「合コン」

喫茶店に女が入って来て窓際の吉田の前で止まる。
女「吉田さん?遅くなっちゃってごめんなさい!」
吉田「(1時間も待たせるか、普通?)僕もたった今来たところです!」
女「(向かい側のコンビニから見てたよ)仕事で出られなくて!」
 バイトのウェイトレスが来てコップを置く。
バイト「ご注文はお決まりですか?」
女「えーと!コーヒーでいいわ!」
バイト「(でいいわ!ですか)はい、コーヒーですね!(オット!笑顔笑顔)」
女「それで話って何ですか?」
吉田「武本のことなんだけど」
女「(武本って合コンで一番はしゃいでた奴だ)えっ?武本さんってどの人でしたっけ?」
吉田「(女ってこういう惚け方するんだ!)僕の右に座ってた浅黒い奴!単刀直入に言ってあいつ君と付き合いたいらしんで、君の気持ちを聞きたい訳」
女「(仲立ちしようって気?と言うことは私には気がない!)・・・・」
吉田「(何だ!この妙な間は?)話が唐突過ぎたかな?」
女「(だったら言うなよ!)武本さんだっけ?結構仕切って合コン馴れしてるって感じだったわね。彼に頼まれたんですか?」
吉田「(そう!そしていつも尻拭いは俺の役)いや、そういう訳じゃないけど?」
女「(やたらしゃべる奴ほど信用できん)彼 話は面白いけど少し浮いてない?どうして自分で電話して来ないんですか?」
吉田「君を紹介した友達に悪いって言うか、一応気配りしてる訳」
女「(気配りじゃなく気の回し過ぎ!)彼、全然タイプじゃないから!それより吉田さんのお仕事ITベンチャー企業だって言っ てたでしょう?世の中狭いわね!私の兄もIT関連!コモンエンタープライズを立ち上げたの。聞いたらアクセス・エイトの吉田さんなら良く知ってるって言うじゃない。吉田さんの会社アクセス・エイトですよね?
吉田「(やばい!最悪!それは俺の従兄弟!)・・・・」
女「(何?このしらけた間は?兄の会社なんて持ち出して自慢気に見えたかな?)・・・・」
吉田「(この間が耐えられん)・・・」
バイトがコーヒーを持ってくる。
バイト「お待たせしました」
吉田「(どうせ、合コン相手だ!笑い飛ばしちゃえ)ハッハハ悪い事は出来ないね!合コン用にちょっと経歴アレンジしただけ。本当はフリーターしながらバンドやってんだ!」
女「武本さんも?」
吉田「うんバンド仲間!そっちが大手銀行だって言うからバランス取ろうってことで」
女「大手銀行でもただの派遣!」
吉田「そろそろスタジオに行かなきゃ!」
女「見に行ってもいい?」
吉田「(倉庫に連れて行く訳には!)参ったな!」
女「ひょっとしてバンドも嘘?」
吉田「マジで嘘だと思う?」
女「(本当かも)やっぱり嘘なんだ」
吉田「そう!嘘です」
女「(もう最低!来なきゃよかったわ!)あたし約束があるからこれで!じゃ」
 女テーブルの勘定書を取って席を立つ。
吉田「あー、それは置いといてよ。こちらが呼び出したんだから」
女「(そりゃそうだ)あら!悪いわね、じゃ、ご馳走様!」
 女、出て行き、バイトのウェイトレスが近づく。
バイト「お兄ちゃんのドジ!脈があったのに!どうしてバンドのこと嘘にしちゃったの?」
吉田「やっぱ合コンは軽い嘘で通した方がいい!」
バイト「変だよ、それ!何の為の合コン?」
吉田「仮面かぶってその刹那を愉しむためさ!ガキには分からないよ!」
バイト「だから彼女が出来ないんだよ!」
 吉田の携帯電話が鳴る。
吉田 「おう!武本からだ!もしもし?うん会ったよ!彼女はヤバイよ! 兄貴がアクセス・エイト、
     つまり悪を制す「栄統会」の幹部とか言ってた。
     えっ!合コン?一人足りないんだな?分った! 誰か連れて行くよ!」
       FIN