第7章 スクナビコナ 

さて、オオクニヌシが、出雲(いずも)の美保(みほ=島根県八束群美保関町)の岬に行かれたときに、波の上にガガイモの形をした船に乗って、絹(きぬ)の着物を着た神さまが近よってきました。名前を聞いてみましたが、その神さまは答えません。そこで、お伴の神たちに聞いてみましたが、みんな知らないといいます。すると、一匹のヒキガエルが言いました。
「きっと、この神さまの名前は、クエビコが知っていますよ。」
そこで、クエビコという者を呼んで尋ねてみたところ、
「はあ、これはカミムズビノカミのお子様で、名をスクナビコナノカミという神さまでいらっしゃいます。」
それで、今度はカミムズビノカミにお尋ねしてみたところ、
「そう、これは本当に自分の子どもである。子どもの中でも、わたしの指の間からこぼれ落ちた子どもである。そこで、お前とは、これから兄弟となって、この葦原の中つ国(あしはらのなかつくに=人間が住む国。日本の国)を作り固めなさい。」
とおっしゃいました。そういうわけで、オオクニヌシとスクナビコナは、お二人で協力しながら、この国を作り固められました。しかし、それが終わるとスクナビコナは、また海のむこうの国に帰ってしまったのです。
 さて、スクナビコナの神さまの名前を言い当てたクエビコというのは、実は「山田の案山子(かかし=田んぼにいるあの人!)」という者です。この神さまは、足で歩くことはできませんが、世の中のことは何でも知っている神さまです。

オクニニヌシは、嘆(なげ)きながら、こう言いました。
「ああ、これからわたし一人で、どうやったらこの国を作ることができようか。(できはしない。)どの神さまと一緒に作ったらいいのだろう。」
 すると、海の上を明かりで照らしながらやって来る神さまがおりました。その神さまは、こう言いました。
「わたしをよくお祭りすれば、わたしは、あなたといっしょに、よくこの国を作ることができるでしょう。もし、そうしなければ、この国を立派に作ることはできません。」
 そこで、オオクニヌシは、その神さまに
「それでは、どうやって、あなた様をお祭りすればよろしいのでしょうか。」
 と尋ねますと、その神さまはこうお答えになりました。
「わたしを、ヤマトの国の青々とした山々の中の東の山の上に祭りなさい。」
 これは、三輪山(みわやま。奈良県桜井市三輪町)の大神神社(おおみわじんじゃ)に祀(まつ)られているオオモノヌシノカミ(大物主神)のことです。

第4話「オオクニヌシ」おわり

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