幻の狛犬を探して!

会員でもある滋賀県立安土城考古博物館の山下さんから
「30年近く前、厚木に江戸期前の狛犬の存在について記載されたものを読み、関東では見ない古様な中世狛犬の記事が気にかかり、2度ほど、その記事に従って捜索しました。しかし、記事の説明がやや不親切で写真もなく、何時間も探し回ったあげく、結局見つけられませんでした。」
というお話しをお聞きしたところから話は始まりました。

ここから勝手に「幻の狛犬」と呼ばせてもいただきました。

同じ神奈川県と言うこともあり、何とか見つけたいと思い、早速図書館でその本を捜して原文に当たってみました。

昭和51年の「石仏の旅 東日本編」出版社雄山閣。
この部分を書いたのは横田甲一さんという方で
「石仏の専門家なので、狛犬の事はそんなに詳しくはないそうですが、石仏は詳しい方なので、そんないい加減な時代鑑定はしていないだろう…」
との山下さんのお話から、とにかく探してみようと。

原文を元に可能性のある範囲を探し回りましたがなかなか見つからず…近くで農作業していた方たちに色々聞きながら…

そんな中で出会った一人のおばあちゃん。
可能性のある山道を教えてくれ、しかも「この辺は危ないから」と自分の腰に付けた害獣除けの鈴まで貸してくれました。
局はそこでは見つからなかったのですが、別れ際に興味深いお話を伺うことができました。

「以前、家にあった古い狛犬を小さな神社へ納めた」と。
詳しい場所をお聞きして訪ねてみると、地図にも載っていない小さな祠前に古そうなカワイイ狛犬がいました。

この狛犬を見つけた経緯から、これが幻の狛犬そのものではないと思ったのですが、
その後 狛犬友達の
Tak Suzuki さんがすぐに現地を確認し
「とても読み難いのですが、銘を読み解きました。」との連絡が来ました。

しかも背中の銘は「元禄6年」と、かなり古いものと判明。

 奉寄進 宝泉寺辰○
 ○禄六年三月
※○禄で六年まであるのは、永禄六年(1563)か元禄六年(1693)のため、元禄と推定。


この結果と周囲の状況(このあたりかなり造成されているため、古い地図や航空写真等を参照したり、原文にある峠を下った所の道祖神や庚申塔との位置関係)から、これが捜していた狛犬に違いないとなった訳です。
ついに幻の狛犬を発見!


そんな狛犬が何故おばあちゃんの所に?
明治の神仏分離の時にお寺から(宝泉寺)引き取られ、その後ここに…なんて想像を巡らしています。
(2020.10.13 この所在はあえて公表しません)
                             
銘の写真及び解読協力 Tak Suzuki さん
                                
2020.1.12 139号より 阿由葉