春日神社(町田市大蔵)

美しく毛の流れる狛犬〜奉納者・駒治郎とは?

町田市大蔵町の春日神社。
ここには町田市内ではそう多くない江戸期の狛犬が2対います。
拝殿前には随神像があり、狛犬はその石段の下にいます。

出来の良い江戸狛犬で、
阿吽とも尾とたてがみの流れがおしゃれな感じです。
火災にあったのか、吽像は一部黒くなり、阿像は石質が変わってしまっています。
刻まれた銘は下記。
 

建立年

 安政6年未年11月吉日(1859)

奉 納

 當所 市川仙蔵 二男
  木挽町 佐賀屋 駒治郎
  木挽町 石問屋 駒治郎


社殿の裏へ回ると、小さな末社に挟まれたところにもう1対の狛犬がいます。

阿像はあごが欠けていて、先代的扱いではありますが…
表の狛犬に比べると、ひとまわり小さいとは言え、これもなかなかの作。
表情や全体の感じは表の狛犬と似たものがあります。
しかし、横から後ろへと回ると、背中へ流れる尾とたてがみが素晴らしい!
左右異なった表現で美しく流れています。
そして銘はこう刻まれています。
 

建立年
 安政3丙辰年8月吉日(1856)
奉 納
 當所 市川仙蔵 二男
  木挽町 佐賀屋 駒次郎
  木挽町 石問屋 駒次郎

つまり、表の狛犬は裏の狛犬のわずか3年後に奉納されたもの。
しかも、奉納者は全く同じ。
ちなみに拝殿前の随神像も同様で、表の狛犬の4年後の奉納です。
 

建立年
 文久3亥年3月吉日(1863)
奉 納
 臺村 市川仙蔵 次男
  江戸 佐賀屋 駒次郎
  江戸 石問屋 駒次郎

奉納者を比べてみると、気になりませんか?
同じような違うような、一人のような二人のような…
で、少し調べてみました
すると、「
町田市大蔵町関山には、古来この地を拓き、居を構えた市川家があり、その市川家の出身で、幕末の江戸木挽町において佐賀屋という石問屋(江戸諸問屋名前帳に名を連ねているとのこと)を営み、栄えた市川駒次郎明正なる人物がいた」ことが分かりました。
つまり、佐賀屋=石問屋=駒治郎=駒次郎=二男=次男 であり、この地の出身者 である
市川駒次郎明正が奉納したものと思われます。
石工の銘はありませんが、江戸で名のある石問屋ですから、この狛犬たちは腕の良い石工に彫らせたのでしょう。

奉納当時、この狛犬と随神がどのような位置関係で置かれていたのか、興味のある所ですが何の手掛かりもないのが残念です。
当地の有力者・市川仙蔵の名を出して、その二男であることをアピールし、江戸木挽町で石問屋として名を為したと誇っている…3〜4年の間隔で3度の奉納…故郷に錦を飾ったと言うことなのでしょうね。

                                東京都町田市大蔵町2,822)