折々の花

千両(センリョウ)

 早いものである。既に年も明け何日か経った。今年も初詣に行かず、屠蘇を口にすることも無く正月が過ぎたが、はたしてどんな一年になるのだろうか。
 松が外されてから寒い日が続き、外気はカラカラに乾燥した状態のままだ。
 久しぶりに、萎縮した体のストレッチをしようと、気温の上がった時間を見計らって出掛けてみる。
 バス通りを挟み反対側にある丘陵上の住宅街を歩いて行く。昼近くとは言え、家並みの間隙から吹いてくる風は直ぐに頬を冷たくした。

 ポケットからティッシュを取出そうとしたら、風に煽られ飛ばされた。ティッシュの行方を目で追ったその先、植込みの中に赤い木の実が光って見えた。 

  「 けふ晴れてけふの奢りや実千両 」      岩井英雅



    折々の花