稲(イネ)
稲の穂波が揺れる。ここが横浜市内であることなど、考えられないような眺めだ。
陽射しは、まだ夏の余韻を残しているものの、田圃に吹きわたる風は既に秋の訪れを告げている。
しかし、子供のころ田舎で観た、記憶の中の田圃の風景とは何かが違う。
それは穂波を飛び渡るイナゴの群れがいないだけではないだろう。
たぶん、心の中にしまっておいた何かが、すでに変質してしまったのだろう。
「 稲の香に 溺れたき眼を 瞑(つむ)るべし 」 福永耕二