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あれからどのくらい月日が経っただろうか。 プレーヤーからディスクを取出し、 スィツチの摘みをラジオに切替えた。 あの時それは始まっていた。ニュースが流れている。米軍のイラク侵攻は昨日のことだったらしい。 あの頃、私は仕事について迷い悩んでいた。それが原因で精神的にも落込んでいた。そんな時、私の心を癒してくれる歌。 それを聴いていたのだ。 ビリー・ホリデー 。 そう、彼女の歌を聴いていた。決して明るい歌ではない。 |
落込んだ気持ちを癒し励ましてくれるのは明るい歌ではない。落込んだ心で明るく愉しそうな曲を聴いても、益々暗い気持ちになるだけなのである。 あの時、聴いていたディスクはレディ・デイといわれていた彼女の歌声を、死の前年’58年にモンタレーで収録したものだ。当時の彼女は麻薬への誘惑を断ち切るため酒に溺れた日々を過ごしていたという。歌の合い間に聞く司会者との受け答えや、聴衆に話しかける際の舌の縺れたような擦れ声は少し不気味な感じさえする。飲酒が原因の肝硬変などで彼女の体調は最悪だったのではないだろうか。 しかし、いったん歌いだした彼女の声の何と可愛いことだろう。歌の途中で呟くようになってしまう箇所もあり、体力の衰えと体調の悪さを感じるが、それでも彼女の歌声は胸をうつ深い情感をたたえているのである。なんと云うことだろうか ・・・。 歌の途中で何度か上空からゴーという爆音。モンタレー・エアポートめざして低空で飛来する飛行機が彼女の歌声を遮ろうとする。そして、爆音が去ると共によみがえる彼女の歌声。 |
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心の疲れたとき聴く、ディスクのひとつ。 ビリーホリディのアルバム。 私の心の底の澱を洗い流し、消し去ってくれるような彼女の歌声。 心持の時など、 彼女の歌声を 聴くことは、あまりないような気がする。 |
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ビリー・ホリデー の略歴 Billie Holiday 本名 エリアノーラ・ホリデー 愛称 レディ・デイ 1915年 ； 17歳の父と19歳の母の間にボルティモアで生まれる。 ； 14歳で娼婦になり売春容疑で逮捕。 ； 20年代末、ニューヨークはハーレムのクラブで歌い始める。 ； 18歳でベニー・グッドマン楽団と初録音。 ； その後、カウント・ベーシー楽団、アーティー・ショー楽団などの専属歌手から ソロ歌手となり、レスター・ヤング、テディ・ウィルソンらと共演。 この間、麻薬不法所持の容疑でたびたび逮捕される。 1959年 ； 麻薬不法所持の容疑で逮捕裁判中、ニューヨークの病院で死去。（享年44歳） |
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