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足の変形と靴

靴のフィット感、足の変形と靴の関係などについて掘り下げて考えるページです。
私の想像の域を出ないものもありますが、参考程度にお読み下さい。

落ちた土踏まずと靴の因果関係
 バレエのレッスンの時「土踏まずが落ちないように」と注意される。それまで土踏まずのことなど考えたこともなかったが、バレエをやるようになって土踏まずというものが非常に気になるようになった。土踏まずが落ちていると足首が曲がって見えるが、上げるとまっすぐに見える事も発見した。上りエスカレーターなどに乗ると、あまりいい趣味とは言えないかもしれないが、ついつい前の人の足と靴を観察する癖がついてしまった。それで気付いたことは、日本人には土踏まずが崩れている人が非常に多いということだ。土踏まずが落ちていない人の方が珍しいくらいだ。またブカブカの靴や小さい靴を履いている人も非常に多い。つまり足に合った靴を履いている人が少ないということだ。土踏まずが落ちているとき、親指側に体重がかかり小指側はわずかに浮き気味になっているはずだ。この状態は決して正常な状態とは言えないだろう。でもどうして正常じゃない人がこんなにも大勢いるのだろうか?おそらく生まれたときから土踏まずが崩れている人はいないと思うのだが、幼稚園児くらいになるとかなりの割合で土踏まずが落ちている子がいるような気がする。

 ヨーロッパでは、小さい子には骨がしっかりと固まるまでは足首まであるしっかりとした革靴を履かせると聞いたことがある。一方、日本人の大部分の人はブカブカの靴がいいと信じているので、子供にもブカブカの靴を履かせていることが多い。日本人のほとんどの人がゆるい靴や小さい靴を履いているということは『日本人の足は本当に幅広?』で書いたが、小さいときから合わない靴を履き続けることによってこのような土踏まずの崩れが起こるのではないかと私は考えた。合わない靴を履き続けることによって、靱帯がゆるみ外反母趾などになる。日本人のほとんどが合わない靴を骨がしっかりとしない小さいうちから履いていることを考えると、崩れている人の方が多くても不思議はないのではないか?靴のせいで外反母趾になるのなら(悪いのは靴だけではないとしても靴もかなり占めているだろう)、靴のせいで土踏まずが崩れても不思議はないのでは?体のひとつの部分のズレはほかの部分にも次第に影響することは経験上分かっている……。ブカブカの靴を履くと足がぶれるのでつまずいたり挫いたりすることが多くなる。それにこの前行ったオーダーショップの人は「足がぶれたり、つまづいたり、挫いたりするたびに足が弱くなっていく」と言っていた……


ゆるい靴は足を弱くする?
 靴を買いに行ったときシューフィッターが言っていたことだが、ゆるい靴を履き続けていると、靱帯が伸び、足がだんだん弱くなっていくそうだ。また、あるオーダーショップの人は、「足に合った靴を履いていると、次にオーダーに来るときはほとんどの人が以前より細くなっている。」と言っていた。ゆるんだ足というのは指の骨と骨の間が正常よりも広くなってしまっている。つまり足囲も広くなっているということだ。足に合った靴を履くことによりこの間隔が本来の間隔に戻り、足囲も本来の幅に戻ってくるのだそうだ。

 私はいつから土踏まずが落ちていたのか覚えてはいないが、相当前から落ちていたような気がする。外反母趾が始まったのは、たぶん高校生の時だった。バレエを習うよりも前だ。でもその頃は大したことはなかったが、社会人になってパンプスを履くようになって一気に進んでしまった。パンプスは全てブカブカか、きつすぎるかのどちらかだった。パンプスだけが原因ではないが、やはりかかとが高いのと、甲を覆ってくれないパンプスではかなりフィットしていないとブカブカで靴投げ状態となり足への負担は大きいのだろう。ブカブカのパンプスで足を前に滑らせながらも脱げないように歩く時の負担は計り知れない。


幼児期の運動量と足の変形
 8歳くらいまでにどれだけ歩いたか、どれだけ運動をしたかなどによってその人の基本的な足の強さが決まってしまうそうだ。その頃までにたくさん歩いたり外で元気に遊んでいると、足の裏の筋肉や靱帯がしっかりと発達し、土踏まずがしっかりと形造られるそうだ。反対に運動量が少ないと筋肉や靱帯が充分に発達せず、扁平足やこんにゃく足や外反母趾などになりやすい足になるそうだ。
 同じ条件下に置かれても足が変形しやすい人としにくい人といるのは、足の強い人、弱い人がいるからだ。足の強い弱いは、小さい頃の運動量も関係するが、遺伝的な筋肉の強さ弱さも当然あるだろう。また構造上、弱い骨格というのもある。指の長さの差が大きいほど踏ん張りが利かないので構造上弱いそうだ。骨格的なものや、筋肉の柔らかさなどは運動量というより遺伝的なものが大きいだろう。

 もし遺伝的に弱い人が、運動不足で、しかも合わない靴を履き続けていたとしたら、最悪ということになる……。逆に仮に遺伝的に弱かったとしても、小さいときからヨーロッパ人のようにピッタリとした靴を履き、運動をたくさんしたなら、ブカブカで合わない靴を履き続けて運動不足の場合と比べ、大きくなってからの足の状態はかなり違うのではないかと思う。

 ちょっと話はそれるが、小さいときの運動量によって姿勢の善し悪しも決まってしまうそうだ。姿勢の善し悪しは腹筋の強さと関係するのだが、腹筋は腹筋でも表面ではなく体の中心の方(奥の方)の筋肉が小さいときにどれだけ運動をしたかによって強い弱いが決まるそうだ。この筋肉はバランス感覚とも大きく関係するらしい。これは大人になってから腹筋運動をしても取り戻せる類のものではないそうだ。(もちろん何もしないよりはいいのだが)現代人はこんにゃく足が多いと聞くが、姿勢が悪い人もすごく多いような気がする。やはり運動量が減っているのが原因だろう。


「あっ」と驚く履き心地
 『トウシューズの選び方』で、履きやすいトウシューズは新品の時から履きやすいと書いた。これは私自身が、あるトウシューズと出会ったときから、そう思うようになった。あるお店でレペットの「バヤデール」というトウシューズを試着してみた。履いてみて驚いた。どこも当たらずどこも痛くなく窮屈でもなく、まるで私のために作ったのではないかと思う程だった。見た目も今までとは違った。フチが足の甲にピッタリと密着していてすき間が空いていないのである。それまで見慣れた感じとかなり違っていた。

「フチがこんなにピッタリとする事があるのか!」

 これは言葉で説明するのはとても難しいことなのだが、とにかく履き心地だけでなく見た目の違いにも「あっ!」と驚いたのだ。それまではどこかすき間が空くものだと思っていた。というよりすき間が空いていることが当たり前で、あまりにも見慣れすぎていたために、ピッタリとした状態を見るまで、それまでのものがすき間が空いているのだということ自体に気付いていなかった。
 トウシューズというのは新品の時はどこか違和感があり、履いているうちに馴染んで履きやすくなるものだと思っていた。トウシューズに「履き心地がいい」などということはあり得ないと思っていた。というより、そういうものだと思っていて履き心地うんぬんということは考えもしなかったという方が正解かもしれない。だから当時は新しいトウシューズをおろすときは憂鬱だった。しばらくは辛いからだ。今考えると合っていないトウシューズは足の疲れ方もひどかった。

 ところがこのバヤデールは最初からどこも痛くもなく立ちやすかった。この体験から履きやすいトウシューズは新品の時から履きやすいものなのだと考えるようになった。痛かった巻き爪もこのトウシューズを履いていたら治ってしまったというおまけまでついた。


「どれが合っているのか分からなくなっちゃった・・・」

 「いろいろ履きすぎてどれが合っているのか分からなくなっちゃった・・・」

 トウシューズを選びに行ってきた人からよく聞くセリフだ。でもこれは、「いろいろ履いたから分からなくなった」のではなく、「いろいろ履いた中に合うものがひとつも無かったから分からない」のだ。合うものがひとつも無かったのだからどれもしっくりこなくて当然というわけだ。だから迷ってしまうのだ。いろいろ履いてみてもその中に自分に合うものがあれば「あっ!これは!」と思うはずなのである。自分の足に合うものは、履いた瞬間気持ちよさがあるのだ。

 トウシューズがそうなら、外で履く靴だってそうではないか?と私は考えるようになった。『日本人の足は本当に幅広?』で紹介したが、幅もサイズも合ったヨシノヤの靴はすごく履き心地が良かった。でも、残念ながらパンプスに関して私は「いろいろ履きすぎて分からなくなっちゃった」状態である。おそらく一度も合うものを履いたことがないのだろう。『靴の選び方』で紹介したベージュの靴はほぼ完璧というか私が今まで履いたパンプスの中では一番なのですが・・・。でも、パンプスでも完璧な履き心地があるのではないかと期待している。あのベージュの靴はイタリアの既製品なので日本人が完璧なフィット感を求めるのは無理なのかもしれない。日本人とイタリア人ではかかとの骨の大きさや甲の高さなど骨格的なバランスがかなり違うようだ。日本人の方がかかとの骨が小さいので、付け根の幅に合わせるとかかとがゆるく、かかとに合わせると付け根がきついのである。今度は日本のお店でパンプスのオーダーをしてみたい。


足に合っているという感覚とは?
 そういえばトウシューズに関してはレペットに出会うまで、普段の靴に関してはヨシノヤに出会うまで、自分の足に合った履き心地がいいものを履いたことが一度も無かったのだ。このことは履き心地のいいものを履いてみて初めて分かったことだ。この経験を通して分かったことは、トウシューズにしても普段の靴にしても自分の足に合った靴を履いた経験が無ければ、今試着している靴が全く合っていなくても、それが合っているのか、合っていないのかさえも自分で判断できないということだ!


土踏まずの感覚

 ある本によると、全身の体重は土踏まずで支えているそうである。私には解剖学的知識が無いのでどうしてそうなのか説明することはできないのだがそのようである。靴を履いたときはアーチラインと土踏まずがピッタリとくっつかなければ体重を支えることは出来ないそうだ。
 確かに土踏まずと靴のアーチラインの間にすき間があると気持ちが悪いし、体重が、指の付け根にばかりかかってしまう。かといってアーチクッションなどで盛り上がらせれば体重を支えてくれるかといったらそうではないらしい。クッションを入れて空間を埋めさえすればいいというものではない。靴の木型はアーチクッションやら中敷きを後から貼り付けるようには設計されていないので、そういうものを入れるとどこか不自然になるのだろう。確かにアーチクッション付きの立体的で立派な(?)中敷きを入れたとき私の場合、支えられるのではなく圧迫されて、足がしびれたりむくんだりしてしまう。また変に盛り上がっていると土踏まずが痛くなってしまったりする。ゆるさは解消されてもどこか具合が悪いのである。

 私の場合、どのサイズを履いても土踏まずにすき間が空いてしまうことが多い。私は土踏まずが人より長いのだろうか?それとも深いのか?いや甲が低いし扁平足気味なのだからそんなことはあるはずがない。でもいつも空いてしまうので長い間謎だった。しかし、あるオーダーショップへ行ってそのことを話したら、木型の問題らしいということが分かった。そのお店の靴は土踏まずがピッタリとしたのだ。土踏まずがピッタリという感覚はこういうことかと初めて分かった気がした。今までは本で読んだだけで実際の感覚がいまいち分からなかったのだ。やはりアーチクッションや中敷きを入れた感覚とは全く違っていた。


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