不定期連載児童小説
「ユリカの遠い旅」
-1- 宇宙空港 - 2
「君はどこまで?」
「えっ」
かんがえごとをしていたユリカは突然の声にびっくりしてしまいました。
気がつくと目の前に同じくらいの年の少年が立っています。
「あれに乗るんでしょ。」
少年は外に見える宇宙船を指さします。
「そうよ」
「僕もあれに乗るんだ。君はどこまで?」
もう一度少年は聞きました。
「トト星・・」
トト星というのはユリカのお父さんがいる星です。
何だか淋しくなってユリカは泣きそうになりました。
「どうしたの?」
少年は心配そうにユリカの顔をのぞきこみます。
「なんでもない。」
今あったばかりの少年に事情を知られたくはありません。
ユリカはぶっきらぼうに答えました。
「僕は一つ手前のゾバに行くんだ。」
「ゾバ・・・」
ゾバというのは沢山の人が働きに出る大きくて有名な星です。
「働きに行くの?」
思わず尋ねました。
「いいや。お父さんに会いに行くんだ。」
「お父さん、働きにいってるの?」
「そう。もう3年にもなるんだ。」
「帰ってこないの?」
「お金は送ってくれるんだけど、手紙も来なくてね。お母さんも病気になったし、ぼくがようすをみにいくんだ」
ユリカはこの少年が自分と同じような事情で旅立とうとしていることが分かって少し安心しました。
「名前は?」ユリカが聞きます。
「とおる」少年はうれしそうに答えました。
「あたしはユリカ」ユリカも少しうれしくなって自己紹介しました。
「ゾバまでだけど一緒に行こうか」
とおるが言いました。
「いいの?」
「どうせ同じ船に乗るんだもの。もちろんだよ」
「うん」
明るいとおるの返事にゆりかはすっかり安心して言いました。
もうすぐチケットの受け付けが始まります。
<-2-ゾバへに続く>