丹波佐吉の狛犬 〜円丈師匠 佐吉を語る
円丈に狛犬挑戦状 来る!
ジャ〜ン!来た来た来た…ッ!狛犬挑戦状!
送り付けた当人は、奈良県当麻町に住む仲 芳人氏。こいつがそうだ。
なんでも世界で一番美しい狛犬は、
   「八幡神社」奈良県磯城郡(しきぐん)川西町下永
    安政6年建立  石工 丹波 佐吉
「佐吉のこの狛犬<写真下>が、絶対世界一だ!円丈め。悔しかったら見に来い!ざまあ見ろ」
てな内容なんだ。
ヤイ、芳人!なめやがって、浪花のちんけな狛犬に江戸唐獅子が負けるはずがない。
見に行って
返り討ちにしてやるから、首を洗って待ってろ!
しかし丹波佐吉の狛犬に会うのが楽しみだね。
やっぱり江戸末期と言うのは、各地で石工文化の花が咲いた時期。
そして聞いたコトもない川西町にも花は咲いた訳だ。
奈良県には、その他にもぜひ見たい狛犬が他にもある。誰か一緒に行く会員はいないか?
名付けて「丹波差吉狛犬.返り討ちツアー」を個人的に数名募集します。
エッ、返り討ちに会うのはお前だろ?そう!

三遊亭円丈 1997年 第4号より

丹波佐吉の狛犬
例会報告
テーマは
「石工のゴッホ丹波佐吉」
狛犬の杜4号で記した
「狛犬挑戦状」に応えた奈良の佐吉狛犬報告。
佐吉狛犬の見所は、目。 かなり奥まった奥眼から、ものすごく鋭い視線を見る者に投げかけて来る。同時にもろさと弱さを持った目。あの深い吸い込まれるような目!感動できる目。あの目は佐吉の全てを物語っているよう…

1998年 第7号より

と言う訳で実施された「佐吉狛犬・返り討ちツアー」。
果たしてその結果は?!
それがこの例会時の「円丈の狛犬講座」だったのですが、「狛犬の杜」本紙ではその紹介スペースは無く残念に思っていました。
そこで、その内容〜円丈の見た丹波佐吉狛犬〜をここに載せることにしました。

(写真は全て円丈師匠によるものです。文章は1998.2.6〜7の奈良行報告FDからの転載です)
丹波佐吉は石工のゴッホだ!
先日1日かけて「丹波佐吉」に会いに行きました。
本当は2日かけて全ての佐吉狛犬を見たかったのですが…結局1日で佐吉7対を含む25社の神社をまわってきました。
いろいろな情報いただき本当に有難うございました。
ひとつだけ、私が見つけた佐吉狛犬が有りましたので報告をさせて頂きます。
「阿波神社」 奈良県斑鳩市阿波1-6  建立年度不明
台石を新しくしたようです。なにも刻まれていません。
高さ80cmほどで7対見た中で一番サイズが小さいようです。

「作師照信」の銘と花押(この写真は久米御懸神社のもの)
足座には例の「作師照信」があり、佐吉に間違いありません。
場所は、佐吉狛犬のある素盞鳴神社(雄同市興留東1-8)から歩いて5分ぐらいのところです。
別に自分で見つけたから言う訳ではないのですが、これが
佐吉狛犬の中では一番イイと感じました。
あと橿原市久米の
久米御懸神社の計2対です。
(写真下)
私にとって佐吉狛犬の見どころは「目」です。あの吸い込まれるような鋭さとモロさ、強さと弱さを持つたあの「目」です。あれほどの目をした狛犬にいまだかって見たことがありません。多分、これからもないと思います。
どうも佐吉のほかの狛犬は大型で良く見せよう、大きく(1〜1.2m)見せよう、凄いだろうみたいな意識があるような気がします。

ところが、この阿波神社の佐吉狛犬は、やや小型で多分、結構楽に彫ったような気がします。
だからてらいも力みもなく、そこには等身大の佐吉がいます。

その「目」はどこまでも深く、見ると可愛いらしくさえあります。

そんな印象を持ちました。その他の印象は…差し控えます。
仲さん、是非関東や日本全国の狛犬を見て下さい。
実は奈良のほかの神社でもパターンの狛犬ではありますが、それはそれで面白く見てきました。
石工はひとりではありません。

それぞれ、みんな一生懸命彫っていてそれぞれ長所、短所があり、関東では、飯島吉六です。
しかしすべてが良い訳ではないし、また1対両方とも言い訳ではありません。

佐吉を名工とは認めますが、彼は「石工のゴッホ」だと思います。
かれは、心の石工です。あの目からどれだけ佐吉の心を汲み取るかでしょう。
ですから彼をまるで左甚五郎(実はかれは、実在ではなかった!)のように神聖化はしません。

以下、このツアーで円丈師匠が会ったその他の佐吉狛犬です。

素盞鳴神社(奈良県斑鳩市興留東1-8)
安政4年9月(1857)

作師 信照(丹波佐吉)
 

神岳神社(奈良県斑鳩市神南4-2)
文久3年9月吉日(1863)

作師 信照(丹波佐吉)
石工 龍田 九兵衛  

杵築神社(奈良県三宅町伴堂510)
安政6年4月吉日(1859)

大阪住 石工 佐吉
 

御霊神社(奈良県天理市永原)
安政7年閏3月吉、蔓延元年3月吉祥日

作師 信照(丹波佐吉)

「旅の石工ー丹波佐吉の生涯」
平成10年5月19日、ハイビジョン撮影によるドキュメンタリードラマ「旅の石工ー丹波佐吉の生涯」の試写会が開かれた。
また、この試写会の前には円丈師匠の講演会「狛犬の魅力」もあった。
平日の昼だったため、残念ながら私は行けなかったが、師匠からメール報告が届いた。
ところで「旅の石工、丹波佐吉」なかなか面白かったですよ。
終わったあとで三宅さんなんかと喫茶店で映画の話で盛り上がりました。
なにしろ、時代劇のロケが、日光江戸村ですから笑えます。

もうみんなでケチを付け合いました。

1.佐吉があんな丸顔じゃ名工らしくないとか、
2.あのノミの持ち方で石が彫れるか、
3.白ミカゲを彫るわけないとか、
4.石に対するライティングがカラッペタとか、
5.後ろにハリボテの石を置くなとか、

などなど。ほんと狛犬マニアや、石仏ファンは、ああ言う映画は、好きでしょうねえ。

円丈 → 阿由葉 メールより 1998年5月24日

例会報告
平成11年6月1日(火)「旅の石工〜丹波佐吉の生涯」ビデオ上映会
例会初企画のビデオ上映会。
語り尽くせない面白さ、大拍手のうちに幕。

1999年第14号より

参 考
旅の石工丹波佐吉の生涯 鈴木敦子 著 法政大学出版局
\2,200.
旅の石工丹波佐吉の生涯 VHS60分ドラマ (株)文化工房
\14,800.