LS-CC松葉杖訓練法とは?
 ハビリテーション中の運動療法中の一手技です。

 LS-CC松葉杖訓練法とは、下記の道具を使用するためにこのような命名となったのです。


 LSとは、Long leg Standing stabilizerの略であって、スタビライザとも呼びます。

 LSを使って立つことによって、体幹の抗重力筋の強化、股関節周辺筋の強化、立位バランスの獲得、膝・足部の矯正などが容易に行えます。

 LSの構造は、下部の安定板の上に長下肢装具が固定されています。


   CCとは、Crawling Carの略であってクローラーとも呼びます。
 CCによって、上肢と上肢帯の筋力強化、体幹筋の強化、上肢の粗大運動の練習を行います。
 CCの高さは、使用する子どもに合わせます。子どもがCCに乗って肩が水平よりやや高い程度とします。


 松葉杖を使って、手足の交互運動の獲得を図ったり、杖歩行から独歩へと導きます。

 松葉杖の長さは、一般に使用する長さよりも長くします。
 上記に記した3種の道具を積極的かつ多目的に使用することが特徴です。
 上記の道具以外でも類似した物を使用します。


 Aフレームと呼び、LSの替わりに使用します。
 股関節が形成不全で亜脱臼である時、そして股関節の関節可動域には制限が無ければ使用に適しています。
 LSの様に下に板が着いていないのは、股関節を開いて立つためです。

 3種の道具を使用して、その運動機能の発達を数値で表し、目標と進歩の状況をよりわかりやすくしています。
※ これらの道具で運動機能の改善を図るだけでなく、運動機能の進歩を維持するために、全身の関節可動域確保を目的に関節のストレッチを重視しています。
 関節のストレッチについては、下記の著書を参考にしていただけると幸いです。
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 立つ・歩くことを考えた 脳性まひ児のリハビリテーション
  − 運動機能獲得へのアプローチ −
 編著:坂根 清三郎; 編著:湯澤 廣美; 編著:山本 智子; B5・184ページ
 発行年月:2017年11月;へるす出版
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 LS訓練の評価と内容
 LS訓練では、LSを使って股関節周辺筋・体幹筋の筋力強化・バランス訓練を行います。
 LSの使い方とその程度によって、下記の表のように5段階に分けます。
 LS1度の段階では、子どもの前に適当な高さのテーブルを置いて行います。最初は怖がったりすることが多いが、徐々に時間を延ばしていきたいです。机に手をつかせたり、腹部で寄りかからせたりしながら、机の上に置いた玩具で遊ばせたり、本を見せるなどして、立位に慣れさせることから始めます。
 テーブルから少しでも離れられるようになったら、介助して浅い股関節屈曲、伸展をさせたいです。慣れてきたら、深い屈曲、伸展に移行します。
 子ども一人で立位保持ができるようになれば、指導者が安定板を支えてLSを前後左右に傾けて体幹の立ち直り反応の誘発をはかります。目標はLS3度で、そのためにLSでの立位時間を1日30〜40分はとらせたいです(状況に応じて考慮する)。
LS1度
 LSを装着しても股関節から屈曲してしまい、立っていることができません。
● 筋力が弱く、立っていることができないので、前方に台やテーブルを置き、倒れることへの恐怖感を取り除き、立つことに慣れるよう配慮します。
● 介助者は背後に立ち、両肩や胸部を支えて介助しながらゆっくりと股関節での屈伸(屈曲・伸展)を行います。浅い屈伸から始めるなどの配慮が必要な子どももいます。
● 股関節周辺筋の筋力をつけることによって、坐位の安定やその後の運動発達の基礎づくりができるので、毎日取り組ませることが望ましいです。

※ この段階では、床の上での持ち込み坐位の練習と並行して行います。

LS2度
 LSを装着し、一人で10分以上立っていることが可能。しかし、股関節から屈曲してしまうと起き上がってくることができません。
● LS1度と同様の訓練を行います。
● 子どもの股関節屈曲時の恐怖感は、個々の筋力の状態によって異なるので、それぞれに配慮が必要です。介助での浅い屈曲や低い台を置いて手を着けるようにするなどの工夫をすると良いです。
● 立つことができるようになっても、股関節から屈曲することをいやがる子どももいます。立つ指導と屈伸の指導は分けて考えるとよいのでは…。

※ この段階では、持ち込み坐位が可能となり、坐位が安定してきます。

LS3度
 LS2度の条件を満たしたうえで、屈伸が30回以上可能。
● LSの安定板を持ち、前後左右に傾けるバランス訓練を開始する。
● 屈伸回数を増やすことが目標になるが、ひたすらに屈伸運動だけを行わせるより、ゲーム的な要素や遊びを取り入れ、子どもが意欲的に取り組めるようにする。運動会で行う玉入れの布玉などつかみやすいボールを拾って(屈曲)、起き上がり(伸展)、前方へ投げるなどの遊びを工夫する。

※ 松葉進度3であれば、自力坐位が可能となる時期です。
※ 松葉進度3、CC3度であれば、四つ這いが可能になる時期です。

LS4度
 LS3度の条件を満たしたうえで、LSを装着したまま床に座らせても座っていられます。
● 杖歩行や独歩に必要な股関節周辺筋や体幹筋の筋力とバランス感覚を獲得したと考えてよいです。

※ CC訓練や松葉杖訓練を重点的に行う。
LS5度
 LS4度の条件を満たしたうえで、LSを装着したまま寝返りができる。
● LSで行う股関節周辺筋や体幹筋の強化・バランス訓練は終了してよい。
● LSを装着したまま寝返りができる子どもがいたのでLS5度を設定したが、ここに到達しなくてもかまわない。

※ CC訓練や松葉杖訓練を重点的に行う。


 CC訓練の評価と内容
 CCによって、上肢と上肢帯の筋力強化・バランス・粗大運動を促します。用意する物としてCCのほかに、CCに乗せたときにCCから滑り落ちないように固定するベルトや紐などが必要です。
 CCの評価は、使い方と子どもの運動機能の程度によって、下記の表のように5段階に分けています。滑り落ちないように固定している紐などを使用していても、評価の基準は変わりません。
 CC訓練を行うには、腕立て位ができなくてはならないため、十分練習する必要がああります。少しでも保持可能となれば、介助をしながら、すぐにCC訓練を始めたいです。
 適当な(使いやすい)高さのCCを選び、上肢筋力の弱い子どもの場合、下腹部をのせ軽く殿部を押さえてCCを前方へゆっくりと進めます。最初のころは片手支持に不慣れなため、すぐに肘が屈曲してしまいます。しかし、時間はかかるが徐々に肘が屈曲しないで(完全伸展はできないまでも)保持できるようになり、交互性も出てくるのがふつうです。
 目標は、CC3〜4度です。
CC1度
 CCに腹部か胸部をのせるが、上肢で支えることができません。
● 上肢の支持性の向上。
● CCから滑り落ちるときには、紐などで固定します。
● 支えることが困難である場合、肘当てを用いることもあります。
● 動くことができない場合、CCごと押してゆっくりと進ませ、動くことを体感させます。
● 支えながら、上肢を動かすことを覚えさせます。

※ この状態が長期にわたるケースは、かなり運動障害が重いと思われます。
※ 繰り返し、根気強く練習します。
※ 片まひや上肢のみに障害のある子どもにはCC訓練ができません。

CC2度
 CCに腹部をのせると、上肢で支えることは可能だが、動くことができません。
● ゆっくりとCCを押して、上肢を交互に動かすことを覚えさせます。
● 上肢の筋力強化と粗大運動の獲得。

※ 松葉進度3となっていれば、自力坐位がまもなく可能となります。

CC3度
 CCに腹部をのせると、自由に動くことができます。
● 子ども自身が楽に動けることで、意欲的に取り組み、運動量が増えるために、体力がつきます。
● 自ら動くことの楽しさを覚えるのによい段階です。

※ CCに乗って動くことを好むようになります。
※ 松葉進度3、LS2度・3度であれば、自力坐位が可能となる時期です。
※ LS3度であれば、松葉杖訓練も上達する時期です。
※ 松葉進度3であれば、四つ這いを始める時期です。
CC4度
 CCに大腿部をのせて、自由に動くことができます。
● 上肢や上肢帯の強化、体幹バランスの向上が図られます。
● どのような移動方法よりも、CCでの移動を好みます。

※ CC・LS・松葉杖の評価で、一番低い課題を重点的に指導します。

CC5度
 CCに下腿部をのせて、自由に動くことができます。
● 下腿から下部を除き、身体全体の強化とバランス訓練は終了してよい。
● 四つ這いや肘這いが主な移動方法である子どもにとって、CCでの移動方法を覚えることは、施設や学校の廊下・広い部屋での移動能力が向上することになります。立位移動(杖歩行など)が十分でない場合は積極的に指導し、CCでの移動を獲得させたいです。

※ CC以外での訓練に力を入れます。

 松葉杖訓練の評価と内容
 松葉杖を使い、上下肢の交互性、下肢筋の強化、立位バランス・歩行バランスの練習を行います。用意するものは、松葉杖、CC、たすき用の紐、手の握りが弱い場合は手の固定用の紐です。介助者用のCCは対象児の使用しているものを用います。
 松葉杖の使い方とその程度によって、下記の表のように5段階に分けます。ただし、たすき紐や手の固定用の紐を使用していても、評価は変わりません。
進度1
 松葉杖を持たせて立たせても、立っていることができません。
● 杖を握っていられないときには、紐を用いて固定します。
● 腋下受けが、腋下から離れないようにするため、たすき紐をかけます。
● 子どもの前方から杖と足を介助して、杖歩行を行うように介助します。

※ 下肢の支持性を高めるために行います。
※ 上下肢を交互に動かす練習となっています。

進度2
 松葉杖を持たせると数分間の立位保持は可能だが、歩行では杖も足も出せません。
● 下肢の支持性を高めるとともに、上下肢の交互性を学ばせます。

※ 介助の仕方によっては、訓練している子どもが自分で松葉杖を操作して歩いているように見えるが、実際には、介助がなくては歩行の真似事は不可能です。
※ 転倒など、恐怖感を抱かないように注意します。
進度3
 松葉杖を持たせると、杖と足を動かして杖歩行に近い動きをするが、杖や足の出る位置が一定でないために、それぞれの着地を誘導しますす。
● 上下肢の交互性と立位バランス・歩行バランスを習得させます。

※ 自力坐位や四つ這いができなかった子どもでは、この時期にできるようになります。
※ 松葉杖訓練と松葉杖歩行訓練との分岐点の段階です。
進度4
 松葉杖を持たせて立たせ、衣服やたすき紐の一部を持っているだけで、松葉杖を操作して一人で歩くことができます。
● この時期、子どもの多くは、倒れることや歩行バランスが崩れる恐さを体験することになります。
● 訓練によって、杖歩行から独歩へと進んでいくよう指導する時期です。

※ 伝い歩きが始まったと理解してよい段階です。
※ 一般的な伝い歩きは、つかまる物が固定されており、その物の周囲やその物のある場所のみで歩くことになるが、杖を使うことにより、どこでも練習することが可能となり、応用範囲が広がります。

進度5
 松葉杖を持たせ、近くで見守ったり声かけをするだけで、松葉杖を操作して歩くことができます。
● 訓練によって、杖歩行での自立や独歩をねらう時期です。
● 子ども自身に少し不安がある場合、誰かが近くにいる必要があります。

※ 歩行の応用に入ります。
※ スピードや耐久性をつけます。

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 製作 LS-CC松葉杖訓練法 湯澤廣美