第7章 ミヤズヒメとの恋
ヤマトタケルは、甲斐の国を出て信濃の国へ行き、そこで信濃の坂の神たちを服従させました。それから尾張の国(現在の愛知県西部)に戻られて、以前結婚の約束をされたミヤズヒメの所へ行かれました。ミヤズヒメは、ヤマトタケルと無事に再会できたことにとても感激し、最高のごちそうでおもてなしをされました。その時、とても大きな杯でヤマトタケルの活躍を祝福なされました。ヤマトタケルは、ミヤズヒメのもてなしに今までの戦いの疲れもいやされる思いがいたしました。
ヤマトタケルは、ミヤズヒメの着物の裾(すそ)に血が着いているのに気がつき、それを見て次のように歌われました。
ひさかたの 天(あめ)の香具山(かぐやま) とかまに さ渡る鵠(くび) ひほぼそ たわや腕(がひな)を まかむとは あれはすれど さ寝むとは あれは思へど ながけせる おすひの裾に 月たちにけり
天の香具山の方向へ飛んで行く白鳥の白くか細い首のようなあなたの腕をとり、私はあなと一緒に寝たいと思うが、あなたの着物の裾には月※が見えています。 ※月と女性の月経(メンス)をひっかけた洒落。
そこで、ミヤズヒメは、これに応(こた)えて次のように歌われました。
高光る 日の御子(みこ) やすみしし わが大君(おおきみ) あらたまの 年がきふれば あらたまの 月はきへゆく うべな うべな 君待ちがたに わがけせる おすひの裾に 月たたなむよ
高く光り輝く 太陽の皇子様。わたしの大君様。新しい年が来て、新しい月がまた去って行く。そうです、そうですとも、こんなにも、あなたを待ちこがれていたから、わたしの着物の裾に月が出ているのも仕方ございません。
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