郁子(ムベ)
山の上に在る団地から長い坂道を下りて行くと、大通りに出る手前で川を渡る。橋の袂で右折し川沿いを歩いて行く。
川沿いの、この道は歩道を分ける丈の低いフェンスが設けてあり、毎年四月下旬ごろには、フェンスに絡んだ蔓に白い花が咲いている。
花の内側が僅かに紅紫色を帯びたこの花が、郁子(ムベ)の花であることを知ったのは、10年ほど前のことだった。
「 郁子の花山上に都市延びてゆく 」 篠田悦子