追悼!上杉千郷先生



6月30日、我らが狛犬の師、上杉千郷先生が肺炎で亡くなられた。
大正12年生まれ、87歳。合掌!

三遊亭円丈

上杉先生は皇学院大学の理事長を歴任したほどの神社界の重鎮で、飛騨古川の十九代にわたる社家の家系に生まれ、またお父さんの一枝氏が熱心な狛犬愛好家で、その血筋を受けた本格狛犬研究家なのだ。
私のように昨日までパソコン・ゲームをしてたのが、突然狛犬にハマった俄か狛犬愛好家とは訳が違う。

先生は、狛犬のルーツを訪ねエジプトまで調査に出掛けたほど狛犬の歴史研究をなさり、その造詣は深い。
また狛犬出版物は『狛犬事典』、『日本全国獅子・狛犬ものがたり』(共に戎光祥出版刊)などがある。

しかし先生の訃報を知ったのが、死後半月後、まずい!お世話になった先生の御魂になんとしても手を合わねばと七月末、飛騨古川のお宅に無理矢理お邪魔させていただいた。
藁ぶき屋根のお宅で庭の入り口には、京都冷泉家からのどっしりした招魂社系狛犬が置かれ、玄関脇にはいわくありげな彫りかけの狛犬があり、そして十九代宮司をしている五社神社には三対の狛犬、まさに狛犬先生であった。


奥さまが出て来て、先生は亡くなる寸前まで冗談を言っての大往生とのこと。


先生から学んだ一番のことは「日本人はシンメトリーを嫌う」と言うこと。
つまり「左右対称を嫌う」と言う。
西洋では建物や両脇に置かれるライオンは左右対称だし、中国も両脇の獅子は、どちらも口を開いた阿で一対だ。
だが日本は左右対称を嫌い、阿と吽で一対なのだ。
その阿吽が、ある時はオス、メスで一対だったり、また子獅子と玉を持って一対だったり。
狛犬は左右対称を嫌いながら、同時にどんどん日本独自の進化を遂げていった。



狛犬マニアが、今こうして狛犬を楽しめるのは、上杉先生が言った「日本人はシンメトリーを嫌う」の上にこんなにバリエーションのある狛犬ワールドが出来上がったからなのだ。

左右対称を嫌う。
そこにこそ、日本文化の奥深さがある。



       2010.8.23 第79号より



京都冷泉家からの狛犬

狛研と上杉先生                  写真;阿由葉
伊勢ツアー(2008.6.8〜9 )にて  
狛研例会(2009.2.24)にて