むかし玄同先生という医者さんがいました。
ある夜玄同先生を呼ぶ声がするので外に出てみるとそこには
りっぱな身なりをした人がいて
「お屋敷の奥様が難産に苦しんでいるので直ぐ来てほしい」
との事でした。
玄同先生は何人もの侍従と立派な迎えの籠にびっくりしながらも
籠に乗り込みました。籠はどんどん山の中に向かい
「こんなところにこんな立派なお屋敷があったろうか?」
と思いながらもいそいで産室に向かいました。
難産のはずです。奥様からは一人ではなくたくさんの赤ちゃんが
産まれたのです。奥様も赤ちゃんもみな無事でした。
屋敷中大喜びで玄同先生をねぎらい、お酒でもてなし
お礼にたくさんのお金もくれました
帰りも立派な籠で送られ、疲れながらも上機嫌でその夜は眠りに
つきました。
翌朝めざめて、いただいた風呂敷包みを開けてみるとお金だった
はずの中身は木の葉に変わっていました。
昨夜の道をたどってみても、そんなお屋敷はどこにもなく
きつねの住む山があるだけでした。