旅のアルバム ブルガリア チプロフツィ
Album of my trip to Chiprovci, Bulgaria


 キリムの町、チプロフツィ。ユネスコの世界遺産にも登録されました。ここには植物染めの研究をしているニコロフ先生、民族衣装専門家のアニが住んでいます。正直言ってキリムにはあまり興味がありません。今作られているものはすべて輸入物の木綿糸を経糸に使っており、化学染料で染められているからです。しかし、植物染めがその後どうなっているのか確かめに行きました。 
  
 そこで見たものは・・・残念ながら植物染めは存続の危機に瀕し、キリムはほとんど既成の糸で織られ、糸紡ぎさえする人がいないそうです。刈られた羊の毛はそこいらに捨てられているとか。なんてもったいない!13.5年前に来たときは、あちこちで糸紡ぎを見せてくれるばーちゃんに出会えたのに!博物館ではキリム織りの体験ができますが、織りだけでなく糸紡ぎやカーディング、果ては毛刈りも体験するべきではないでしょうか?
 
 ユネスコに登録されたことは宣伝には効果があったそうです。しかし、キリムの値段が上がってしまったこと、注文通りの色と堅牢度を出すには植物染では対応できないことなどが弊害と言えるかもしれません。ニコロフ先生は一時期、企業からの注文もあったそうですが、値段が高いことから今ではほとんど染めていないとのこと。かつて小学校で行っていた植物染の課外活動も、子供の数が減ったこと、先生が退職したことなどから、今ではまったく行われていません。

 一抹の希望は、アニがソフィアの民俗博物館をやめて、この町の歴史博物館長になったこと。「もうソフィアはいや。この小さな町で時分に何かができるかも知れない」という思いで移住したそうです。植物染めや手紡ぎの復活にも意欲的に取り組んでくれそうです。 
 
 ブルガリアは20世紀の始め、養蚕も盛んでした。当時の女性は普通に蚕や大麻を育て、布に織っていたそうです。アニのおばあちゃんもその一人。おばあちゃんの織った布、糸をたくさんいただきました。これらは5月11日-13日に東京で展示されました
のどかな村の風景  博物館にはキリムがずらり  古いキリムは経糸も羊毛です キリム織り体験
 博物館の植物染め標本カード ホテルに飾られている植物染めキリム  ザルナステッツ。博物館の庭に植えられている染色植物 植物染め研究者ニコロフ先生
1906年に絹織物製作工程をマスターした少女への認定証 鳥の模様が入った絹織物 蚕から糸を採る道具 アニのおうちの手洗い。民俗学者らしい素敵なしつらい
尊敬する手仕事のベテランたち。彼女らは何処へ・・・? 
アニの祖母、マリヤさん。大麻や蚕を育てて布を織っていた ニコロフ先生の母上。15年ほど前に糸紡ぎを見せていただいた。故人 13年前に偶然出会ったばーちゃん。糸紡ぎもキリムも任せなさい!  こちらも13年前、糸紡ぎを見せてくれた人  私の帰国後入ったニュース。250年前のキリムがチプロフツィに返ってきました。明らかに植物染です。