もしもし、その件に関しましてはですね・・・(2006.5.20)


歩いて通勤している途中、通りの向こう側を歩いているGTさんが見えた。

もう、7、8年も前になるが、GTさんと私は同じ職場ではあったが、担当は異なっていた。
わが社の野球部は、その年の社会人都市対抗野球大会で、九州代表となった。
大阪ドームで、松下電器との試合が決まり、約50名の応援団として、私もGTさんも大阪行きに参加した。

朝、貸切バスに乗り、熊本を出発。
北九州でフェリーに乗り変え、船中泊で翌朝、大阪に着きそのまま野球の応援である。

そのフェリーでの船中泊は、2等船室で、枕と毛布でゴロ寝であった。
夕食に、ビールと酒を少し飲んだあと、船室で寝ていたら、GTさんの声が聞こえて来た。

「もしもし、その件に関しましてはですね・・・実はですね・・・・ですからですね・・・・
  もしもし、もしもし・・・・」

その部屋には、10人ほど寝ていたが、皆、目が覚めてしまった。
腕時計を見たら、夜中の2時半である。
GTさんは寝言を言っていたのである。


【 もしもし・・・・実はですね・・・・   】

『???! ったくー、もう!』と、みんなはブツブツ言ってまた寝た。
当のGTさんは、何も無かったかのようにイビキをかいて寝ている。
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通勤途中で見かけたGTさんの姿に、とっさに、その寝言事件を思い出したわけだが、
自分に置き換えて考えてみた。

最近、仕事上の些細なトラブルや、心配事が色々モヤモヤと絡み合って、
自分も、GTさんのように夜中、寝言を言ってはいないだろうか・・・・・・

はたから見れば、何ということはない些細な問題でも、
当の本人には、とてつもなく大きな障害のように感じられる場合がある。

考えすぎてはいけない。
他人は自分が思っているほど、その問題を重要視していない。
もっと、気楽にやれ!
小さいことで、クヨクヨするな!
もっと、無責任になれ!
他の社員だって、そんなに真剣に仕事していないじゃないか!
・・・・・・・・・・・・・

寝言ならぬ、そんな独り言をブツブツつぶやいて通勤している自分が、そこにいた。
信号待ちで立ち止まり、ふと見たショーウィンドウに写った自分の姿、
白髪で頭は真っ白だ。


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