王子稲荷神社

JR王子駅前に八代将軍吉宗の命で数千株の桜を植えて花見の名所になった飛鳥山があり、右側には王子神社があります。
江戸時代は郊外にもかかわらず多くの料理屋や茶屋で賑わったと云う通りを10分ほど行くと
王子稲荷神社の惣門が見えて来ます。

惣門〜右側は幼稚園
惣門左の石段を上がる

現在境内は幼稚園と併用となっているため、平日はこの門は閉じられていて、左側から回っての参拝になっています。
名所図会では境内右手には大きな弁天池がありましたが、今は幼稚園になっています。
石段は男坂と女坂がありその左側には身を清める垢離場
(こりば)の滝がありましたが、今は右に移って小さな池に注いでいます。
滝脇の
厳島神社には宝暦十一年に造られた狛犬がいます。


末社・厳島神社

  宝暦11辛巳年 石工 浅草 橋本権助

男坂女坂の石段は昔のままで、右の男坂を登ると、透かし彫りの台座や尾の造形が素晴らしい狛犬がいます。
これが名所図会に描かれた狛犬と思われます。
台座には宝暦十一年造立(1761)、文化九年再建(1812)と刻まれ、奉納者の中に牛込石工塩谷仁兵衛の名があります。
どうやら現在厳島神社の前にいる狛犬がかつて拝殿前にいて、そして文化九年に再建した狛犬に場所をゆずったのでしょう。


この美しい尾を見よ!

透かし彫りの下の台座には、沢山の名が刻まれている。石工・塩谷仁兵衛の名も見える。

北区教育委員会の加藤貴氏の調査では、台座の奉納者数は320名
狛犬奉納の目的は町火消し組合を支援する講中による火防せ(ひぶせ)祈願ではないかと云っています。
確かに王子稲荷は商売繁盛と共に火防せの御神徳で知られた神社で、2月の初午には「火防守護の凧守」が授与されています。

毎年大晦日の夜に東国三十三ケ国のキツネ達が王子稲荷近くの装束榎に集まって来ます。
そして榎の木でしばしたわむれた後、装束に着替えて王子稲荷に参殿します。
其の時の狐火の様子で次の年の豊凶を占ったと云います。
そんな言い伝えにあやかろうと神社の境内や裏山には武家、商人、職人達が奉納したキツネ達が今も健在
です。

王子稲荷神社 東京都北区岸町1-12-26

2001年27号より
2009.1 加筆
写真:山田・阿由葉