床屋さんでの会話(2022.3.24)


 私は今現在の住所に住みはじめて、もう20年ちかくになる。
我が家の、裏の隣りにある床屋さんに通い始めて、同じく20年近くになる。

自宅の玄関をスリッパを履いて出て、その床屋さんの前まで行き、
入口から中を覗き込み先客がいるようだと、“また来よう”っとばかり引き返す。
そんな気楽に思い立って、ふらりと行ける気さくなお店であり、
私より少し年上のご主人と、わたしより少し年下に見える奥さまと
夫婦でずっとやってらっしゃる。

先日も、ふらりと立ち寄ったら先客がいなかったので、
「よかですかぁ、、」と、言いながら入店するとご主人が、
『はい!どうぞ、どうぞ!』とばかり椅子のほうへ案内してくださる。
いつもの光景であり、待たないで良かったというのと、
長く伸びた髪を久しぶりにサッパリとしてもらえる、
そんな安心感でホッとする瞬間である。

お店には椅子がふたつあり、入口に近い方の椅子にいつも座る。
私の映る鏡の左手にテレビが置いてある。
やっている番組なんかの話題などで、世間話しをしたりして3人で笑いあったりしている。
そんな毎度、毎度の雰囲気である。

その日も、髪を切ってもらいながらゆったりとした時間が流れていた。

シャンプーをしてもらい、タオルで髪を拭いてもらった後、
櫛でセットしようとした奥さんが言った。

 『分けますか?』と、
いつもの冗談だろうとは思ったが、私はまじめに答えた。

 「また、またぁ、、、分けるほどの髪は無かでしょうが、
  オールバックですよ!(その髪も無いが、、、)」と、笑いながら。

分けるといえば、昔は 7、3(しちさん)に分けるとか、6、4に分けるとかよく言ってたものだ。
なかには頭頂部のハゲを少しでも隠したいのか、1、9に分けてる人もいたよなあ、、、、。
そんな事を考えながらふと思った。
私でも分けようと思えば、 0.5、9.5 くらいなら分けられるかもなぁ、、、などと。
口に出しては言わなかったが、考えながらも自分で少し笑ってしまった。


前かがみになって、シャンプーをしてもらってる最中に、
 『どこか、かゆいところはないですかぁ、、、』とか聞かれるので、アッシは、
 「首筋のところをお願いしまぁす、、、」なんて言ってよく洗ってもらう。

そこでも、私は夢想した。
  『どこか、かゆいところはないですかぁ、、、』と聞かれて、アッシは答える、
  「額の生え際をお願いしまーす」と。
すると、奥さんが間髪を入れずに答える、
  『生え際なんてないですよ!(つるっぱげじゃあないですか!)』、

そんなギャグを、奥さんに言ってみた。
そしたら、期待に反してあまり笑ってもらえなかった。

そりゃあ、そうだろうなあ、
何十年と床屋さんをされておられるのだから、
そんなハゲに関するダシャレなんて、ありきたりで
ちっとも面白くないんだろうなぁ、、、、、

『はい!お疲れさまでしたぁ、、』と言われてお店を出た。
家に帰りついた私は、妻と息子に同じようなダジャレを言ってみたが、
 “じぇんじぇん、おもしろうなかぁ、、、” と言われた。

ほんと、私には面白くない日だった。
何て日だ!

ほんと面白くないね。


【この絵は、はげあたまの具合がアッシに似ていると家族が言う 】
 (何の関係もないが)】


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