久美子の 狛犬散歩
 その(18)
戸越界隈・戸越八幡神社〜二百七名の願いを込めて
からの懐かしい商店街がある街だ。
江戸を越える(トゴエ)が変化して戸越(トゴシ)となったようである。
この地にある戸越神社の狛犬は、品川で最も古い狛犬として区の文化財に指定されている由緒正しい狛犬だ。
胴体も細部に渡って毛筋模様が刻まれ、バランスも良く江戸中狛犬の正当派である。

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かでも圧巻は台石に刻まれた奉納者の多さである。区の説明板によれば、左右の各三面に207名もの人名が刻まれているとのこと。
当時の戸越村を構成していた村民のほとんどの氏名が把握できる貴重なものという記載に感激してしまった。
講の名、町の名での建立はよくある。
しかし江戸の中期、まだ七代将軍の頃延享3年(1746)に、個を埋もれさせず、一人一人の銘を彫ってくれたことはうれしい。
講を中心に建立は勧められたようだが、富める者も貧しい者も区別なく、狛犬のためにできる範囲の財を出し合って奉納したのだろうか。
だからこそ「おらが村の」シンボルとしてきっと大切にされてきたのだろう。
戸越八幡神社(東京都品川区戸越2-6-23)  

                             大野久美子 2005年第48号より