神話を訪ねて(第8回) 熱田神宮(愛知県名古屋市) |
さて、今回は、熱田神宮をご紹介します。 熱田神宮といえば、三種の神器(鏡、剣、勾玉(まがたま))のうちの、「草薙の剣」をお祀りしていることで有名です。「日本の神話 古事記」を読んだあなたならもう知ってますよね。草薙の剣は、因縁づくしの霊剣です。元々は、スサノオが、ヤマタノオロチを退治した時にしっぽから出てきた剣で「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」といいましたが、この剣が、スサノオ→アマテラスオオミカミ→ニニギノミコト受け継がれ、皇位継承のシンボルの三種の神器となります。古事記によると、これがその後に伊勢神宮のヤマトヒメによって祀れていたのをヤマトタケルが東征の際に授かります。そして、ヤマトタケルは、この名古屋の地で恋に落ちたミヤズヒメの家にこの剣を置き忘れていってしまいます。ヤマトタケルは、能煩野(三重県鈴鹿郡)の地で病に倒れたときに、この剣を気遣って、このような歌を詠みました。 嬢子(おとめ)の 床のべに わが置きし 剣(つるぎ)の太刀(たち) その太刀はや 私がミヤズヒメの寝床(ねどこ)に置いてきた、草薙の剣。ああ、あの太刀はどうしただろうか さて、その後、草薙の剣は、代々の天皇が皇位継承の時に受け継いでいくわけですが、歴史に詳しい方なら、この剣が平家滅亡の時に壇ノ浦の海に沈んでしまったことを思い出すでしょう。源氏に追いつめられた平家一門は、二位の尼(平清盛の妻)が、孫である幼い安徳天皇(8歳)を「海の底にも都がありますよ」と諭しながら、三種の神器もろとも海へ入水します。「平家物語」のあの感動的な泣ける場面です。その後、義経らが海の底をさらったところ、鏡と勾玉は発見されましたが、草薙の剣はとうとう見つけることはできなかったといわれています。この海底に没した剣は本物だったのか、今現存する剣は、その後に再製されたものなのか、、、分かりませんが、とにかく現在も熱田神宮にお祀りされています。もちろん、この宝剣は、だれも見ることはできませんよ!それを期待して熱田神宮に行かないようにしてください。(実は私はちょっと期待していたのですが。。。) このようにヤマトタケルが剣を置き忘れたミヤズヒメの故郷、名古屋にある熱田神宮は、草薙の剣を切っても切れない関係があるわけですね。御祭神は、「熱田大神」(あつたのおおかみ)といって、その神様の名前は、古事記には出てこない聞き慣れないものですが、これは「草薙神剣を御霊代(みたましろ)として、よらせられる天照大神のこと」だそうです。つまり、「草薙の剣に乗り移った天照大御神」ということになるでしょうか。また一緒にお祀りされている神も、草薙の剣にゆかりのある神々ですね。建稲種命は知りませんでしたが、ミヤズヒメのお兄さんとのことです。日本書紀に書いてあるのかな。。。 熱田神宮も伊勢神宮や鹿島神宮などと同様に大きな杜に囲まれた広い境内で、威風堂々とした社殿を持つ立派な神社です。私が参拝した昨年秋は、ちょうど七五三の季節でしたので、晴れ着を着た子供を連れた家族連れで賑わっていました。ちなみに、私は、熱田神宮が所蔵する国宝や重要文化財を是非見たいと思って、境内にある宝物館に入ってみたのですが、この時は現代の刀匠による日本刀の作品展示をしているだけ(失礼!)で、所蔵の宝物を見ることはかないませんでした。ここは常設の展示物がないのかな。少々がっかりして、お昼どきでお腹もすいていたため、境内にある別宮や摂社を全部素通りして出てしまいました。(後悔)なお、熱田神宮は、創建千九百年を期に、大規模な改修工事をしているとのことです。(あまり気がつきませんでしたが。) さて、名古屋グルメの話です。熱田神宮の門前に「ひつまぶし」(うな丼にお茶漬けをかけて食べる)の名店(蓬来軒神宮店)があると聞いていたので期待していましたが、ちょうど昼時で長蛇の列。その近くの本店も2〜3時間待ち!!というのであきらめ、ちょっと電車に乗り、名古屋城近くの「しら河浄心本店」さんで、人気の「ひつまぶし」をいただきました。ここも1時間以上並びましたが、美味かった。その後は、帰りの夜行バスを待つ間、地下鉄伏見駅すぐの老舗の居酒屋「大甚本店」で一杯。この店は午後4時開店で、5時くらいに店に入ると、中はおじさんたちで超満員。2階の座敷、おそらく日本一小さなちゃぶ台の席に案内されました。つまみの小皿はセルフサービスで自分で取ってきます。しかし、6時を過ぎる頃にはつまみも少なくなり、お客さんもさっさと帰って行きます。6時半にはガラガラというすごい店(8時には閉店とのこと)でしたが、老舗のお店らしいレトロな気分を味わいました。ナマコ酢が美味かった。ミソカツ、みそおでん、みそ煮込みうどん、地鶏と名古屋はうみゃ〜もんがたくさんありますね。 |
社名 |
熱田神宮(あつたじんぐう) →「熱田神宮」ホームページ |
鎮座地 |
愛知県名古屋市熱田区神宮1−1−1 (JR東海道本線「熱田駅」・地下鉄名城線「神宮西駅」・名鉄「神宮前駅」からすぐ) |
御祭神 |
主神 熱田大神(あつたのおおみかみ)相殿神 天照大御神・素盞鳴尊(すさのおのみこと)・日本武尊(やまとたけるのみこと)・宮簀媛命(みやずひめのみこと)・建稲種命(たけいなだねのみこと)→「日本の神話 古事記」(ミヤズヒメとの恋) |
御由緒 |
祭神の熱田大神とは、三種の神器の一つである草薙神剣を御霊代として、よらせられる天照大神のことであります。 天照大神は、言うまでもなく皇室の御祖神として至高至貴の神と仰がれ、人々にいつくしみの徳をあたえられる神であります。また、相殿神は「五神さま」と呼ばれ、草薙神剣とゆかりの深い神々で、宮簀媛命、建稲種命は尾張氏の祖先として、仰がれる神々でもあります。 御鎮座は、日本武尊の御事蹟と深い関係があります。御父景行天皇から絶対の御信任を受けた尊は、御東征の帰途、尾張国造の御女宮簀媛命をお妃にお迎えになり、やがて草薙神剣をこの国にとどめておなくなりになります。その後宮簀媛命は尊の御意志を重んじられ、神剣を今の熱田の地にまつられました。今からおよそ一千九百年前になります。 ※参拝者用「熱田神宮について」より |
熱田神宮の見所紹介(写真をクリックすると拡大します。) |
西門 地下鉄神宮西駅を降りると西門が近い。 |
大楠 ご神木の大楠。大きくて形がよい。 |
大楠 樹齢千三百年前後で、弘法大師手植えと伝えられている。 |
本宮の鳥居 |
本宮拝所(外玉垣御門) 伊勢神宮と同じ唯一神明造の拝殿。七五三の家族が晴れ着を着て写真を撮っています。 |
中重の鳥居と内玉垣御門 拝所からのぞき見。唯一神明造の立派な建築ですが、藁葺ではないのが残念。 |
一般の参拝者はこちらで |
鈴祓い 七五三に行われる独特の「鈴祓い」。巫女さんが、鈴を鳴らして子供の厄を祓うのでしょう。私は初めて見ました。 |
信長塀 信長が桶狭間合戦での戦勝御礼のため奉納したという塀。熱田神宮は戦災を受けていますが、これは当時のまま? |
唯一神明造の小社 信長塀の脇にあった小さな社と賽銭箱。説明書もなかったので何かも分かりませんでした。 |
正門から本宮への参道 境内は、七五三の家族ずれで賑やか。 |
正門 正門を出た門前に「ひつまぶし」の名店がありますが、お昼時で長蛇の列でした。。。 |
人気の「ひつまぶし」 1時間以上並んでようやく食べた「ひつまぶし」。美味かった。「しら河浄心本店」 |
居酒屋 大甚本店 名古屋の老舗居酒屋「大甚本店」さんで今日一日のお疲れさんの一杯。日本一小さなちゃぶ台! |
大甚本店 老舗居酒屋さんらしく、建物も木のつやが出ていて雰囲気あります。 |