狛犬見て描き(1)〜(6)
絵・文 吉野 忠夫

 狛犬見て描き(1)

 妻沼町聖天山歓喜院

平家物語や源平盛衰記にも登場し、出陣する際に老齢を隠すため、墨で白髪を染めたといわれる
斎藤別当実盛。
その実盛創建と伝えられるのが日本三大聖天の一つ、妻沼聖天。
この寺院は神仏混淆の影が色濃く残り三対の狛犬を見る事ができる。
虎のようなシマ模様のある狛犬〔イラスト〕は、慶応4年2月、越後伊×子の銘があり、国の重文である聖天宮の彫刻に伍している。

1999年10号より

 狛犬見て描き(2)

 飛騨の工の技 高山市・黄金神社

10月10日、飛騨の高山では秋の高山祭りが行われていた。黄金神社にも祭りのざわめきが伝わってくる。
社前には昭和11年8月建立の身の丈86?の堂々たる狛犬の姿が。
だが、たてがみを見るとナンカ変だ。
これはタダの直線的なヒダではないか。
だが巧いヒダだ。ヒダがたくみだ。
アッ!!それでヒダのタクミか。

<石工・高忠>

1999年11号より

狛犬見て描き(3)

 小さな体が大きく見える 幸手市・天神神社

桜で名高い幸手の権現堂堤へ行く途中にある天神神社の狛犬。
胸を張ったその姿は堂々としているが、身の丈はわずか30cm。
しかし志望校への入学を果たした人には大きく見えることでしょう。

<昭和11年建立・石工不明>

1999年12号より

 狛犬見て描き(4)

 日中友好を願って 太田市春日神社

富士重工の企業城下町、太田市の春日神社にある大陸風の狛犬。
奉納者は戦前の中島飛行機で勤労学生だった元台北市長の高玉樹氏。
当時一段低く見られがちだった中国人の氏を、「シナ人」呼ばわりすることなく暖かく見守り、援助した市民への恩返しという。

1999年13号より

 狛犬見て描き(5)

 旱天にらむ雨乞狛犬 杉並区・第六天神社

むか〜しむか〜し武州多摩郡は上高井戸村では日照りの日が何日も続いておった。
困った村人は第六天神社に雨乞い神楽を奉納して祈願をしたんだそうな。
そしていつの頃からか、この空を見上げる狛犬さんは雨乞い狛犬と呼ばれる様になったそうな。

<明和八年・?石工五兵衛?>

1999年14号より

 狛犬見て描き(6)

年代不明だが年代のわかる狛犬 鎌倉市・鶴岡八幡宮

時おり浦山風が吹きすぎてゆく鶴岡八幡宮境内。
公暁、隠れ銀杏の前で記念写真をとる観光客は多いが、狛犬を気にとめる人は少ない。
この狛犬はとてつもなく古そうだが年代不明である。
しかし実朝斬死の後に間違いはない。
その証拠に股間の陽物は「抜き身」ではない。
今年、実朝没して780年。父頼朝同じく800年である。

<編集部・注>
この狛犬の建立、円丈資料によると寛文8年(1668)

1999年15号より