3.三十三観音





 妙法蓮華経観世音菩薩普 門品(観音経、以下普門 品)では観音の普現色身三 昧より示現する三十三種の 変化身により、衆生の悩み に応じて済度すると説く。
 観音経が浸透すると同時 に、観音の三十三変化身の 数字に意味を持たせて観音 三十三霊場、三十三間堂、 弘前市禅林三十三ヶ寺など がつくられるようになっ た。







最勝院三十三観音
 1.龍頭 2.持經 3.圓光 4. 遊戯 5.白衣 6.蓮臥 7.瀧 見 8.施楽 9.魚籃 10.徳王
11.水月 12.一葉 13.青頸  14.威徳 15.延命 16.衆寶  17.岩戸 18.能靜 19.阿耨  20.阿麼提
21.葉衣 22.瑠璃 23.多羅  24.蛤蜊 25.六時 26.普悲  27.馬郎婦 28.合掌 29.一 如 30.不二
31.持蓮 32.灑水 33.楊柳







 最勝院の三十三観音で は、本来一番の楊柳觀音が 三十三番となり二番の龍頭 觀音が一番、以下順にスラ イドしている。







 1.龍頭觀音(りゅうずかんのん)
 天龍夜叉の身を現わし、 雲中龍の背に坐す姿を示し ている。龍頭に乗ることか らこの名がある。普門品で はこの観音菩薩の利益を 「天龍夜叉(中略)等の身 を以て得度すべき者は、即 ち皆之を現じて而も為に説 法す」と説いている。龍は 聖獣の中でも王とされ、こ れを観音の功徳にたとえた もの。流布する像は雲上の 龍に結跏趺坐、あるいは起 立する。







 2.持經觀音(じきょうかんのん)
 声聞身の身を現わし、右 手に経を持ち、岩上に坐す 姿を示している。経巻を持 つことからこの名がある。 普門品ではこの観音菩薩の 利益を「応に声聞身を以て 得度すべきものは、即ち声 聞身を現じて而も為に説法 す」と説いている。岩上に 坐し、右手に経巻を奉持 し、左手は膝上に置く。声 聞は如来の説法を聴いて覚 りを得ることから、経巻を 如来の説法として表わして いる。







 3.圓光觀音(えんこうかんのん)
 光中に色身を現わし、合 掌して岩上に坐す姿を示し ている。普門品ではこの観 音菩薩の利益を「或は王難 の苦に遇い、刑に臨みて寿 終らんと欲するも、かの観 音の力を念ずれば、刀尋ち 段段に壊せん」と説いてい る。形像が背に熾盛の火焔 を背負っていることから、 圓光観音と称される。







 4.遊戯觀音(ゆげかんのん)
 五色の雲に乗り、左手を 右膝に安じ左手を雲につ け、法界に遊戯する姿を示 している。遊戯とは仏の境 地に徹してなにものにもと らわられず自由自在である ことである。普門品ではこ の観音菩薩の利益を「或は 悪人に逐われて金剛山より 堕落するに、かの観音の力 を念ずれば、一毛をも損す る能わず」と説いている。







 5.白衣觀音(びゃくえかんのん)
 もともと胎蔵界現図曼荼 羅観音院に住する尊であ る。名前の由来は、この観 音の真言に白處、白衣の意 味があるところから来てい る。白衣(白處)とは白浄 菩提心を表し、浄菩提心は 能く諸仏の大悲を生むが故 に、曼荼羅観音部の部母と される。三十三觀音では白 衣で石上に坐す。







 6.蓮臥觀音(れんがかんのん)
 正応身を現わし地中蓮華 の上に坐し、合掌する姿を 示している。普門品ではこ の観音菩薩の利益を「小王 身をもって得度すべきもの は、即ち小王身を現じて而 も為に説法す」と説いてい る。







 7.瀧見觀音(たきみかんのん)
 火坑変成他の身を現わし 断崖に坐し、滝を見る姿を 示している。普門品ではこ の観音菩薩の利益を「仮い 害意を興して大火坑に推落 せしむるも、彼の観音の力 を念ずれば、火坑は変じて 池と成らん」と説いてい る。







 8.施楽觀音(せらくかんのん)
 如日虚空住の身を現わ し、水の辺の岩上に坐し、 左手を膝に置き、右手を頬 にあて、蓮華を見る。苦を 除き、楽を施すことから、 この名がある。普門品では この観音菩薩の利益を「衆 生困厄を破り、無量の苦、 身に迫るとも、観音の妙智 力は能く世間の苦を救う」 と説いている。







 9.魚籃觀音(ぎょらんかんのん)
 惑遇悪羅刹の身を現わ し、水上の大きな魚の上に 起立する姿を示している。 普門品ではこの観音菩薩の 利益を「或いは悪羅刹毒龍 諸鬼等に遇わんとするとき に、かの観音の力を念ずれ ば、時に悉く敢えて害せ ず」と説いている。







10.徳王觀音(とくおうかんのん)
 大梵天の身を現わし、岩 の上に坐し、右手に緑葉枝 を持ち、左手は膝に安ずる 姿を示している。普門品で はこの観音菩薩の利益を 「応に梵王身をもって得度 すべきものは、即ち梵王身 を現じて、為に説法する」 と説いている。







11.水月觀音(すいげつかんのん)
 辟支仏の身を現わし、水 上蓮葉の上に立ち月を見る 姿を示している。普門品で はこの観音菩薩の利益を 「応に辟支仏の身を以て度 することを得べき者には、 即ち辟支仏の身を現わし て、為めに説法す」と説い ている。辟支仏が月を仰 ぎ、水面の月影を観じて縁 起の理法を悟るというさま を具象化したものとされ る。
 ※ 辟支仏=ひとりで覚 りを開いた小乗仏教での聖 者。







12.一葉觀音(いちようかんのん)
 宰官の身を現わし、水上 に蓮弁を浮かべその上に左 膝を立てて坐す姿を示して いる。普門品ではこの観音 菩薩の利益を「若し大水の ために漂わされんに、その 名号を称すれば、即ち浅処 を得ん」と説いている。特 に水難を除くとされる。







13.青頸觀音(しょうきょうかんの ん)
 即現仏の身を現わし、岩 上に坐し右膝を立て、右手 を膝の上に置き、左手は岩 の上に懸けた姿を示してい る。







14.威徳觀音(いどくかんのん)
 天大将軍の身を現わし、 右手に蓮華の枝を持ち、右 手は地につけて、岩上より 水面を見る姿を示してい る。普門品ではこの観音菩 薩の利益を「天大将軍身を もって得度すべきものは、 天大将軍身を現じて為に説 法す」と説いている。







15.延命觀音(えんめいかんのん)
 呪咀諸毒薬の色身を現わ し、岩上に肘をつき、掌を 右の頬につけ、水上を見る 姿を示している。普門品で はこの観音菩薩の利益を 「呪咀諸毒薬の身を害せん と欲するものあるも、かの 観音の力を念ずれば、還っ て本人に著かん」と説いて いる。







16.衆寶觀音(しゅうほうかんのん)
 長者の身を現わし、右手 を地につけ、立てた膝の上 に左手を置く。普門品では この観音菩薩の利益を「若 し百千万億の衆生ありて、 金銀瑠璃車渠馬脳珊瑚琥珀 真珠等の宝を求めんがため に大海に入り、たとい黒風 その船舫を吹き、羅刹鬼国 に飄堕すとも、その中に若 し乃至一人でも観音菩薩の 名を称する者あらば、是の 諸人等は皆羅刹の難より解 脱することを得ん。この因 縁をもって観世音と名づ く」と説いている。







17.岩戸觀音(いわとかんのん)
 蝮および蝮蝎の身を現わ し、巌窟のなかに坐し、水 面を視る姿を示している。 普門品ではこの観音菩薩の 利益を「がん蛇及び蝮蝎の 気毒、煙火の如く燃える も、かの観音の力を念ずれ ば、時に応じて消散するこ とを得ん」と説いている。







18.能靜觀音(のうじょうかんのん)
 海に向かい、前にした岩 の上に両手をに置いてたた ずみ、静寂の相をした姿を 示している。普門品ではこ の観音菩薩の利益を「若し 百千万億の衆生ありて  (中略) この因縁をもっ て観世音と名づく」と説い ている。能靜の名は、遭難 者を安静にする意から出た ものとされる。







19.阿耨觀音(あのくかんのん)
 龍魚諸鬼難を現わし、海 上の岩に右膝を立て両手を もって抱き滝を見る姿を示 している。普門品ではこの 観音菩薩の利益を「或は巨 海を漂流する時、龍魚諸鬼 の難あらんに、彼の観音の 力を念ずれば、波浪も没す る能わず」と説いている。







20.阿麼提觀音(あまだいかんの ん)
 毘沙門身天の身を現わ し、岩上に左膝を立て、両 手をその膝の上に置く姿を 示している。







21.葉衣觀音(ようえかんのん)
 帝釈天の身を現わし、岩 上に結跏趺坐する姿を示し ている。







22.瑠璃觀音(るりかんのん)
 香王観音ともいい、自在 天の身を現わし、水上に浮 く一葩の蓮葉に乗り、手に 瑠璃壺や香炉を持つ姿を示 している。諸の苦厄から救 い、危急の難を除くとされ る。







23.多羅觀音(たらかんのん)
 惑値怨賊繞を現わし、右 手に青優鉢羅華(睡蓮)を 持ち、左手の掌を上向け、 雲上に立つ姿を示してい る。多羅とは梵語に由来 し、星または瞳・目精を意 味する。つまり観音の瞳か ら放つ大光明より現身した 妙艶な女人で、その豊満な 肉体的魅力により人を引き つけて救済する。







24.蛤蜊觀音(こうりかんのん)
 菩薩の身を現わし、蛤を 前にして坐す姿を示してい る。この観音を示す経軌は 見あたらない。江戸時代の 仏像図彙には「菩薩身、唐 文宗帝大和五現」とあり、 この観音の中国起源を示際 している。主として魚介類 の大漁を祈念して漁夫の間 に信仰された。







25.六時觀音(ろくじかんのん)
 居士の身を現わし、右手 に経(梵筐)を持つ姿を示 している。普門品ではこの 観音菩薩の利益を「居士身 をもって得度すべきもの は、即ち居士身を現じて而 も為に説法す」と説かれて いる。この観音の大悲は甚 深にして、昼夜六時に常に 衆生に慈悲の眼を注ぎ、加 持護念の大利益を与えると いう意味から、六時観音と 称する。







26.普悲觀音(ふひかんのん)
 大自在天の身を現す。両 手を衣で覆い隠して、前に 垂れ山上に立つ姿を示して いる。普門品ではこの観音 菩薩の利益を「応に大自在 天身をもって得度すべきも のは、即ち大自在天身を現 じて而も為に説法す」と説 いている。大自在天が三千 大千世界の最高神であり、 その威徳が勝れているため に、これを観音の平等普遍 の慈悲に配する事により、 普悲観音と称する。







27.馬郎婦觀音(ばろうふかんの ん)
 婦女の身を現わし、天衣 をつけ、両手を重ねて立つ 姿を示している。馬氏の郎 の婦人となった化身であ り、観音の変現する迹相と される。







28.合掌觀音(がっしょうかんのん)
 婆羅門の身を現わし、虚 心合掌して蓮華の上に立つ 姿を示しているのが一般的 な相であるが、當院の観音 は損傷が激しく判別がつき にくいようである。普門品 ではこの観音菩薩の利益を 「婆羅門身をもって得度す べきものは、婆羅門身を現 じて而も説法をなす」と説 かれている。







29.一如觀音(いちにょかんのん)
 雲雷鼓掣電を現わし、雲 上蓮華座の上に、右膝をた てて坐す姿を示している。 普門品ではこの観音菩薩の 利益を「雲雷の鼓電を掣 ち、電を降らして大雨を澎 ぐも、かの観音の力を念ず れば時に応じて消散するこ とを得ん」と説いている。







30.不二觀音(ふにかんのん)
 執金剛の身を現わし、水 上に蓮葉をうかべ、両手を かさね垂れて立つ姿を示し ている。普門品ではこの観 音菩薩の利益を「応に執金 剛身を以て得度すべきもの は、即ち執金剛身を現じて 而も為に説法す」と説いて いる。執金剛神は仏法の守 護神であり、しかもその迹 身であるから、本迹不二の 義によって、不二観音と称 する。







31.持蓮觀音(じれんかんのん)
 童男童女の身を現わし、 両手に蓮花の茎を持ち、蓮 葉の上に立つ姿を示してい る。普門品ではこの観音菩 薩の利益を「応に童男童女 身を以て得度すべき者は、 即ち童男童女身を現じて、 而も為に説法す」と説いて いる。







32.灑水觀音(しゃすいかんのん)
 若為大水の身を現し、右 手に散杖、左手に灑水器を 持ち起立する姿を示してい る。普門品ではこの観音菩 薩の利益を「若し大水のた めに漂わされんに、その名 号を称すれば、即ち浅処を 得ん」と説いている。







33.楊柳觀音(ようりゅうかんのん)
 右手に柳枝を持ち左手は 掌を開いて仰向けて胸にあ てる姿を示している。薬王 観音ともいう。楊柳がこの 観音菩薩の三昧耶形である が故に、楊柳観音と称され る。通常はこの尊が第一番 に来るのだが、當院の場合 は最終の三十三番に配さ れ、二番以下が一番という 風に一つずつスライドした 形となっている。







トップへ
トップへ
戻る
戻る