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広い部屋だ。明るすぎもせず、暗すぎもせず適度な明るさを持った豪奢な部屋。歩く人の足音さえ全て吸収してしまうであろう素晴らしい絨毯が敷き詰められ、職人の手で丁寧に作りだされたクリスタルのグラスが輝いている。規則正しく並べられたテーブルには、美しく、そして美味であろう食事が置かれている。それらは正しく、高価な品々だ。だが、一般の人々の知る世界ではない。ここは限られた人間だけが入ることを許される、特別な空間なのである。
ざわざわと、人々の喧騒が聞こえる。口笛の音、感嘆の声、野次、罵声、声高に競売の金額は釣り上がっていく。
「50億でました。他、いらっしゃいませんか?」
司会の声がマイクを通して聞こえる。静かに、だが有無を言わせない強制力さえ感じさせる男の声だ。
「手に入れた私でさえ、信じられない一品です。天使なのに悪魔。悪魔なのに天使。どこにも居場所のない美しい”規格外”です。泣き声も絶品、歌声は正に天声」
朗々と詠うように男は続けながら、手を横へと広げる。広げた先にあるのは、粗末な牢屋だ。鉄の棒が一定間隔で立ち外界と内部を遮断する、悲しい空間。
そこに、彼女は居た。
黒い羽、美しいながら悲しげな瞳。悪魔の尻尾。体はハーネスで固定され、淫靡にさえ見える美しく整った玉体。体の下に広がる水に映るその姿は更に幻想さを増し、一度視線を向けたなら、誰しもそう簡単には目を逸らせまい。
「今日のお客さまは、幸運です。世に二つと無いこのような一品にめぐり合えたのですから」
言葉を切り、視線を向ける先は壊れそうな美のみ。
そう、恐怖と悲しみを綯交ぜにした美しさのみだった。
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黒天使

天使なのに悪魔の尻尾とはこれいかに?そして俺の大好きなハーネスでデコレーション。まさに何も考えず思いつくままに描いた絵って感じです。いつもはフォトショップとペインターを使いますが、これは久々にフォトショのみで描きました。

タカヒロさんからショート貰っちゃいました。きゃっほう。
嬉しさのあまり絵に横付け。
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