狛犬紀行・60   三宅稜威夫

浅草伝法院の獅子吼狛犬

浅草界隈は、何時行っても新しい発見がある。
今から1400年前、漁師の浜成・竹成兄弟の網にかゝったのが一寸八分の聖観音。
これを兄弟の上司、土師中知が秘仏として祀ったのが浅草寺の起源、これに係った三人をお三社さまとして祭ったのが浅草神社と伝えられる。
浅草界隈を歩くと秘仏伝説のほか紙すき、なめし皮、陶磁器などの歴史が目につく。
私見では、この地区は古代渡来の人々の拠点の一つであったのではと推測している

さて、伝法肌の言葉の起源となった伝法院は浅草寺の本坊である。
この中に小堀遠州築庭と伝えられる回遊式庭園がある。
これを見る機会を得た。

この一角に天を仰ぐ狛犬がいた。
力強い作風、あたかも天に向かって吼える姿…私勝手に「獅子吼狛犬」と名づけた。

作代は不明(禁止区域につき)、中央の石像は有翼・甲冑姿で笛を吹く姿から判断するとヒンズー教の神話に現れる大鳥「伽楼羅」と思わ

れる…珍しい石像だ。

伽楼羅と狛犬の関係を調べるのは今後の宿題…浅草寺界隈の狛犬数はこれを入れると6.5対となる。

2008年66号より