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お菓子(甘いもの)について1

甘さ控えめ

 最近、いや最近ではなくもう10年以上前からかな?『甘くなくておいしい』という言葉をよく聞く。でも、この言葉ってちょっと変だと思わない?お菓子(ケーキとかチョコとかいわゆる甘いもの)はそもそも甘いからおいしいんじゃない?甘いものなんだから。

 『甘くなくておいしい』という言葉、どうもひっかかるんだよね。それを言うなら『甘くないけどおいしい』じゃないの?と。

 この『甘さ控えめ』のお菓子はダイエットブームから来たのだと思うが、この頃この『甘さ控え度』が過ぎる気がする。甘さ控えめ、っつうか甘くないじゃん!ティラミスなんか最悪よ!甘みよりも苦みの方が勝ってるんだもん。チーズケーキだって。チーズケーキは甘酸っぱいからおいしいのに、甘さを減らしたら酸っぱさがきわだってしまうからバランスを取るために酸味も抑えざるを得ない。チーズケーキから甘さと酸っぱさを取ったらただの湿った物体じゃん!味も素っ気もない。いっそのこと『甘さ控えめ』なんて書くのやめて『甘み無し』って書いた方がいいんちゃう?

 「甘くなくておいしい」といっている人、本当にそう思ってる?世の中の風潮に流されているだけじゃない?ほんっとーにほんっとーにおいしいと思う?本当にそう思ってるんだったら別にその言葉を使ってもいいけど。本当は一生懸命少ない甘みから甘みを感じよう、おいしいと感じようと努力して「このくらいがちょうどいいのだ」と納得させている自分がいるんじゃない?

上品な甘さ

 ひっかかかるを通り越して許せないのがこの言葉。上品な甘さ?じゃあ、なにかい?甘いのは下品だと言いたいわけ?

 こんな言葉が生まれるのは上に書いた「一生懸命納得させようとしている自分」を無意識にも感じとっている人が大勢いる証拠じゃないかなと私は思う。やっぱり甘みが足りないのはあまりおいしくないのだ。でもおいしくないものを食べるのは悔しいから何か別の理由が欲しい。別の代名詞が欲しくなるのだ。それで苦肉の策として考えた言葉がこの『上品な甘さ』ではないだろうか?「私はダイエットのために甘さを控えるんじゃなくて、甘さが少ないのが上品で好きなのよ」と思いたいという心理が働いているんじゃないだろうか。メーカーはこの心理をうまく突いているんじゃないかなあ。少なくともこの言葉が使われ始めた頃はそうだったと私は思っている。

 甘さ控えめが上品なら甘みが強いのは下品なのか?じゃあ、ウィーンの一流菓子店「デメル」のケーキは下品な味なんだ。原宿へ行ったときは時々立ち寄るんだけど……。それから昔、背伸びしてホテル・センチュリー・ハイアットで食べたケーキも下品なんだ。紅茶を3杯飲んでもまだ足りないくらいの強烈な甘さだった。でもたしかにとてもおいしかったのだ。それをおいしいと感じる私の舌は下品なんだ。ふ〜ん。

ダイエットに効果的 でも別の意味で

 甘いもの好きの私はもしかすると甘さ控えめのケーキによってダイエットに成功したのかもしれない。でも、たぶんこれを読んでいるみなさんが想像するものとは違う理由で。

 つまり、それはどういうことか説明しよう。私は甘いものが大好きだ。でも、甘さ控えめの、っつうか最近の甘さ控えすぎの甘いものは好きではないのだ。甘さ控えめにも限度っていうものがあると思うんだよね。生クリームだってある程度以上の甘みがないとおいしくない。ある程度以上砂糖を入れないと「甘い」と感じない。甘いと感じる量に達していない中途半端な量だとなぜか油臭さが引き立ってしまいおいしくないのだ。甘みも抑えすぎると、甘さ控えめなのになぜかしつこいというか、変なバランスになってしまうんだと思う。黄金分割比のようなバランスというものがたぶん生クリームにもあるのだと思う。ここからここまでがおいしいと感じる範囲というバランスが絶対あると思う。このごろは甘さの控え方の度が過ぎてその範囲からはずれてしまっているんじゃないかなあ。

 とにかくこの頃、たまに誘惑に負けてケーキを買って食べてみてもあまり満足しなくて「食べなきゃ良かった」と思うことが多くなったのだ。だから、この頃はケーキ屋に期待をしなくなった。食べて後悔するようなケーキで太るくらいなら食べない方がマシだと思うようになってしまったのだ。その結果あまりケーキは買わなくなった。その結果少し痩せることができたのかもしれないけどね。(もうあと3キロ程痩せたいけど……)でも、なんだか楽しくないなあ……

 甘くないケーキを食べても何か物足りないんだよね。物足りなくて口直しをしたくなってしまったり、かえって空腹感が刺激されてもっとたくさん食べたくなってしまったりする。

強烈な甘さを1個

 私はかなりの甘党だ。甘くないケーキだとあまり甘くないから2つくらい平気で食べられてしまったりする。6個入りのエンゼルパイだったら、最近のエンゼルパイは甘さ控えめだから、一度に4個は食べてしまうくらい甘党だ。でもそれっていいことなのだろうか?

 甘いものには強いと変な自信があった私は以前、デメルで無謀にもザッハトルテともう一つ違うケーキをオーダーしてしまった。でも、食べ始めてすぐに、2個食べるのはかなり苦しいことだと分かった。それでも紅茶を大事に大事に飲みながら頑張って食べたのだが……(味はとてもおいしかったのだ。紅茶もこれまた絶品。)センチュリー・ハイアットではケーキは1つだけしか頼まなかったが、紅茶をガブガブ飲みながらやっとの事で食べた。でもケーキの味はすごくおいしかった。

 デメルやセンチュリー・ハイアットのケーキは甘いから私のような甘党でも1つで充分なのだ。2つ食べようと思ってもかなり苦しい。そのかわり「食べたぞ〜!」「おいしかった〜!」という満足感はしっかりあるのだ。甘さ控えめのケーキを食べたときのようなモヤモヤした不満足感は残らない。甘さ控えめのケーキを食べた後は何か物足りなさを感じて、たとえ2個食べておなかはいっぱいになってもなにか不満足感が残るのだ。おそらく空腹は満たされても、脳の「おいしい」と感じる部分が満足していないのだと思う。

 甘さ控えめのケーキを食べた後はなにか不満足で物足りなさを感じるけど、それ以上食べると太るということを考えると「これで我慢しなきゃ」とか思わなければならない。あるいは「これで満足したのよ」と自分に言い聞かせなければならない。誘惑に負けて2個目を食べてしまったときなどはそれはもう激しい後悔に襲われる。でも、デメルやセンチュリー・ハイアットのようなあま〜いケーキを食べた後は2個目を食べろといわれてもそう食べられるわけじゃないし(食べたけど……)1個で「おいしかった」と「満足した」を得られるのだからそっちの方がお得だと思わない?「2個目を食べたい!どうしよう・・・」と葛藤する必要が無いんだから。甘さ控えめの満足度の少ないケーキをしょっちゅう食べるより強烈に甘いケーキをたま〜に食べる方が満足感があるんじゃないかな?甘さ控えめのケーキ2個食べるよりあま〜いケーキ1個の方が絶対にカロリーは低いと思うし。まあ、1度に2個食べたいという人もそういないのかもしれないけど……。

手作りの利点

 とにかく売っているケーキでおいしいと感じるものが減ってしまったので、自分が好きな味のケーキを食べるには自分で作るしかない。といっても面倒くさがりな私は年に1〜2回しか作らないんだけど。

 最近こんな言葉を聞いた。
「自分で作ると甘さが調節出来るからいいよね」
そうだ。そのとお〜り!手作りの利点は何と言っても甘さが調節できること!普通は「減らせる」ということを言っているのだと思うが、私は増やすのだ。いや増やすんじゃない。減らさないだけだ。私はフランス料理学校で出しているお菓子の本を持っている。日本にあるフランス料理学校だがレシピはフランス流だ。フランスのお菓子はとても甘い。その分量を忠実に守って作るのだ。作る行程では砂糖の量に少々面食らう。が、その通り作るとすごく甘いがすごくおいしいのだ。それを会社に持っていったことがあるが絶賛された。一口食べるごとに「旨い!」「旨い!」「旨い!」「買ったやつみたい!」と言われたのだ。まあ、もらったお菓子を「おいしくない」という人はそういないと思うから額面通り取るのもなんだが、もし砂糖を減らしていたらそこまでの賛辞は得られなかったのではと思う。

 それから砂糖の利点はなにも甘さだけではないのだ。ケーキをしっとりとさせる効果があるのだ。砂糖には水分を抱く効果があってしっとりとするのだ。水っぽいのとは決して違うしっとり感だ。これが何ともおいしい!その本にも書いてあるが砂糖をあまりにも減らしてしまうとパサパサになってしまうのだ。そのせいか、最近そのパサパサ感を無くすために牛乳か水か何かを入れるのかベッチョリとしたケーキが増えた気がする。しっとりではなくなにか水っぽいのだ。甘みが強いとシロップなどでベッチョリとしていてもおいしいと思うが(センチュリーハイアットのケーキはシロップがしみ込んでいた)甘みが無さ過ぎる状態でベッチョリとしているとおいしくない。今までで一番ひどかったのはケーキに誤って水をぶっかけたのか?と思うような味だった。これを「しっとり」と形容するのは私には抵抗がある。質感と味の相性というのも無視できないのだ。

 とにかく、今はおいしいと感じるギリギリのラインの砂糖の量を下回っているケーキが多いような気がする。ケーキは甘いものだ。甘いものが甘くて何が悪い!甘いからおいしいのだ〜!!!


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