目ヂカラが鋭い。カッと見開いた眼がこちらの様子を窺っている。 まったく油断ならない。 リアルなタッチの現代風の垂れ耳が印象的だ。戦災を受けたのかアの子獅子の頭は破損している。 でもまだ先代となるには惜しい迫力だ。 背中ではっきり二分される流れた尾がくっきりとしていて、全体の輪郭がぼやけていないその姿は先代らしくないのだ。
東部東上線常盤台駅下車3分の板橋区南常盤台、上板橋村の鎮守の天祖神社。 そもそもは横参道入口にいたはずの狛犬だが、平成10年の新しい招魂社系狛犬の奉納に伴い、脇の草むらに移動されてしまったらしい。 台座も半分は地中に埋もれ、年号もかろうじて昭和17、飯田石材店の名が読み取れる。 ウンの狛犬は反対側の夏草の中に埋もれており、所在をみつけるのも難しいくらいだ。
天祖神社には正面参道に頭にとても重そうな宝珠をのせた引化3年(1942)狛犬がいる。 こちらは区の説明版にも記載されているので大事にされそうだが、公の機関に認知されていない先代狛犬は身分が違い扱いも違うのが少し残念。
天祖神社(板橋区南常盤台2-4-3)
大野久美子 2009年第72号より