用語集                     




愛優妃の庭あいゆうきのにわ 天宮にある中庭の一つ。春夏秋冬四区画に整備されており、それぞれの季節に咲く花が植えられている。


アルト・カルナッスル城 魔麗の国のクワトの中心にある城。魔麗城から政庁を移した場所。実質魔麗の国の中心地。聚魔祭も毎年ここのガラス張りのドームと円形状の大広間で催されていた。現在においては正式にクワトが首都となり、魔麗国中枢の城となっている。


闇獄界あんごくかい 元は人界で排出された負の感情を浄化処理し、世界を清浄に保つための処理専門の空間だったが、神界でも負の感情が芽生えたため神界の負の感情も輸送するうちに処理量をオーバーし、現在は一方的に溜め込み、膨張する世界となっている。最高統治者は神界から解決策を捜し求めに赴いたはずの愛優妃。神界を構成する精霊達はごくわずかで主に闇の精霊しかいないため魔法は存在せず、主に人界よりも進んだ科学技術によって発展している。通貨単位はキュア。(例;高級チョコレート、一枚500キュア)。時の流れは神界と同じで、闇獄界の1年は人界の5年に相当する。


闇獄宮あんごくきゅう 闇獄界の首都ディアスにある愛優妃の居城。闇獄界の中枢。


闇獄十二獄主あんごくじゅうにごくしゅ 闇獄界の獄炎を宿す者たち。即ち、世界中から集められ十二に分けられた負の感情の特に一つについて突出した器(感情)を持ち、燃えさかる炎を自らに取り込み克して余りある者たちのこと。彼らは例外なく闇獄界の首脳クラスの地位を保証され、愛優妃の元に集って闇獄界の行方を決することが出来る。また、炎を克した者は永遠に滅びることのない肉体を手に入れることができ、死とは無縁となる。彼らの肉体が滅びるのは、唯一法王の手により発動された魔法石で炎と一体化したその魂に致命傷を与えられた時のみであり、肉体の風化、消滅とともに魂もこの世から消滅し、二度と輪生環を経て甦ることは叶わなくなる。業を背負い続けること。それが永遠の命を望む彼らに課せられた条件である。
慨嘆(ガイナ/角の生えた髑髏)、恐怖(律/蛇の尾と蝙蝠の翼を持つ獅子)、悲哀(綺瑪/蛇身の女)、憤怒(グルシェース/突進する象)、嫉妬(アケルナ/口を開けた鰐)、憎悪(ハセデ・スフィテ/多頭の犬)、欺瞞(エルメノ・ガルシェヴィチ/欠伸する猫)、猜疑(ヨジャ・ブランチカ/尾を高く掲げた蠍)、欲望(リセ・サラスティック/巣を張る蜘蛛)、傲慢(藺柳鐶/翼を広げた蝙蝠)、狡猾(ゾーゲスト/飛行する蝿)、悔恨(レリュータ/牛頭の男)。


うつろいの庭うつろいのにわ 神界に偶発的に生じる闇獄界に通じる穴。どこにできるかは知られてはいない。




界境守かいきょうもり 東西南北の楔に置かれた闇獄界から神界を守る軍人達の総称。


かげ =精霊王。法王と契約した精霊王の神界での呼び名。法王と契約した時点で精霊王の身体の時は止まる。法王の生が終わると間もなく影も死ぬことになる。守護獣は契約していないので生き残ることになる。


虚無きょむ 有極神の創造した世界の外側の部分。無。有極神によって追放された闇の精霊はこの虚無に落とされ、己を肥大化させることで闇獄界となった。泉明神如の魂の欠片が捨てられた場所でもある。


クワト 魔麗の国随一の都。魔麗の国の中でも南方に位置し、天宮と北海の産物等の公益で潤う商業都市。国の中枢もほぼ全てこの街に集められている。神代では首都ではなかったが、人代になって首都となった。


(法王と精霊王の)契約けいやく 精霊王の血を魔法石に滴らせ、法王の血を同様に魔法石に滴らせる。精霊王と法王の血を吸った魔法石は、相応の色の光を放ち、法王と影の絶対服従の関係を証する。


月宮殿げっきゅうでん 有極神の住む世界。神界、闇獄界のさらに高次元にあるが、それぞれの世界からは月として昼夜問わず眺めることができる。


血晶石けっしょうせき 法王が自らの血とそれぞれ契約した精霊王の血とを混ぜ合わせて作った玉。国政の補佐をしてくれる者に受けつがせることで、法王に何かあったときでも精霊たちの庇護を受けられるようにした。実際、法王の死後、庇護の主体となったのは守護獣たちである。大きさは少女の掌に収まるほど。半透明の球体の中に精霊王と法王の血をこめた赤い筋が幾本も縦横無尽に走っている。その中央に留め置かれるのが王の魂。各国の王と天宮王の血晶石とは性格が異なり、天宮王の血晶石は死後、その魂は血晶石の一部となり、統仲王の元へ戻る。


刻印こくいん 闇獄主が自分の力をいくらか分け与えるかわりに、身も心も忠誠を誓わせた印。従属となる者の身体に己の象徴となる紋章を刻む。刻印を刻まれた者は、常に行動を監視され、心を読まれることになる。力を利用する場合は、刻印から黒い光が放たれる。


刻生石こくしょうせき 振動することで三世界を隔てる壁を生み出す石。(時空軸の軸を生み出す)電線のコーティング部分のようなもの。時を紡ぐ記憶を保護し、収納する歴史の保管庫も兼ねる。原則として常に現在に存在していなければ、一瞬先の空間を創造できず、紡ぎだされた記憶、もとい、時間は収納されないため時空軸の中で混乱することとなる。その振動は時の魔法石を以てしか制御、及び所持することはできない。もし魔法石なく所持した場合、精神と身体ともに時の微細な振動に削り取られることとなる。


獄炎の間ごくえんのま 闇獄界の中枢ディアスの愛優妃の居城にある、負の感情を閉じ込める獄炎を安置した部屋。入り口は厳重に守られており、獄主か挑戦者でなければ入ることはできない。奥は全部で十二の個室に分かれ、それぞれの炎の部屋となっている。炎がうつわに取り込まれた後はそこには獄炎が置かれていた皿=玉座のみが残る。
部屋を埋める空気は闇獄界とは思えないほど厳粛で清浄。しかし、それは器に炎が納められた後だからこそである。
個室といっても大きさは小さな体育館ほど。白を基調とした中世的な様式が基本で、華やかで明るい装飾が壁や柱には施されている。その部屋の作りは十二の小室、全て同じである。





慈愛院じあいいん 身寄りのない子供からお年寄りまでが暮らしている神界の施設。


時空軸じくうじく 空間と空間、時間と時間を接着する亜空間。刻生石の振動によって螺旋状に絡まりあいながら生み出されていく三界の空間内に存在するものの記憶を時間ごとに束ね、積み上げていく記憶の倉庫で、この軸を中心に人界と神界、そして闇獄界は一つに束ねられている。中を行き来できるのは、時を司る魔法石を持つ聖と精霊王の澍煒、守護獣の飛嵐、そして天宮とディアスとにそれぞれ専用の扉を持つ統仲王と愛優妃のみ。普通の人間が加護を得ずに入りこめば、その身は時の流れに逆らえずに塵となる。
 時を形成するのは魂に刻まれた人々の記憶。時の欠片は人一人分の人生。時空軸を電線にたとえるなら、導線は魂の軌跡。ビニールの絶縁体が各世界の隔たりであり、この外郭を伸ばしていくのが刻生石の振動。導線の中を流れる電流が時の精霊といえる。


時空波じくうは 時空軸の中をよぎる風。粒子の塊。歪み。


時空嵐じくうらん 時空波が吹き荒んでいる状態。時空軸外部からの圧力により起こる。


四楔宮しせつぐう 神界の東西南北の端を闇獄界から守る為に置かれた国のこと。北の羅流伽、南の奈月、西の周方、東の志賀宮がある。それぞれ皇が治め、皇統に連なる血筋の者は不老不死ではないが人よりも寿命が長い。特に、北の羅流伽は統仲王と愛優妃が初めに造った人が皇と皇妃であり、最も神に近い特性を持っており、未だ初代が変わらぬ若さで国を治めている。羅流伽、奈月、周方、志賀宮の順に神から人に近い特性を持っている。


守護獣しゅごじゅう 精霊王を補佐する者。本来は十体いる。実体はそれぞれ異なる獣型だが、時と場合に応じて人間の姿に変身できる。法王の死後、影は法王の魂に付き添い、守護獣は法王の意を受けて各国の守護にあたっている。しかし、法王とのつながりを保証するような儀式、及び所有物などはなく、精霊王を守ることが必然法王を守護することにもなるという極端な発想も許される。
 本来は精霊獣と呼ばれているもの。


守備隊・守備軍しゅびたい・しゅびぐん 各都市に駐留している国軍。各楔に置かれている将軍が率いる大規模な軍が守備軍。


瘴気しょうき 闇獄界に漂う負の感情が具現化したもの。時と場合によっては人界、神界にも現れることがある。0にて樒はその正体を正負どちらにも決しかねる心の迷いと捉える。


神界しんかい 統仲王の治める世界。当初は有極神によって統仲王と愛優妃のためだけに創造された世界だった。科学が発達するかわりに精霊を使役することによって生活の利便性を図っている。勿論、神界人の中には精霊の使役の才のない者もいる。使役対象は主に身近な低級精霊が中心。神界の1年は人界の5年。お金の単位は時代によって異なる。(鉱土法王とサヨリが出会った頃は盃一杯分を表すスートが用いられていた)金一タムの相場は五万スート。


人界じんかい 樒たちの生まれた世界。人間が暮らす。統仲王と愛優妃の二人によって造られたが、二人は神ではなかったため造られた人間は完璧ではなく、大量の負の感情を生み出し、それらは闇獄界の処理機能を麻痺させ膨張させるのみならず、神界にも影響を与えている。


精霊王せいれいおう 世界には世界を構成する十の元素がある。即ち、時、命、光、闇、雷、土、熱、風、炎、水。これらに宿るおのおのの精霊たちを司るものが精霊王。彼らは守護獣の補佐を受けながら精霊たちを支配し、世界の規律を守っている。彼ら精霊王を統括する者がさらに上にいる。精霊王、守護獣など力が強いものには魂が宿っているが、世界に宿り使役対象となる精霊には魂はなく核である霊魄が宿っている。契約し〈影〉になった時点で身体の時は止まり、契約者が死ぬと〈影〉も死亡する。


精霊界せいれいかい 精霊たちが生まれ集う世界。風光明媚な世界で、月宮殿の庭でもある。基本的に神界、人界、闇獄界で用いていた肉体は持ち込むことが出来ない。肉体といえる器を持ちえるのはこの世界では有極神と蘇静神如のみである。そのほかのものはたとえ精霊であっても魂のみでの存在となる。よってそこにいる時の姿が本当の正体であり、一方で見る者によってもその姿はその者にとっての本物となる。


施療院せりょういん 病気や怪我した人々を治療するための神界の施設。


〈外〉そと 有極神の支配する世界の中でも、月宮殿、神界、闇獄界、人界のどの空間にも属さない空間。有と無の狭間にあるといっても過言ではない部分。しかし、無ではない。




 連綿と受け継がれる記憶の器。


ディアス 闇獄界の首都。幾層もの障壁に覆われ、神界、人界のみならず闇獄界の魔物多発地帯とも一線を画す科学都市。


天宮てんきゅう 統仲王の居城であり、神界の首都。神界の中央に位置し、気候は温暖湿潤。四季があり、各国を結ぶ交易の要衝でもある。


伝書鳥でんしょちょう 法王の書簡を届ける鳥。時の精霊が宿っている。国ごとに鳥の色は決まっており、各城ごとに鳥舎がある。(例:聖刻の国は白)一般人の手紙は郵便局ごとに集配され、時の精霊使いによって運ばれる。


時の木、時の実ときのき、ときのみ 時の木は聖刻城の奥庭に生えている木。時期ごとに効用が変わる。時戻しの実(黄緑)、時止めの実(黄色)、時解しの実(赤)、時進みの実(茶色)。時止めの実は四楔将軍のみが食することを許されており、これにより肉体年齢を留めることが出来るが、人への効力は一千年。将軍職にある者は一千年といわず高い頻度で食することにより年齢を保つ。時戻しの実、時進みの実は何人たりとも食することは許されていない。有極神が神界を創った時に植えられた木。剪定等の管理は全て聖刻法王が担い、現在は聖刻王の職務。





似影にせかげ 〈欺瞞〉の持つ聚映に映されて鏡の中に閉じ込められた人間の代わりに現実の世界に出現するドッペルゲンガー。




美術準備室びじゅつじゅんびしつ 岩城学園高等部の美術準備室をさす。2-A担任の片山が主に棲息している。中には片山が作りかけた塑像や彫刻、油絵が雑多に並んでいる。友達は人体模型のきよし君。唯一、油絵の母子像がカバーをかけて大切に保管されている。


法王ほうおう 統仲王と愛優妃の子供であり、神界各国の王。永遠の命を持ち、100年で一歳ずつ年を取るが、15歳で成神した後は自らの好きな年齢で姿を固定することができる。




魔法石まほうせき 精霊王の魂と法王の魂を封じた石。互いの血を一滴ずつ石に混ぜ合わせることにより契約が成立し、法王は精霊王の力を自由に行使することが可能となる。
本性は契約の証ではなく、有極神を封印する結界を維持し続けるために精霊王に法王の生命力を送るハブである。有極神の結界には法王の持つ魔法石とは正反対の性質を持つ魔法石が頂点の要となっており、法王の持つ魔法石と結界の魔法石とを触れ合わせれば魔法石は壊れ、全て壊すことが出来れば結界は解け、有極神は身体を取り戻すことが出来る。
緑、青、銀、赤、紫、金、黄、白、黒、透明


魔物まもの 闇獄界に生息する魂を持たず核のみで動く生物。低級のものは貪欲に負の感情を吸収しようと他の仲間や生き物をも襲う。上級になるにつれて貪欲さのみならず知能ももつ。
多くは負の感情に触れた愛優妃の涙から生まれたものといわれる。




予言書よげんしょ 創世神である有極神が未来を綴った書。大百科ほどの大きさで、厚さは掌を広げた幅ほど。主に神界と人界の大まかな行く末と、統仲王、愛優妃に関連する人々の詳細な未来が記されている。素材は物質ではなく触れて実際にページをめくることのできる映像と捉えるとよい。所持者は、統仲王、愛優妃、有極神の三人。なお、統仲王は転生後は記憶から具現化して予言書を閲覧している。




輪生環りんせいかん 死んで身体うつわを離れた魂が転生のために通る場所。育命の国にあり、どのような魂も一度浄化された後、次の生を受ける世界へと導かれ、新たな身体に宿る。一説によるとこの浄化の際に出た澱はそのまま闇獄界へと流されているらしい。


霊魄れいはく 精霊の核となるもの。