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日長の里だより

昼休みの散歩探鳥記


目  次

はじめに
散歩道 メインコース
散歩道 サブコース1−水辺コース
散歩道 サブコース2−椿の道
散歩道 サブコース3−山里の道
観察できた野鳥一覧表


はじめに

 日長の里、という地名はあるわけではない。私の元勤務先近くのいつも散歩に行くあたりの字名が日長(ひなが)であり、のどかでちょっとひなびた感じのする光景から、私が勝手にそう呼んでいるのである。しかし他の人に言ってみると、全然違和感なく受け入れてくれるのでピッタリの命名と自画自賛している。
 昼食もそこそこに会社を出て日長の里へ昼休みの散歩に出かけるようになったのは、会社に出向していた頃の後半、平成9年頃である。その頃はただ歩くだけ、1年に百万歩を歩くのが目標の毎日であった。
 その目標を11ヶ月くらいで達成してしまったと記憶しているが、その後はしばらく歩かない日が続き、やがて出向を解かれて本体へ帰ったのであった。
 その後2年経って平成12年7月に転籍を前提に再度出向してから、今度はゆっくり歩き直してみると結構鳥がいて、路端や広い敷地の家屋敷に四季折々の花が咲いていて、変化のある里と感ずるようになり、それからは双眼鏡を首からぶら下げて歩くようになった。
 メモも取るようになり、読み返してみるといろいろな鳥の名前やちょっとした出来事が書き付けられている。この駄文はそのメモを元に、日長の里を紹介できればと思い、探鳥記かつ紀行文風を気取って書いてみたものである。
 開発が進んでいる都市ならびにその近郊であるが、気をつけて見るとこんな自然が残っていることを分かっていただければ幸いである。
 
散歩道 メインコース(日長神社)

 元勤務先は日長の里にはない。知多市南浜町であり、そんなに遠くない昔は海であり、20数年前に埋め立てられて陸になった所である。その埋立地にある会社から、通称名管道
路と西知多産業道路の2本の道路を長い横断歩道橋で渡り、さらに埋立地と旧海岸を画す掘割を渡ってからが日長の里である。掘割の旧海岸側は旧海岸堤防そのもので、掘割になっていない所では内陸部になんでこんなコンクリートの壁がずっと続いているのか、旧海岸のことを知らない人は不思議に思うかもしれない。日長の里散歩道は、ここが起点である。
(この会社を退職してしまった今となっては、起点は名鉄日長駅とした方が良いかも知れない。日長駅については後述されている。)

 この起点へ到達するまでにも、緑地帯からはにぎやかな鳥の声が聞こえる。メジロ、ヒヨド
リ、キジバト、スズメが常連で、冬になるとツグミも多く現れ、樹木の根元でがさごそ音がするとツグミの仲間のシロハラがいることが多い。コゲラの声もよく聞こえる。また2本の道路を分ける緑地帯からコジュケイの声が聞こえたこともあった。

 長い歩道橋はまた格好の展望台になっている。振り返って火力発電所の方角の空あるいはこれから行く日長神社の山あたりを双眼鏡でさがすと、肉眼では見えにくいがノスリ、トビなどタカの類が飛んでいるのを確認することがある。またこれから行く日長神社の上空にオオタカの鳥影を見たこともある。しかしタカの類を見ることができるのは、冬の時季だけで夏場は見ていないところから、餌の少ない季節になると何処かから飛来するのではないか思われる。

 また、この付近の掘割には桜が旧海側に美しく植えられている。桜のシーズンには実にきれいである。しかもあまり見物客が来るわけでもなく、近隣の住人と通勤する我々だけが独占しているようなものである。

 掘割を渡って旧海岸堤防上の道路から民家の間の細い路地へ入っていくと日長駅へ出る。この駅は無人駅で普通電車が毎時2本止まるだけで、空港が出来て日に何本も通る特急はおろか急行さえも止まらない。駅前には少しは店でもあるかというとこれも全くない。駅前らしい光景は自転車置場くらいである。20年ほど昔、埋立地が工場地帯に変わる為の建設工事が盛んだった頃に、多分居酒屋をしていたと思われる店の跡があるが、今は旧型の自販機が清涼飲料水を売っているのみである。写真は古いもので、最近新しい駅舎に建替えられたが、踏切と道路と駅構内は相変わらず渾然一体となっており、この雰囲気は変わらない。

 このあたりは昔、電鉄会社が別荘地として売り出したという土地だそうで、そういえば古そうな民家はしっかりした木造のもが多い。また庭も広々とした別荘を思わせるお宅が点在している。したがって塀の向こうからはメジロ、ジョウビタキなどの声がよく聞こえる。

 駅を横目で見て、踏切を渡ると左手は日長神社の森、自然林のままという感じの小山の斜面である。右手は民家とお寺がある。民家は製材所でそこのガレージで毎年ツバメが営巣し
ヒナを育てる。ガレージは夜になるとシャッターが下りるはずであるが、夜遅くに閉めるようで影響はない様である。むしろ外敵から襲われずに子育てが出来るのかもしれない。

 少し昇り里側のお寺の駐車場から森の斜面がよく見るところがあり、ここでしばし立ち止り陽あたりの良い斜面を眺めていると、メジロ、ヒヨドリ、キジバト、ツグミなどが行きかっているのがよく分かる。斜面の落葉をガサゴソ云わせているのはシロハラかキジバトである。

 駐車場の辺りから道は下りとなり、すぐに日長神社参道の階段登り口に着く。鳥居があってのぼりが立っている、典型的な村の鎮守様の入口といった風情である。階段は古い石段で石の踏まれ方から見るとかなり古くからの神社であることがわかる。ぬれると表面は滑りやすくなるので、雨上がりは用心して上がったり下がったりする必要がある。

 石段の両側は照葉樹の森で、この地域の自然林そのままではないかと推測される。鳥は南側斜面で見られるものとあまり変わらないが、シジュウカラ、ヤマガラが加わってくる。傾斜はゆるくは無いが、一気に上れる程度であまりきつくはない。途中の山を巻くように付いている道端でトラツグミを見たことがある。一度見るとそれからくる時は必ずそこを見るのであるがなかなか出会えない。上から見下ろす南東側斜面も陽あたりがよく、メジロ、ヒヨドリ、キジバト、ヤマガラ、シジュウカラなどが飛び交っている。

 石段は下中上と3段に分かれており、中段と上段の間に写真のような立札が立ててある。段数と角度、それに高度差である。おまけに健康標語と至れり尽くせりの立札である。

 蛇足であるが、日長神社は元勤務先の会社の守り神?であり、安全衛生委員をしていた頃は「安全祈願」に訪れたのである。神社は普段は無人であるが、そんな時は神主さんが昇ってきて、祝詞を上げお祓いをしてくれるのである。
 「どんな会社も最後は神頼み」なんて冗談めかして云っていた人もいたが、やることをやっても、やはり最後に神様にお願いて締めくくりをしないと安心できないものであり、なかなかの名言であると石段を登りながら思い出すのである。
 143段を上り詰め、山門をくぐると本殿前の明るい広場へ飛び出す。ひと息入れながらあたりを見回し、上空へ目をやるとタカ類が悠然と姿を現わし、上空を2、3旋して飛び去ることがある。もちろんこれは前に書いたように冬の時季だけのことである。本殿のあるところは完全に頂上であるが、回りは樹木に囲まれているので上空だけがぽっかり空いている感じで、飛び去ったタカがどこへ行ったかは分らない。

 昔はこの地域の聖域であり、かつ船を出した漁師が沖から見たときの目印になっていただろうと思わせる地形である。


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