金門島の風獅爺(フーシーイエ)
大塚 康生
 仕事で台湾に行ったついでに金門島を訪ねてみました。
狛犬の話を台湾の友人に話してみたところ「それなら金門島に行くべきでしょう」ということになって、台北から国内航空で約1時間の、中国大陸と約2キロで向き合う小さな島に降り立ったわけですが、金門空港を出た途端に目の前の山の上に巨大な風獅爺(立ち型獅子)が迎えてくれ、驚いたことに全島いたるところで土産物の風獅爺(フーシーイエ)が売られていました。
 沖縄のシーサーと同じく強い風から島民の生活を守る守護獅子の役割を負っているわけです。
シーサーが主として屋根の上におかれるのに対してこちらは町の辻やひらけた高いところにポツンと立つ、形は素朴ですべて立ち姿の特異な石獅子です。
金門島だけでなく馬祖島ほか台湾海峡の他の島々とも共通の風習だとききました。
ただし、このほかに寺院、廟、宮などに鎮座する石獅子(福建省の南獅)も沢山あって風だけの為の風獅爺とで住み分けています。
一寸おかしかったのは風獅爺は雄だけで、男性の象徴をはっきりとつけていることです。
雌はいません。
本物も20体以上見ましたが、売られている小さな造形物も丹念に見て回りました。
一個400円〜600円程度で、ものよっては非常に良く出来ていて、ほとんどの家の仏壇の脇に座っていました。
狛犬が一般に広く普及しているのは、もしかすると金門島と沖縄だけではないでしょうか。
          
                  
2005年12月第51号より