第4章 オオクニヌシの敗北 

タケミカヅチは、再びオオクニヌシのところへ戻って来て言いました。
「そなたの子どものコトシロヌシとタケミナカタは、アマテラスオオミカミのお子さまの命令には逆らわないと答えた。そなたの心はどうだ。」
 これに対して、オオクニヌシは、こう答えました。

「わたしの子どもたちがお答えしたとおり、わたしも同じ気持ちです。この葦原の中つ国(あしはらのなかつくに)は、ご命令どおりに、すべて差し上げます。ただし、わたしの住む場所をアマテラスオオミカミのお子さまが、天の神の「あとつぎ」となってお住まいになられる御殿のように、地面の底深くに石で基礎(きそ)を作り、その上に太い柱を立て、高天原にとどくほどに高く千木(ちぎ)を上げて造っていただければ、わたしは、その暗いところに隠れております。また、わたしの百八十もいる子どもの神たちは、コトシロヌシを先頭にお仕えいたしますので、天の神のお子様に逆らうものはいないでしょう。」

そこで、タケミカヅチたちは、オオクニヌシのために、出雲の国の多芸志の小浜(たぎしのこはま=島根県出雲市の海岸)に、出雲大社(いずもたいしゃ)を造り、ミナトノカミ(水戸の神)の孫のクシヤタマノカミ(櫛八玉神)を料理人としました。このクシヤタマノカミは、鵜(う)に変身し、海にもぐり、海底の土を採って来て、たくさんの土器のお皿を作りました。また、わかめの茎で臼(うす)を作り、昆布の茎で杵(きね)を作って、その臼と杵で火をおこして、新築のお祝いを次のように申し上げました。

「わたしがおこしたこの火は、高天原のカミムスビノカミの新しい宮殿に長々と煤(すす。煙の中の炭素粒)の跡(あと)が着くまで焚(た)き上げ、地面の下の石の台を焼き固めるのです。そして、楮(こうぞ)で作った縄(なわ)を延ばして、それで釣りをする漁師(りょうし)が、口も尾びれも大きなスズキをズルズルと海から引き上げたのを竹のカゴがたわわになるほどのおいしい刺身料理にして捧げましょう。」

こうして、オオクニヌシノミコトは、出雲大社の中にお隠れになりました。(島根県簸川郡大社町にある出雲大社は、アマテラスオオミカミとの戦いに敗れたオオクニヌシノミコトを祭る神社です。)
 タケミカヅチは、アマテラスオオミカミの元へお帰りになり、葦原の中つ国を平定したことをご報告しました。

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