横浜の知られざる狛犬を探る!


横浜市の狛犬はほぼ全て見たつもりでしたが、港北区岸根町の公式WEBサイト内〜杉山神社奉賛会「旧山王宮跡・地神塔」にあまり見かけない狛犬の写真があるとの情報にビックリ!
ところがここは財務省の管理地で、容易に入ることが出来ない上に竹藪の中で台座は土に埋まっている事が判明。

そこで早速奉賛会へ連絡をとりお願いした所、ご案内頂けることになり期待を胸に訪ねてみました。
約束の日、三名の町会役員の方に迎えて頂き竹藪に囲まれた小高い丘の上へ行くと、何とこの日のために狛犬周囲の草や笹をキレイに刈っておいて下さいました。


そして狛犬は…
関東では見かけない顔と尾、ネットの情報で知った伊豆の石工の作にそっくりです。
吽像は前脚が欠損してかなり傷んでいますが、すばらしい狛犬!
となると、どうしても銘を確認したい!…これは台座を確認するしかありません。

小さなシャベルと鍬を持って行きましたが、かなりの苦戦。

見かねてか…スコップ、山芋掘り用の鋤、ハサミ、鋸を持って来て一緒に掘ってくれました。


おかげで阿の四面、吽の正面以外の三面をほぼ完全に確認することが出来ました。
「氏子中」「嘉永七寅年八月建之」「明治廿亥年九月再建」
残念ながら石工銘はありませんでした。
しかし、紛れもなく伊豆 安良里邨
石工(徳三郎/長吉)の作と思われます。

何故横浜に伊豆の石工の狛犬が?お聞きした所、杉山神社の由緒沿革に「伊豆の国の住人岩田五郎右衛門貞列が草創」とあるように、この地及び人は伊豆との関係が深いようなので、ここに伊豆の狛犬があっても不思議ではない気はします。


こんな本格的に掘り起こしたのは初めて!
楽しく興奮の一時でした。

町会長さんはじめ、ご協力頂いた皆様に心から感謝しております。
凝灰岩質の伊豆石のため特に吽像の破損・傷みがひどいので難しいかもしれませんが、是非杉山神社へ移して修復・保存して欲しいとお伝えしました。

なを、この伊豆の石工の狛犬について17対を確認された狛犬研究家 鈴木隆弘さんによる詳細な研究報告「伊豆の名工 大川徳三郎とその弟子長吉について」があります。
年代を追ったこの研究報告を見ていると、この山王宮の狛犬の歴史的流れの中での位置づけが良く分かります。

この写真は伊奈下神社(静岡県賀茂郡松崎町松崎28)にある安良里(あらり)村の名工 徳三郎による文政元年九月の最高傑作とも言われる狛犬です。(写真;鈴木隆弘氏)

鈴木さんの研究報告はこちらからダウンロードすることが出来ます。
興味のある方は是非ご覧下さい。