狛犬紀行・17   三宅稜威夫
修那羅峠の猫狛・猫神
信州上田の西方、青木村と坂井村の境に修那羅(しょなら)峠がある。
その頂の木立の中に安宮神社がある。
社殿の裏にまわると様々な姿をした石神・石仏が静かにたたずんでいる。
その数、860体といわれる。いずれも60センチ足らずの小振りの像だ。
この地は江戸後期頃より修験場として開かれたようだが、特に幕末から明治初期に現れた修験者・修那羅大天武(だいてんぶ)の祈祷が評判を呼び、病気治癒・豊作・安産を願う庶民が遠くは東北から参詣したという。
そして願いが叶うと自分の村の石に石神・石仏を刻みこれを背負って峠を登り境内に奉納した。

こちらが狛猫

猫神

この中に2体の猫神がいる。
30センチ足らずの愛らしい像だ。
猫像は珍しいが、養蚕農家にとってはネズミが大敵、これを退治する猫は守護神ということではないか…こんな想像をしながら数々の石像をみていくと幕末頃の人々の心情が思われて興味が尽きない。狛犬はいないなとあきらめかけていたら、脇道の祠の前で猫狛一対に出会った。
耳鼻口からみて虎ではない…猫狛だ。
3年越しの願いであった修那羅峠行、今年の夏はこれで終わった。

2000年22号より

神使像めぐり 神使になった動物たち
猫の項、修那羅(ショナラ)峠、安宮神社の猫を参照下さい。