第3章 イズモタケルの征伐


 ヤマトタケルは、大和の国へ帰る途中、出雲(いずも)の国(現在の島根県東部)に立ち寄られました。そこには、イズモタケルというヤマトの国に逆らうものがいると聞いたので退治してやろうと思ったからです。
 ます、ヤマトタケルは、笑顔で親しげにイズモタケルに近づき、友だちになりました。そして、ある日、二人は一緒に斐伊川(ひのかわ)へ水浴びに行く事になりました。そこでヤマトタケルは、ひそかに樫の木でにせの刀を作り、それを腰に差して行きました。二人は、服を脱いで水浴びを始めました。ヤマトタケルは、先に川から上がって、イズモタケルが外しておいた刀を腰につけて、
「やあ、あなたの刀は実に見事だ。わたしの刀と少しの間だけ交換してみましょう。」
と、冗談のように言いました。
 その後から、イズモタケルも川から上がって来て、ヤマトタケルのにせの刀を腰に差しました。そこで、ヤマトタケルは、
「ぜひ一度、あなたのこの見事な刀で、お手合わせを願いたい。」
と言ったので、二人はお互いに刀を抜こうとしましたが、イズモタケルが持っているのはにせの刀なので、抜くことができません。
「むむ、これは・・・。」
 イズモタケルがこうつぶやいた直後、ヤマトタケルは刀をすばやく抜いて、一瞬のうちにイズモタケルを切り殺してしまいました。
 ヤマトタケルは、イズモタケルの征伐についての感想を歌で詠みました。

 やつめさす 出雲建(イズモタケル)が 佩(は)ける刀(たち) つづらさわ巻き さみなしにあわれ

たいへん強いイズモタケルが差していた刀は、たくさんのつづらで巻かれていて見た目は立派だが、中身がない。ああ、かわいそうに。

このように、ヤマトタケルは、逆らう人々を次々と征伐され、ヤマトの国に帰り、天皇にご報告されました。

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