山桃(ヤマモモ)
あまりの暑さに、木陰を選んで歩いていた時のこと。「ズル・・」 とも 「グチャ・・」 とも、何ともいえない感覚を足裏に感じて気がついた。
アァ・・ やってしまった。見上げれば頭上には、たわわに実をつけた山桃の枝が広がっていた。
枝から落ちた山桃の実。その散り敷いた、果実の絨毯の真ん中に踏み入ってしまったのだ。
小道の脇で靴底を拭ったら、甘酸っぱい香りが鼻腔をくすぐった。
「 山桃の日蔭と知らで通りけり 」 前田普羅