院長のつぶやき(日々診療の中で思うことなど)


  骨粗鬆症とは

   少し昔は、だれも「こつそしょうしょう」などという言葉は知らなかったと思います。学会でも「こつそすうしょう」と呼んでいた先生もいました。
   そこで統一して「こつそしょうしょう」と呼びましょう、と決めた訳です。

  さて多くの人が誤解している事。

  それは腰や関節が痛いと「骨粗鬆症」ではないか、と思う事です。

  実はこれは間違いであって、骨粗鬆症では骨折を起こさない限り、痛くありません。

  痛いのは、実は軟骨であって(関節軟骨や椎間板)、骨ではありません。


  折れやすいのは、肋骨、脊椎です。特に転んだ後に、背骨を潰した患者さんが良く受診されます。またちょっとした動作で、あばらが痛い方も多く見受けます。

  ただ多くの方の痛みは、変形性関節症による痛みです。
  
  昨今骨密度測定器が普及して、開業医でも、測る所が増えています。問題はその測定部位や方法で、正式には腰椎の2-4番を測るのが正式となっています。その理由は、折れやすい部位であって、骨量の減少を一番鋭敏に捉えるからです。

  多くの施設では、手首や踵で測定しています。問題は、2人に一人が誤診されことです。このような部位では、正確に骨量減少を捉えることができません。

  この結果不要な薬剤を投与されて、ただでさえ多い薬が増えてしまいます。

  全身型DXAを備えているいる医療機関を受診することです。当院には備えてあります。



  最近思うこと

   
医学部を卒業して、早いもので41年経ってしまいました。勤務医であったら、来年は定年となります。
 この間、病気や事故で亡くなった同級生が100人中、3人いますが、これは近い学年の人たちと比べると少ないようです。
 たまに同級生と会合で会うと、身体の不具合を訴え合うという、学生の頃はかんがえられなかった話題が中心となりました。

 皆病院長や教授職など高い地位についている人もいれば、私のように開業しているもの、など種々様々ですが、学生の頃の仲間はいつになっても、当時のままかわりません。一瞬で若き医学生時代に戻ります。

 そこで共通した話題は、最近の患者さんたちは、特に若い世代の人たちは、あたかもコンビニで、商品を買うように、医療もお金を払えば、必ず身体の不具合は必ず治る筈だと、思っているきらいがあるという事です。

 無論医療は病気の根絶を目指すのですが、中には治らない病気、怪我はあります。これが医療の難しいところで、医師はそのジレンマと日々向き合っているといってもいいでしょう。


 昨今の健康に関するメディアの内容はやや、誇張されているように思います。健康雑誌には首を傾げたくなる民間療法なるもの、堂々と掲載されています。弱った身体を持つ方はおそらく藁にもすがる思いで、このような記事に飛びついてしまうのでしょう。

 その結果、医師側と患者側の意識のずれが相互の不信につながっている一つの要因かもしれません。

 


 テレビの弊害

  最近の健康番組で、踵を床にすとんと落すと、健康に良い、という放送があったそうです。私はその番組を見ていないので正確な事はわかりませんが、その放送を見て実際にやったため、膝や腰を痛めた女性が数名立て続けに当院を受診されました。
 どのような根拠でそのような体操?が良いのか寡聞にして知りませんが、どう考えても医学的な根拠はないように思います。この件では全国で同じような被害が発生し、訴訟問題になっているようです。

 テレビ番組というものは、視聴率を目標に製作していると聞きます。多少誇張されても受けの良い内容を局が作る事は十分に考えられます。一般の視聴者は「テレビで言っているから正しいはずだ」と勘違いしてしまういがちです。しかし、過去にも根拠のない内容を捏造し、番組の廃止、担当者の処分が行われた事例があります。

 どうかテレビの報道に惑わされず、疑問に思ったら、かかりつけの先生に相談してみて下さい。

 多くの健康補助食品、サプリメントの類も、疑念を抱かざるを得ないものがあります。

 高齢者に対する運動の負荷

 最近このような患者さんが来院されました。
 91歳の高齢女性。独りで暮らしていたとの事。足腰が弱ってきた、との事で、家族が接骨院に連れて行き、そこでは、足に重りをつけ、リハビリと称して運動負荷を加えたそうです。
 その結果どうなったと思いますか?
 
 痛くもなかった足腰に激痛が走り、歩けなくなって当院にやってまいりました。
 しかし問題はここからです。このような経緯があったことを家族は一切私に告げませんでした。

 一通りレントゲン検査を行い、骨折等の異常はないが、腰椎の変形がかなりあることを告げました。すると家族は「今まで独りで暮らしていけたから、今後も問題ないですよね」と断定的におっしゃいました。つまり、元通りに元気になるはずだ、というお考えのようです。

 しかしわたしは「レントゲンで見る限り、腰椎の変形もあり、今後はお独りで自活する事は困難ではないか」と申し上げました。
 すると家族は「今まで元気だったので、そんな事はない」の一点張り。
 
 どうにも困ってしまいましたが、腰部固定帯を装着し、若干のお薬を処方し、お帰りいただきました。

 どうも腑に落ちないので、看護師が家族に後を追いかけて聞きただすと、前述したような事実が判明したと言うわけです。

 ここでお判りですね。後半にも書きましたが、昨今の健康ブームの弊害がこのようなお年寄にも起こっているのです。
 困った時代になりました、、、。


 電気治療について

  整形外科は別名「外傷外科」とも呼ばれています。典型的な例が、戦傷の兵士の外科的処置です。抗生物質や種々の医療器具の発達は、過去の戦争体験によってもたらされたとも言われています。多くの兵士の尊い犠牲が、医学発展の礎になった事は否定できません。

 翻って現代の日本、戦傷はなく、一番多い怪我は、交通事故ないしスポーツ外傷です。

 ここで良く勘違いされるのが、怪我をしたら「電気をあてる」事が常識化している点です。交通事故の患者さんで「電気をかけてもらいたい」と言って受診されます。しかしここで、重要なポイントがあります。それは、、、

 受傷直後(急性期)の電気治療は禁忌である、事です。

 外傷処置の基本は、
 Rest        安静
 Icing        冷却
 Compression   圧迫
 Elevation     患部の挙上     です。頭文字をとってRICE (らいす)と呼んでいます。

 典型的な例が、プロ野球ピッチャーの試合後の処置です。冷却剤を当てた上にぐるぐる巻きにしたテープで圧迫、挙上していますね。100球も投げますと、肩関節の内部や周囲の筋肉には出血、腫れが起きています。これらを最小限に食い止める処置が、あのような形になる訳です。このような状態の肩に、熱源である電気を当てたらどういう事になるか、おわかりですね。

 従って、外傷後の温熱療法は、少なくとも急性期の3週間ほど過ぎた後から行うべき、と考えています。
 

 救急外来で思う事

  新潟市の救急センターに年5回ほど、出向します。市内の開業医、勤務医、大学医師などが交代で出向するシステムです。これは義務ではなく、医師側の自発的な意思に基づいて、出番の日が割り振られます。

  平日の夜間や日曜、年末、年始、お盆など休みの日に働く訳ですから、中には参加しない医師もいます。
  私も本音は、休みたいところです。ただ、医業を営んでいる限りは、誰かが、救急に携わらなければならない。私よりも先輩で70歳代の医師も出向されています。頭が下がります。

  ただ、患者さん側はこのような事情を知らない。市の職員だと思っているきらいがあります。つまり公的医療機関だと思われていますが、新潟市医師会が主催する純然たる民間の医療機関です。
  
  そこで働く職員、医師が公務員であるとの勘違いもあり、過剰なクレームをつける患者さんが多いと聞きます。受付や看護師さんたちは、その対応で疲弊する局面もあるようです。

  
 湿布について

   日本でしか用いられていない薬剤、それが湿布です。
 しかし、その使い方が正しく伝えられていません。

 1.貼りっぱなし は駄目です。

   薬効成分は4-5時間で殆ど、皮膚に移行します。良く1日中貼っているお年寄りを見かけますが、全く意味がありません。味のないガムを噛んでいるのと同じです。接着剤でくっついているだけです。その成分でかぶれる事もあります。半日も貼れば十分です。剥がしましょう。

 2.続けざまに貼らない

  多くの方はすぐに新しい湿布を貼っているようです。しかし、皮膚には、まだ薬剤が残存しています。続けざまに貼る事は、皮膚の細胞に休ませる猶予を与えていません。当然、かぶれなどを生じ、皮膚がストライキを起こします。剥がしても薬剤はまだ数時間残存しています。
 間を置いてから貼るようにして下さい。


小児、特に乳幼児の骨折について

  日本ではあまり医学教育で強調されていないのですが、小児、特に乳幼児における骨折の自家矯正能力は極めて高く、欧米の医学書にはこの矯正能力を骨折における"remodeling"(リモデリング)という言葉で表しています。つまり、曲がった状態で癒合した骨折も、時間と共に自然と矯正される能力が高い事を意味しています。この能力は幼い子供ほど高い事も知られています。

 例えば前腕の骨折の場合、10歳以上では許容される角度は10度以下ですが、5-10歳では15度、5歳以下では20度までの屈曲変形は自然治癒する事が報告されています(Australia,The Royal Children's Hospital Melbourneのデータ)。

 このような自然病歴が日本ではまだ衆知されていません。医師側も、医学教育の中で、教えられているはずですが、いつの間にか忘れられているのが現状です。この結果、必要のない手術を行うケースが発生しています。

 子供さんの年齢が低ければ低いほど、非常に良く自然矯正されます(例えば新生児の鎖骨骨折は固定もせずに、自然治癒してしまいます)。
 "The younger,The better(若ければ若いほどより良く治る)は米国オハイオ州 Toledo大学 整形外科 Ebrahem教授の言葉です。
 
 小児骨折は、時に血管を巻き込む緊急手術を要するような骨折もありますが、多くは自然治癒の見込まれる骨折が多い事も知って頂きたいと思います。

 


 昨今の健康志向について

 中高年のスポーツブームが続いています。
 「筋肉を鍛える」事を謳い文句に会員を勧誘しているスポーツジムが各地に見られるようになりました。

 筋力アップ、大変結構な事です。

 ところがその方法を間違えて、背骨、関節を傷めてしまう方が続出しています。
 痛くもなかった腰、膝が痛くなり、医者通いとなって、何のためにジムに通ったのか、訳の分からない事にになっています。

 どうしてなのか?

 それは個々の方の足腰の状況を顧みず、一律に運動負荷を加えているに他なりません。
 特に器械を用いたトレーニングは、見た目もモダンで、人をやる気にさせます。しかし、どうでしょうか、本来このような器械を用いたトレーニングは、トレーナーの指導の下に、トレーニングメニューを決めてもらい、チェックを受けながら実施すべきものです。実際はどうでしょう。

 各人の足腰の状況は、本来医療機関で詳しくチェックすべきものです。これをまず無視していること、そして、一人に付きっ切りで指導する事はなく、初回だけ器械の使用方法を説明し、後は一律に各人を器械に乗せているだけではないでしょうか。このようないわば「大量生産的」なトレーニングをすれば、5分も経たず、関節軟骨や椎間板を傷める人が出てくることは必然の結果と言えます。
 
 ではどうすれば、筋力や健康を維持できるのか?
 
 歩けば良いといわれます。特に一万歩が目標だと聞きます。
 しかし最近の調査では、一日の歩数が1万2千歩を超えると、免疫機能が低下し、癌の発生が増える事が分かりました。つまり、やり過ぎは危険だ、という事になります。
 ではどの位歩けば良いのか、一日20分やや早足で歩けば十分という見解があります。

 私達はどうでしょうか、よほど出不精の人でなければ、一日20分程度は歩いているのではないでしょうか。最近出版された本で、長生きする人ほど運動しない、という趣旨のものがあります。つまり特別な運動をしなくとも長寿は得られるという訳です。考えてみれば、長寿だった、双子のきんさん、ぎんさん、スポーツをしていたとは聞きませんね。ニコニコしながら歩行器を押しながら歩いていたという印象です。

 どうか、お金と時間をついやして、健康を害するような「大量生産的」な運動はすぐにでも辞めて頂きたいというのが、このような患者さんを診るたびに私が思うことです。

 

 クスリについて

  最近、高齢者に対するクスリの種類の多さが問題になっています。
 東京のある公的病院の調査によると65歳以上の患者さんは、平均5剤のクスリを飲んでおり、10剤以上の多剤を飲んでいる方も2割近くいた、との報告がありました.

このような多剤投与では、薬剤の相互作用については殆ど検討されていないのが現状です。

最近わかってきた事は、クスリを減らすと元気になるお年寄りがいる事です。
実際に当院でも他院で、15種類のクスリを出されて、食欲もなくふらふらする、との事で、信頼する内科医に紹介したところ、4剤に減り、元気になりました。

 クスリは確かに、時には命を救う重要な治療手段の一つですが、どうでしょう、効果のない無駄な薬剤が山のように処方されているのが現実ではないでしょうか(小生は薬理効果が検証されていない薬剤は処方しない主義です)。

 当院では、なるべく内服薬を出さないのがモットーで、その理由は、クスリを使わずとも、改善する疾患があるからです。無駄な医療費は使いたくない、のが本音です。
 
 すべての医師が、本当に必要なクスリのみに絞って処方すれば、昨今の医療費の膨張にも歯止めがかかるはずですが、このような意識を持った医師が少ないことは残念です。

 
 交通事故について
  
 自動車事故で受診する患者さんは、昔から一定数存在しますが、最近気になるのは、全く症状がないのに、回りから医者へ行け、と言われ受診する人が多い事です。
 「後から症状が出ると大変だから」というのが理由のようですが、まず翌日までに症状がなければ心配ありません。そのような訳で当院では、「症状のない交通事故の方は受診無用」と明記してあります。
 昨今の自動車賠償責任保険の掛け金の上昇は無用な受診、そして被害者側にみられる治療期間の長期化が原因かと思われます。
 自動車事故の多くは極めて軽度の症状です。様子を見るだけで殆ど治ります。あわてて医療機関へ受診する必要は少ないと考えて下さい。

病気一口メモ
 


 腰痛ベルトについて
    腰痛の方で市販の腰痛ベルトを装着している方が多いと思います。
    その付け方が適切でない方を多く見受けます。
    
ベルトは痛い部位のレベルでつけている方が多いのですが、病変はその5-6cm上にあることが多いので痛む部位よりも少し高い位置で固定してみて下さい。

  外反母趾や扁平足の痛みについて
    多くの方は、足のアーチが失われて、平たい足になった障害です(開張足)。
    痛みを取るのに,簡単なテーピングが有効です。