捨て犬ならぬ捨て狛犬二態
昨今ペットとして愛した犬が,飼主の勝手わがままな思いから捨てられて野犬化した例が多い。可愛そうな犬たちである。
狛犬もその例に漏れず、老いた狛犬や、欠けた狛犬、朽ちた狛犬など、新しく奉納された狛犬にとって変わられた狛犬など、捨て犬同様に捨てられた狛犬がいる。
可愛そうな狛犬にも手を差し伸べたいものである。

◇東峰八幡宮(横浜市戸塚区吉田町)
境内に「旧本殿遺跡之碑」と書かれた「八幡大神由緒」碑がある。
この碑の裏に横向きに一頭の小さい狛犬が捨てられていた。
40センチ程の小さいものだが、しっかりした奴である。
江戸後期の天保2年(1831)天保大飢饉の前年に奉納された狛犬である。
キチンと保存したい一頭である。

◇高森神社(伊勢原市高森)
アジスキタカヒコネノミコトを祀る数少ない式内の古社である。
拝殿の横に捨てられた一対の狛犬がある。江戸タイプのもので、なにやら恨めしそうな顔をしている。
一応、柵で囲んで奉納碑が建っているのが、せめてもの慰みである。
うまく再建できないものだろうか。惜しい一対である。
捨て犬ならぬ、捨て狛犬にも良いものがあるという「発見報告」です。
神社に参拝したら、社殿をぐるりと見渡してみよう

田辺英治  2007年59号より