No.9 水辺に咲く植物

小倉 寛

今月の話題はナゼか?オラの寄り付き難い植物のテーマになっているので、苦労したが、(注オラ達モグラ族は、池とか川が苦手である)……水辺に咲く植物にも色々ある。ナント云っても、睡蓮と蓮に尽きるとジサマはいう。睡蓮は蓮という漢字がつくので、オラてっきり蓮と睡蓮は、親戚とばかり思っていたが、ジサマがいうには、それが全く異種の水生植物であるというから意外であった。

ハスの原産地はインドという説がある。インドから中国を経て日本に伝わったと云われているが、千葉県の弥生時代の地層から出土したハスの種を発芽させた大賀博士の事例もあり、ハスの由来については、多くの疑問が残る。珍しい黄色の花を咲かせる北米原産のキバナハスも今は日本に輸入されている。(アメリカハスともいう)

 花ハスは、江戸時代に既に百種以上の品種が愛好者に栽培されていた記録があり、園芸ブームの昨今は、中国から数百種の品種が導入され、静かなるブームを呼んでいる。

ハスとスイレンの違いを挙げると、ハスは根茎でも、種子からも容易に増やせるが、スイレンの花は、結実しないので、繁殖は根茎の株分けに限られる。従って育種も困難で、品種数も蓮のように多くない。ハスの根茎の寿命は一年毎に更新されるが、スイレンの根茎は、年々肥大して寿命は無限である。

ハスの根茎は節々で繋がれていて、根茎には空洞があり、柔らかく食用になる。スイレンの根茎には空洞はなく、大きくなるが、硬くて食用にはならない。

西洋では、ハスもスイレンもロータスと呼ぶので、異種の植物であるが、同種の植物と誤解をまねく、要因になっている。ハスはインドでは、女性の生殖を象徴し、多産、力、生命の創造力から、ひいては幸運・繁栄・長寿・健康・名誉などのシンボルとされ、お釈迦様の台座にもハスの花が象られている。

ハスの根は蓮根と云って、中に空洞があり、見透しが効くので、食べると幸運を呼び、縁起がよいと正月の食膳に珍重される。

西洋を原産地とするスイレンは、緑溢れる大庭園に囲まれ、豊かな水を湛える池を持つ王侯・貴族に限られ栽培されていたという。つまり平民の手に届かない高貴な植物であった。1880年~90年代に、フランスの印象派の巨匠モネが、最も円熟した晩年の絶頂期に、スイレンの咲く大池を題材に描いた大小多くの作品は、池面に映る大自然の光線の変化と、流動する雲の動きをキャンバスに表現した画家として有名で、近年開催された愛知花万博のシンボル施設に、モネの館とスイレンの咲く大池をモチーフに用いた例は、記憶に新しいところです。

スイレンは種子からの繁殖が難しく、根茎の株分けに限られる。しかも根茎の肥培が極めて遅速で、大量生産ができない。ホームセンター売り場に展示されているが、花を迎えるには二・三年の肥培期間が必要の稚苗で、それも高値のため、飛ぶようには売れない。スイレンの花言葉は、「心の純粋性・誠実」である。昔はハスと同種の植物とされていたが、研究された今では異種の植物に明確に分類されている。

久兵衛どんのジサマは、モネの描く絵に憧れて、友人に強請って大量の大株を、四つの池に溢れる程、植えたが知識不足で失敗した。モネの描くスイレンの池は、モネが功なり名遂げた晩年に、金に糸目を付けずにセーヌ川から水を導き造った広大な池だから見事に咲いたが、ジサマの庭の池は規模が小さく、水深の調整など、スイレン栽培の必須条件が整わず、根茎の肥培までは抜群だったが、花が咲いても茂る葉の陰に隠れて、モネの描く絵の様にならない。これを悟るには数年の日時を費やした。すべて結果は徒労に終わった。今は裏庭の池のスイレンを残して、他の池のスイレンは掘り上げて、豪農の館、龍言の池にも運び無料で進呈した。他は数軒の造園業者に数百株を無償で譲って処分した苦い思い出がある。

ハスの語源は、蜂巣から来たと推測され、果実の入った花托が蜂の巣に似ているからと言われている。ハスは泥水の中から穢れのない花を開き、清純・純粋のシンボルで、俗塵に染まない君子の花と言われ、種子の多いことは多産の徴であり、仏教では極楽浄土は神聖なハスの池だと信じられていた。古来から仏教的な花とされている。スイレンと異なり、根茎と種子からの繁殖が容易で、池がなくとも、容器栽培で花を咲かせることができる美点があり、久兵衛のジサマは今、花ハスの容器栽培に夢中である。

全国には花ハス栽培の研究会や協会などが組織され、ホームページも立ち上げ、活動を展開している。オープンガーデン・新潟のホームページには、これらをリンクしているので、パソコンで検索すれば、栽培技術を容易に学ぶことができる。

ハスの葉は蝋質を分泌するので、夜露や雨水を受けると丸い水玉となって光り、神秘的な風情と自然の躍動感を庭に展開できる。花は朝日を受けて開き、午後三時頃閉じる。これを毎日繰り返して四日目に散る。花托は上面が平たく、蜂の巣状の穴の中に一つずつ果実が入っている。この花托は室内インテリアに歓迎される。種子は暗黒色で堅く、泥炭層の中では2000年以上も発芽力を失わないことが立証されている。ハスの実は、発芽処理を施して播種すると簡単に発芽する。純粋種を求める場合は、分根に限る。久兵衛のジサマは、交雑を避けて近年では「大賀ハス」に限定して栽培、弥生時代の悠久のロマンを求めて花を咲かせている。「希望者には今直ぐ連絡ください。無償で花ハス芽を進呈し、栽培のノーハウも懇切に伝授いたします。」メール又はTEL025-772-7445 FAX 025-772-7666で!

雪消えの春(4月)が、植え付けの適期になります。

ハス芽は郵送で進呈いたします。

注、月刊キャレル2009年9月号に掲載された記事より一部補足して転載いたしました。

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