久美子の 狛犬散歩
 その(32)
大森界隈・貴船神社〜親の威を借る子獅子
子は飾りやオマケではない。
まるで親狛犬の身体の一部のようだ。
狛犬にはかなり大きな子供が二匹。
背中によじ登っているやんちゃな子供は親そっくりの顔で同じ方向をマネッコで睨んでいる。
荒く深い彫りだが動きが良く出ていると思う。
子連れ狛犬は多いが、このように子どもがメインの印象を与える狛犬は少ないと思う。
大田区大森町の貴船神社の狛犬だ。
貴船神社(東京都大田区大森東3-9-19)
奉納は新栄講、講の構成員なのか相当な数の人々の名前がきざまれれている。
台座だけで人の身長を越える高い位置にあり、大きな石を贅沢に彫った作品だ。
現在の社殿からすると分不相応なくらい大きい。
東京湾の海苔問屋が軒を連らねていただろうこのあたりは結構財力があったのだろうか。
石工は六郷石工、竹内六之助
多摩川べりの六郷石工らしく、平たく大きな耳が特徴的だ。
美しさや粋な風情はないが、石工さんの渾身の力を込めた力強さを感じる。
奉納年は明治33年(1900)6月。

大野久美子
2008年第65号より

【追記】参道手前には、これまた大きな石灯籠が1対ある。
作は狛犬と同じ竹内六之助。
大正11年4月の建立で、面白い狛犬のレリーフがある。(阿由葉)