久美子の 狛犬散歩
 その(48)
表参道界隈・秋葉神社〜尾っぽ必見!寛政狛犬

不思議な尾を持つ狛犬だ。
立ち尾の先が左右対照的にクルっと巻いている。
玉垣横の低い台座の上にいるこの狛犬は、入り口にある大正十四年の狛犬に隠れてしまっているが、三対ある狛犬たちの中で最も古い。
寛政二年(1790)の奉納だ。

ブランド店がひしめく表参道交差点すぐの秋葉神社入り口は目立っているが、地図にもないくらいの小さな神社だ。

紀伊国屋文左衛門が深川に隠栖の折、歓請した秋葉神社が移転して来たと言われている。

その縁なのか偶然かは分からないが、近くの高級スーパー紀ノ国屋の寄進した玉垣が印象的だ。

向かって左側にある阿の顔は崩れてしまっているが、かなりの大口を開けたトッポい表情だし、ウンの顔もにかっと笑ったユーモラスな感じだ。
首から胴にかけてが長いが、足が細く、アンバランス。身体全体はシンプルな造作の印象だ。
後ろ姿の尾の形は必見。
狛犬の背中の筋が火伏せの霊獣カイタにも似ているのは秋葉神社だからだろうか。

拝殿前には、別に大正九年に奉納されたしっかりした彫りの狛犬がいる。

台座の紋は三つ葉葵、西遠在住旧家臣有志とある。

大正の時代になっても家臣という表現を用い、西遠(浜松)に住む徳川の家臣たちがこんな離れた場所で狛犬を奉納した理由は何だったのだろう。

秋葉神社港区北青山3-5-26

大野久美子 2011年第84号より
写真;大野・阿由葉