紫苑(シオン)


 九月も最後の日曜日となった。陽は朝から陰ったままで肌寒さを感ずるような一日だった。
 久しぶりに竹林の中を通る坂道を登り、ふじやま公園に行ってみた。そろそろ、秋草の華やぎも観られる季節である。
 崖際に彼岸花咲き乱れる脇を通り、長屋門を潜りぬけて古民家の中庭に入った。そして右手の花壇に視線を投げれば薄紫の紫苑の花。

 丈高き一叢の花の揺らぎに、本格的な秋の訪れを感ずる午後三時。


  「 人々に 更に 紫苑に 名残あり 」       高浜虚子



    折々の花