子獅子の姿がこれほど生き生きして彫られている狛犬は少ないと思う。 人間の赤ちゃんのようなぷっくりしたお腹、頼りなげなおぼつかない歩き方、でも好奇心いっぱいに首を伸ばして外を伺っている表情。 こんな子供が手元にいたら母親は子獅子が飛び出さないように押しとどめる前足を準備しなくてはいられない。 母獅子の前足の下ほんの何センチかの空間が母の情愛の微妙な表われだ。
親獅子の躍動的な背骨、タテガミの美しい曲線、透かし彫りの見事さ、すべてが素晴らしい技工の石工に彫られている。
足立区で一番古い千住神社の拝殿前にいる文政13年(1830)の狛犬だ。 北千住から日光街道を超えた場所にある。
日光街道沿いには、良い狛犬がゴロゴロ。 千住神社にあるちんまりと行儀良く、座ったオオカミ(写真上・左)も都内第2の古いものだと言われているし、末社の苔むした年代不詳狛犬(写真上・右)も味がある。 ネットがかかっていて全貌が見えないが、気になる飛び狐(写真下・左)がいる。 背に稲を乗せたキツネ(写真下・右)もイイ。 狛犬ファンにはたまらない。
千住神社(足立区宮本町24-1)
大野久美子 2013年第97号より 写真;大野・阿由葉