイヴィー・グレアム(1940-2008)が「Cry Me A River」を弾く1959年のBBCテレビ映像が写り、びっくり。フォークにジャズと民族音楽のイディオムを持ち込んだ功績が解説され、1964年の傑作アルバム「Folk,
Blues & Beyond」のジャケット写真を背景に「Leaving Blues」の1節が流れる。バートが 8.「Anji」をほんのちょっと弾き、デイビーのアルバムから曲の断片が流れる。そしてパブで撮影された彼の晩年の姿と演奏
9(中近東音楽), 10(ブルージーなジャズ)が観れるのは有り難いが、やはり彼は変人に見える。次にトゥルバドール・クラブの回想と、ヘロインによる知人の死を歌った
11.「Needle Of Death」のエピソードと演奏の後、ウィズ・ジョーンズ(1939- )が登場。アンジーをほんの少しだけ弾いた後に演奏される弾き語り
12, 13 は素晴らしい出来。
バートがパソコンによる自動採譜システムを操作するシーンの後、ジョン・レンボーンとのキッチン・リハーサルの再現シーンが入る。そこでバートが歌っている断片は、後に「Toy
Balloon」1998 S28 に収録される14.「Paper Houses」だ。コノリーが「Bert &John」P1のジャケットを取り上げて、二人が碁をプレイしているのを指摘、難しくミステリアスなゲームをしている二人に畏敬のコメントをするのが面白い。二人は本当にやっているのかな?
続いてスタジオでの二人の演奏 15.「First Light」。期待に反してデュオに必須の一体感が感じられず、出来はいまいち。この曲がCDに収録されなかったこと、当時企画された二人の再会盤の製作が没になった理由がよくわかる。
次にラルフ・マクテル(1944- )が登場、人生悔い無しとコメントして、16.「That'll Do Babe」をプレイ。バートによる17.「High
Emotion」の弾き語りの後、ダック・ベイカー(1949- )が出てきて、アメリカ人ギタリストとしての彼らから受けた影響を語る。ちなみに18,
19 2曲の演奏シーンの完奏版が後日ステファン・グロスマン・ギター・ワークショップから発売されたオムニバス・ビデオ「Fingerstyle Guitar
New Dimentions & Explorations Vol.2」に収録された。ボブ・ディランのイギリス滞在のエピソードが語られ、「Blowin’
In The Wind」がかかる。バートの「Casbah」S2のレコード演奏をバックに、アル・スチュアート(1945- )、ウィズ・ジョーンズとバートの3人で、ソーホーにあったレ・カズンズなどフォーク・クラブの跡地めぐりのシーンがあり、バートの「Daybreak」
S13がかかる。アル・スチュワート1965年のテレビ映像の断片と、バートと一緒にプレイする20.「Blues Run The Game」に続き、ジャクソンC フランク(1943-1999)についての回想。彼がプレイする1965年の映像(断片)は貴重。次にマーチン・キャシー(1940- )がバートと
21「The Elfin Knight」をプレイした後に、このトラッドを彼から習った英国滞在中のポール・サイモンが、自作曲として著作権登録してしまい、イギリスのミュージシャンの恨みを買ったエピソードが紹介される。ボブ・ディラン、ポール・サイモンらが、イギリス滞在中に現地のトラッドを聞いて大きな影響を受け、沢山のメロディーとアイデアを持ちかえったのは有名な話。
バートによる 22.「Running From Home」に続いて、ピーター・カートレイが登場しコメントを述べた後に、23.「Let Me Sing」が彼の間奏部分から始まる。舞台がサンフランシスコに移り、Great
American Music Hallへの出演の看板が写る(1992年4月26日にバート、ジョン、ジャッキーの3人が行ったコンサートの音源が残されている)。コノリーによるペンタングルの話の後、Great
American Music Hallのステージで、ジャッキー・マクシーがバートのギターをバックに 24.「Chasing Love」をたっぷり歌う。観客がいないので、コンサートの前後に撮ったものだろう。間奏部分では、バートによるペンタングル時代の狂ったように多忙な日々の語りが入る。次にマッケイブス・ギターショップが写り、ジョン・チュルウー
(1951-2016) が登場して、彼がプロデュースしたアルバム「Heartbreak」 S18製作のエピソードが語られ、ビル・コノリーのコメントが入り、アルバート・リー(1943- )が出てきて、バートとの再会セッション25.「If
I Were A Carpenter」、26.「Heartbreak Hotel」を演奏。そしてコノリーによる、ニール・ヤングがバートを絶賛したインタビューの引用。次はバートが、サンフランシスコにあるブルースの巨人ブラウニー・マッギー(1915-1996)
の自宅を訪問するシーン。彼のインタビューおよびセッションにかなりの時間が割かれる。マッギーが、ビッグ・ビル・ブルーンジーと、相棒のハーモニカ奏者、ソニー・テリーの思い出を語り、1940年に撮影された二人の演奏風景のフィルムの断片が挿入される。28.「Walk
On」、29.「Parcel Post Blues」のセッションは、リラックスして歌うマッギーの貫禄勝ち。CDでは少し物足りなく感じた演奏が、ここでは気取りのないマッギーの人間性がよく出ていて、敬意がこめられたバートの態度も好感が持て、非常に見ごたえのあるシーンになっている。バートがこれを本作のハイライトとしたことにより、当時アメリカからやって来た彼の演奏を穴があくほど見つめて奏法を盗んだという、彼およびブリティッシュ・フォーク界のルーツに対する想いがはっきりと示されている。
夕日に輝くアメリカ西海岸のビーチを歩くバートの姿と、「もし音楽を知らなかったら兄さんと同じように庭師になっただろう」と語る、皺が刻まれた彼の表情がとても印象的。淡々と演奏される30.「Been
On The Road」は、1965年の S2の演奏と比べると、枯れ果てた味わいが、時の移ろいを残酷なまでに物語っている。マッギーとの別れシーンのあと、最後のクレジットの場面でナレーターのビル・コノリーがバートと一種に
31.「Coutry Blues」を演奏。ちなみにこの曲はジョン・レンボーンも「Faro Annie」1971で演奏していた。
バートを中心としてブリティッシュ・フォークの歴史を語る構成で、彼のファンにとっては最高のドキュメンタリーとなった。
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Acoustic Routes (映像 DVD Extended Version) (2003) |
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Bert Jansch : Guitar, Vocal
a. Parting [With Pete Kertley] 完奏
b. Lost Love (断片) ※
c. Stroll Down The Highway ほぼ完奏
d. Chamberin (断片) ※
e. Go Your Way My Love [With Ann Brigs]
f. Blackwaterside [Traditional] [With Ann Brigs] 完奏
g. Anji (断片) ※
h. The First Time Ever I See Your Face [Evan MacCall] 完奏
i. Needle Of Death
j. Paper Houses (Reheasal)※
k. First Light [With John Renbourn] 完奏
l. High Emotion
m. Blues Run The Game [With Al Stewart]
n. The Elfin Knight [With Martin Cathy]
o. Running From Home
p. Let Me Sing [With Peter Kirtley]
q. Chasing Love [With Jacqui McShee] ほぼ完奏
r. If I Were A Carpenter (Tim Hardin) [With Albert Lee] 完奏
s. Heartbreak Hotel (Axton, Durden, Presly) [With Albert Lee] 完奏
t. Walk On (Trad.) [With Brownie McGhee] 完奏
u. Parcel Post Blues (McGhee) [With Brownie McGhee] 完奏
v. Tell Me What Is True Love 完奏
w. Been On The Road (Alex Campbell) 完奏
x. Coutry Blues (Doc Boggs) [With Billy Connolly] 完奏
他のアーティストによる演奏 (バート未参加)
イ.「Solid Gone」断片 [Hamish Imlach] fとgの間
ロ.「Sitar Ram」断片
ハ.「40 Ton Parachute」断片 [Davey Graham] gとhの間
ニ.「The First Girl I loved」
ホ.「Happiness Was Free」 [Wizz Jones] kとlの間
ヘ.「That'll Do Babe」 [Ralph McTell] kとlの間
ト.「First Songs」完奏 [Ralph McTell] lとmの間
チ.「Round Midnight」
リ.「The Blood Of The Lamb」断片 [Duck Baker] lとmの間
ヌ.「Memory Of My Trip」 [Brownie McGhee] sとtの間
注: ※ は、CD未収録
青字はオリジナル・バージョン未収録
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監督のヤン・リーマン(Jan Lehman)によると、「Acoustic Routes」のリバイバルは、生前のバートとの約束事だったという。ここでの製作は、未発表シーンをボーナストラックとして追加しするだけの単なるリイシューでなく、それらの曲やシーンをオリジナルバージョンの中に組み込み、一部のシーンにつき追加・削除・差し替えを行うことにより、実質リメイクになっている。オリジナルは、ほとんどの曲が演奏の前後でカットすることで、68分という上映時間のなかで全体のバランスをうまく保っていたと思うが、今回のDVDについては、完奏曲を追加したり、一部の既存の曲の演奏時間を長くしているので、時間が102分になって一般の人がドキュメンタリーとして鑑賞するには少し冗長な感じがする。でもバート・ヤンシュのファンにとってはうれしいシーンがたくさん追加されており、故人の残した遺産という意味でも、これでいいのだろう。
以下「O」がオリジナルのフィルム版、「R」が今回発売されたDVD版として、両者の相違点を整理しよう。、
・Rは、撮影開始を合図するカチンコの後、ピート・カートリーと二人でa.「Parting」を完奏するシーンから始まる。エンディングでクレジットが表示され、ブラウニー・マッギー、ウィズ・ジョーンズ、ラルフ・マクテルによるコメントシーンが入り、ここからはOの出だしであるビル・コノリーがドアを開けて室内に入るシーンになる。
・オープニング・クレジット。Oは「This film is about the legendary guitarist Bert Jansch
and his contemporaries They changed the face of acoustic guitar music」であるのに対し、Rは「Bert
Jansch was always revered as the legendary guitarist that every players
wanred to be Along with his contemporaries thet created music that remains
an inspiration」となり、現在形から過去形の表記に変更されている。その他のクレジットの表示内容および場面も異なる。また映像中の登場人物、曲名を表示する字幕も異なっている(Rの曲名には作者の名前も表示)。
・バートが c.「Stroll Down The Highway」を弾くシーン。直前のビルの会話が異なる。Oではビルが左手の運指を真似する仕草も入る。Rのほうがほぼ完奏であるのに対し、Oは途中で次のシーンに移る。
・バートの駆け出し時のエジンバラのフォーククラブの思い出のコメントシーン。Oでは、c.「Stroll Down The Highway」の前にあるのに対し、Rは後に出てくる。またRでは、ハーミッシュ・イムラック、アン・ブリッグス、アーチー・フィッシャー等と街を歩き、Howf
Folk Clubに入るシーンが追加されている、
・アン・ブリッグスの場面。Oの「Blackwaterside」は、アンのアカペラ・ボーカルにバートの伴奏を編集でつなげたものだったが、Rでは、この曲の伴奏スタイルが大成功したというバートのコメントと、アンとバートによる当時を偲ぶ会話の後に
f.「Blackwaterside」の完奏シーンが入る。これは何故Oに収録されなかったのか不思議な位素晴らしいものだ。鮮明な画面で観るアンの表情は、年老いて痩せたとはいえ、当時と同じく誇り高く、強い意志を感じさせる。
・デイヴィー・グレアムの場面。バートやデイヴィーのコメントシーンの挿入位置が変更され、Rでは、ビルが「Angie」が収録されたデイヴィーのシングル・レコードを見せて彼を紹介するシーンが加わる。またロ.「Sitar
Ram」につき、Oがデイヴィーのボーカルがフィーチャーされるのに対し、Rではギターのイントロのみでカットされる。また・Rは、デイヴィーが開発したDADGADチューニングの話の後、バートがビルの前で
h.「The First Time Ever I See Your Face」を弾くシーンが入る。
・ウィズ・ジョーンズの場面。Rでは、ウィズが話しながらデイヴィーのスタイルとしてリックを弾くシーンが追加されている。ホ.「Happiness
Was Free」について、Oはとちゅうでフェイドアウトするのに対し、Rでは最後まで演奏されている。
・j.「Paper Houses」のジョン・レンボーンとのキッチンリハーサル。Oは2分ちょっとのシーンだったのに対し、Rでは6分間超と、たっぷり見せてくれる。k.「First
Light」も、Oは途中から始まるのに対し、Rは最初から最後まで完奏となる。
・アル・スチュアートの場面。Oでは彼の若いころのBBCの映像断片が入るが、Rでは何故かカットされている。
・マーチン・キャシーの場面。Oで、彼がイギリス滞在中のポール・サイモンにトラディショナルの「Scaborough Fair」を教えたところ、ポールがその直後に著作権登録をしてしまったというエピソードを語るが、Rではカットされている。これは有名なエピソードであるが、今回のようにDVDとして不特定の人々が観ることを想定して、トラッドのアレンジと著作権という微妙な問題についてのバートのコメントにとどめることにしたとおもわれる。
・Rでは、l.「High Emotion」の後に、ラルフ・マクテルのト.「First Songs」完奏が挿入されている。
・ブラウニー・マッギーの場面。ブラウニーは冒頭の「Memory Of My Trip」で、1950年代終わり〜1960年代初めのヨーロッパツアーの思い出をアカベラで歌うが、Oは途中でカット、Rは完全版。ブラウニーとバートの会話で、Rではウッディ・ガスリーとの共演の話と、ウッディ、ソニー、ブラウニーが「John
Henry」を演奏する映像断片(ウッディが生前に残した数少ない映像のひとつ)が追加されている。
・サンタ・バーバラ・ビーチにおけるバートのモノローグ。Oでは、もし音楽をやっていなかったら庭師になっていた。一人でいるのが好きだからと語っているが、Rでは、いつまでも生きているわけではないし、もし自分および同世代の仲間が世を去れば、それでお終いと、死について語っている。バートの死後ということで、監督の意図で差し替えられたものだろう。そしてRでは、その後にv.「Tell
Me What Is True Love」が追加された。またw.「Been On The Road」もOと異なる最後まで弾ききっている。この2曲の完奏版はとりわけ味わい深いもので、Rの目玉のひとつだろう。
・ラスト。ブラウニーが自宅の2階の窓から別れを告げるシーンがカットされ、一方でフェイドインで始まってたx.「Coutry Blues」がビルの掛け声とともに最初から始まりエンディング・クレジットが表示される。面白いのは、Rの場合その間に各種のNGシーンが挿入されることだ。
・最後のシーン。Oはx.「Coutry Blues」の終了後、ビルーが「ウ〜」と唸って終わるが、Rではビルの唸りはなく、彼がドアを開けて「またね!」と言って出てゆくシーンで終わる。
これを観ただけでは、バートの若い頃の凄さは分からないけど、晩年の彼の様子と、彼が音楽の歴史に残した以後を後世に残すための絶好の資料になるだろう。
[追記]
本作の発売にあたって製作された予告編を観ることができた。そこでは、ダック・ベイカーとデイヴィーグレアムの共演による「Jones」の断片映像(リイシューのCDに音源のみ収録されたが、本DVDには収められなかったもの)と本編ではリハーサル風景のみだった「Paper
Houses」の正式録音(これもリイシューCDで聴くことができる。ただし予告編はNGシーンのみ)の模様を観ることができる。何故本編にこれらの映像を収録しなかったのか、理解に苦しむところであるが、もし「30th
Anniversary」のために取っておくという意図であれば、商魂たくましいもんですな。
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Acoustic Routes (映像 DVD Walk On) (2003) |
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Brownie McGhee : Vocal, Guitar, Piano
Bert Jansch : Guitar (1,4,8,10,11,12)
1. Don't Pity Me
2. Memory Of My Trip
3. I Got Fooled
4. Key To The Highway
5. Come On If You're Coming
6. Me And My Dog
7. The Death Of Blind Boy Fuller
8. Parcel Post Blues
9. Stranger Blues
10. CC Rider
11. Walk On
12. Parcel Post Blues (Reprise)
収録: 1992年 Oakland, California
注: 黒地は、オリジナルDVD、オリジナルCDに収録の曲。
緑字は、オリジナルDVDに未収録、オリジナルCDに収録の曲。
青字は、リイシューDVDに未収録、リイシューCDには収録の曲
赤字は、リイシューDVD、リイシューCDいずれも未収録の曲
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2013年の「Acoustic Routes」の再発は、2枚組CD、DVD、そしてCD2枚・DVD2枚からなる「20th Anniversary
Edition」の3通りでリリースされた。「20th Anniversary Edition」は、前述のCD2枚とDVDと、本作のみで入手可能な「Walk
On」というタイトルのDVDからなり、写真、解説、一部の曲のタブ譜「Jones」、「Blackwaterside」、「Fist Song」、「Tell
Me Waht Is True Love」のタブ譜や手書きの歌詞などを収めた豪華なブックレットが付いている。
DVDは、バートがアメリカのオークランドにあるブラウニー・マッギーの自宅を訪れた際に模様を特集したもので、「Acoustic Routes」の本編では時間の関係でカットしたシーンが、52分にわたり余すことなく収められている。
映像はマッギーの話から印象的なものを抽出したシーンの後 1.「Don't Pity Me」から始まる。途中からであるが、食い足りない感じはない。バートは控えめな態度で、マッギーのギターに寄り添ったプレイを展開する。バートがインタビュアーになり、それに答えるマッギーの話は大変流暢で魅力に溢れている。ブルースの生き神的存在であり、バートと撮影クルーの尊敬を集めて、彼は大変機嫌良く、活き活きとした態度で話しまくっている。名前の由来、ポスターを前にしたヨーロッパ・ツアーの思い出の後、それを歌にした2.「Memory
Of My Trip」をアカペラで歌うシーン。ここでマッギーがバートと一緒に階段を上って自宅の2階にゆく場面が入る。マッギーはピアノを弾きながら 3.「I
Got Fooled」を歌う。ウッディ・ガスリー、ソニー・テリーと3人で組んで演奏した思い出、4.「Key To The Highway」(バートが若い頃、マッギーがエジンバラに来た時、コンサートの後に彼から教わった曲)の共演と続く。自分の音楽スタイルは父からだと話し、5.「Come
On If You're Coming」を歌う。ブラインド・ボーイ・フラーの話をして、6.「Me And My Dog」と 7.「The Death
Of Blind Boy Fuller」。8.「Parcel Post Blues」は途中から始まり、そしてソニー・テリーと組むことになったいきさつを語る。9.「Stranger
Blues」の後、「二人のどちらかが間違えれば、もう一人も同じようにすればいいんだ」と言う。バートもギターを弾く 10.「CC Rider」の後、レッドベリーと共演した話をして、途中から始まる
11.「Walk On」が最高潮となる。
それからサンタ・バーバラ・ビーチにおけるバートのモノローグのシーンになり、「彼と共演できるとは思ってもいなかった」と感想を語り、マッギーが2階の窓から手を振りながら別れの言葉をかけるシーンの後、12.「Parcel
Post Blues」のギター演奏が流れるなかエンドタイトルが出て終わりとなる。
ブルース漬けなので、音楽的には単調なんだけど、マッギーの存在感はさすが。バートは脇役に徹しており、収録の4年後に亡くなったブラウニー・マッギー晩年の記録としても貴重なものになるだろう。
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S26 When The Circus Comes To Town (1995) Cooking Vinyl CD 092 |
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Bert Jansch: Vocal, Guitar
Collin P Gibson: Bass
Liam Genockey: Drums
Bobby Barton: Slide Guitar
Mike Piggott: Violin
Tony Hinnigan: Strings
Mark Ramsden: Soprano Sax
Marty Craggs: Addtional Vocals
Maggie Boyle, Christine Collister, Janie Romer : Background Vocal
Jay Burnett: Chief Engineer
1. Walk Quietly By S27 S36
2. Open Road
3. Back Home S34
4. No-One Around [Janie Romer] S34 O32
5. Step Back S36
6. When The Circus Comes To Town S34 S36
7. Summer Heat S27 S36
8. Just A Dream S27 S34
9. The Lady Doctor From Ashington *
10. Stealing The Night Away
11. Honey Don't You Understand
12. Born With The Blues
13. Morning Brings Peace Of Mind S27 S33 S34
14. Living In The Shadows
1995年8月発売
[日本盤 コロンビア COCY-78857(日) のみボーナストラック]
15. Another Star
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1984年発表の「From The Outside」S20 以来、久々の全てがオリジナル新曲によるソロアルバム。80代後半から90年代前半にかけての彼の作品は、ロッド・クレメンツとの共演盤
1988 S22 や過去の作品の再演中心のもの 1990 S23 、トラッドに専念した作品 1990 S24 の様に彼自身の作曲による新作はなかった。その間ペンタングルのリーダーとして高水準の作品の提供は続けてはいたが、アルコール依存症などのために心身ともに不調の時期で、あまり曲が書けなかったものと思われる。本作は評論家諸氏から大好評をもって迎えられているが、その通り、何のために歌うのかという動機がはっきり感じられる作品である。近年の作品を聞いて彼も年老いたなと勝手に感じていたが、本作ではとても深みのある艶やかな歌声を聴かせ、トランスアトランティック時代の若々しい情熱を超える味わいがある。歌詞も彼のありのままの姿が驚くほど自然に表現されており、気負いのない表現は素晴らしい。ギターも控えめで要所をカチッときめている。
まずは1.「Walk Quietly By」、2.「Open Road」の弾き語りからスタート。短調のメロディーで歌われ、人生の悩みや心のやすらぎを求める歌声はとても存在感がある。3.「Back
Home」は弾き語りから始まり、途中から素晴らしく静謐な女性コーラス付きのバンド演奏に盛り上がって行く。その展開は何度聴いてもはっとするほど新鮮な感動を覚え、東京生まれで故郷のない私でさえもジーンとくる佳曲。女性コーラスは、お馴染みマギー・ボイルの他、新進若手シンガーのクリスティン・コリスター(リチャード・トンプソンのバックをしていた人で、彼女の98年のソロアルバム「The
Dark Gift Of Time」では、ジャッキ・マクシーとダニー・トンプソンがゲスト参加している)、ジャニー・ロメール(バートが認めて応援する若手女性シンガーで、4.「No-One
Around」で彼女の作品をカバー、彼女のソロアルバム O32 2002 にもゲスト参加している)の3人。ここでのギターはトランスアトランティックの初期のスタイルに近い。5.「Step
Back」は歌詞カード未掲載なので何を歌っているのかよくわからないが、マイク・ピゴーのバイオリンを含むバンド演奏で、8.「Just A Dream」、10.「Stealing
The Night Away」とともに最近のペンタングルに近いサウンド。タイトル曲の6.「When The Circus Comes To Town」はコンサートツアーでの自分の姿をサーカスに例えた作品。
7.「Summer Heat」はソプラノサックスがフューチャーされ、ジョニ・ミッチェルの様なサウンド。夏のけだるい暑さが良く表現されている。9.「The
Lady Doctor From Ashington」は本作唯一のギターソロ。バートお好みの少しバロック調のオリジナルで、端正なメロディーを丁寧に弾いている。10.「Stealing
The Night Away」はボビー・バートンのスライドギターが良い味を出している。リアム・グレノキーは近年のスティーライ・スパンのドラムス担当とのことであるが、ペンタングルのジェリー・コンウェイよりも軽めのサウンド。11.「Honey
Don't You Understand」は魅力的なメロディーによる包容力あるラヴソング。12.「Born With The Blues」はトランスアトランティック時代を彷彿させるブルース。13.「Morning
Brings Peace Of Mind」は「Daybreak」(1977 S13 に収録) に似た朝の歌で、ダークなブルース曲の後でのチェロとバイオリンの伴奏がとても印象的。最後の曲
14.「Living In The Shadows」は都会で生きることの厳しさを歌ったもので、人生を「Circles, spinning circles,
Going round and round and round Running wild and full of empty words Like
a silent carousel, with no horses to found」と歌うくだりはとても感動的で、長く険しい人生を歩んできた人ならではの重みがある。
日本盤のみ15.「Another Star」 のボーナストラックが収録されているのでファンは要注意。この曲の詳細は不明だが、アウトテイクと思われる。オフィシャル・ホームページにおけるコリン・ハーパー氏監修のディスコグラフィーでも、日本盤のボーナストラックの存在が言及されながらも詳細未確認となっており、イギリス本国でも存在を知られていないレア曲だ。ジャケットは古風な感じのサーカスの宣伝ちらし風で、本作のスタッフが紹介されている。本作には解説書付きの日本盤も含めて、残念ながら歌詞カードが添付されていなかったが、ジャケットにある断り書きの通り、発売直後は郵便局で購入した国際返信切手券を同封した手紙を英国の指定住所に送ると、B4サイズのミニポスター(CD盤表紙のライオンのイラストが表で、5,
15を除く歌詞が裏面に印刷されたもの) を送ってくれた。
[2022年11月追記] 15.「Another Star」 は、「Living In The Shadows 」 2017 S34に収録されました。
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S27 Live At The 12 Bar (1996) JANSCH RECORDS BJCD 002 |
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Bert Jansch : Guitar, Vocal
1. Summer Heat S26 S36
2. Curragh Of Kildare [Trad.] S13 S18 S29 O11
3. Walk Quitely By S26 S36
4. Come Back Baby [Walter Davis] S1 S5 S14 S18 S29 S33 S36 S36 S36 P19
O13 O20
5. Blackwaterside [Trad.] S4 S18 S18 S25 S33 S36 S36 S36 P21 O11 O16 O42
6. Fresh As A Sweet Sunday Morning S9 S10 S19 S33 S36
7. Morning Brings Peace Of Mind S26 S33 S34
8. The Lilly Of The West [Trad.] S29 S33 S34 S36 S36 P18
9. Kingfisher * S14 S15 S18 S19 S23 S36 P19 P22 O17
10. Trouble In Mind [Richard M. Jones] S33 S36 O38
11. Just A Dream S26 S34
12. Blues Run The Game [Jackson C. Frank] S1 S11 S14 S17 S18 S25 S29 S33
S36 S36 S36 S36 S36 S36 O16
13. Let Me Sing S16 S17 S18 S19 S25 S36 O16
14. Strolling Down The Highway S1 S2 S22 S25 S29 S33 S36 S36 S36
15. A Woman Like You S6 S23 S32 S36 S36 P3 P11 P13
16. Instrumental * S28
1996年8月発売
写真上: オリジナル盤ジャケット(Jansch Records)
写真中: リイシュー盤ジャケット (Sanctuary)
写真下: リイシュー盤ジャケット (Earth Records)
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彼の自主レーベル、ヤンシュ・レコードから発売された公式海賊版 (An Authorised Bootleg)で、 ロンドンのソーホーにある The
12 Bar というクラブでのソロライブ。ジャケットは濃い目の青い色紙に彼の写真をコピーしたもので、クレジットやバーコードまで手書きという粗悪でラフな手作りの感じがいかにもブートレッグっぽい。ボーカルやギターもとてもワイルドというか荒っぽく、発売を予定した録音ではないのは明らかだ。ギタープレイをとちったり、リズムが乱れる箇所も構わずにそのまま収められている。しかし聴いていると熟年のブルースマンの様な存在感があり、演奏の粗さにもかかわらず聴かせてしまう貫祿がある。
100 人位の大声援に迎えられ彼が登場、おもむろに1.「Summer Heat」を歌いだす。彼のボーカルは何の処理も施していない様で、本当に生々しい声である。ギターはすこし電気処理が入った、所謂エレアコのサウンド。2.「Curragh
Of Kildare」は懐かしいアイリッシュ・ソング。最近ではロビン・ウィリアムソンが、ジョン・レンバーンとの共演盤「Wheel Of Fortune」1993
で歌っていましたね。ギターが詰まってもお構いなしのラフさ ! 新作「When Circus Comes To Town」 1995 S26 からの新作
3.「Walk Quietly By」は新鮮な感じで歌われる。4.「Come Back Baby」はギンギンのブルースで、指板にビシビシ当たるタッチの強いピッキングが聴きもの。名曲
5.「Blackwaterside」のギター伴奏は相変わらず鬼気迫るものがあり、エキゾチックな間奏が素晴らしい。6.「Fresh As A Sweet
Sunday Morning」、7.「Morning Brings Peace Of Mind」は比較的丁寧な演奏。曲間のカットがないため、ライブの緊張感がもろに伝わってくる感じで、初めは詰まり気味だった彼の声もこの辺まで来るとよく出るようになったようだ。アメリカのフォークソング8.「The
Lilly Of The West」が続き、恋と裏切り、嫉妬と殺人、裁判と死のバラードが語られる。
お馴染みの 9.「Kingfisher」はギターソロのバージョン。訥々とした雰囲気の演奏で良い感じ。ブルースの名曲 10.「Trouble In
Mind」は彼のボーカルとギターにぴったしの曲で、彼の長いキャリアでも初めてのカバーというのは意外。11.「Just A Dream」は新作からの曲で抑えた感じの歌声が効果的。12.「Blues
Run The Game」はステージでは必ず歌われるレパートリーのようですな。「ただ歌っていたからという理由で、クーデターの最中に殺されたチリのシンガー、ビクター・シャロウについての曲です」と言って歌いだす13.「Let
Me Sing」も彼の愛唱曲。ちなみに当時のチリのクーデターの悲惨な雰囲気を描いた傑作映画、コンスタンティン・コスタ・ガブラス監督の「Missing」(1982
ジャック・レモン、シシー・スペイシク主演) には、当時の戒厳令の雰囲気が生々しく描かれている。「これで終わります」と言って始める14.「Strolling
Down The Highway」はファーストアルバムの名曲。アンコールの拍手のインターバルのところで、おそらく初めてのカットが入る。15.「A
Woman Like You」が演奏され、初期の演奏と異なる枯れた味わいがある。声はいまのほうが深みがあるように思える。最後の曲16.「Instrumental」はスコットランド風のインストルメンタル小品で、次作「Toy
Balloon」S28に「Beth's Dance」というタイトルでスタジオ録音版が発表された。
最初は演奏や録音の粗さが目につくが、何度か聞き込むとそんな事はどうでもよくなり、彼一人のステージの世界にどっぷり浸り、過ぎ行く時を忘れることができるような作品である。
この作品は後にサンクチュアリー・レーベルから正規発売されるが、その際ジャケットは彼の写真をコラージュした白黒印刷のものに変わった。
[2016年11月追記]
2015年ロンドンの独立系レーベル、Earth Recordsよりリイシューされたが、その際はCDに加えてLPレコード仕様も発売された。
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