SPIRIT 1 運命の日
 
 今日は、異動内示日である。いうまでもなく、勤め人にとっては、一生を左右する運命の日である。それはそうだろう。紙

切れ1枚で、給料は変わる。通勤は変わる。人間関係もリセットできるとなれば、誰だって浮き足立って、仕事が手につか

ないお祭り状態になってしまうのは当たり前の話だ。誰もが課長からの呼び出しを待って、内心疑心暗鬼のどきどき状態

である。窓口に来た市民対応なんて後回だ。(市民のみなさま申し訳ありません。m(__)m)

 俺は本庁に5年間もいた。本庁勤めはエリートと思い込んでいる奴は世の中に多いが、それは出世欲を持つキャリアと

いう奴らだけだ。人間関係はギスギスするし、残業は多すぎたりでいいことなんてなんにもない。俺は今年こそと胸に秘め

ていた。そして、予想通り俺は呼ばれた。

 局長室前にはすでに数十人が列を作って並んでいた。

 「はい、つぎ!ああ、ケンゾー君か。ご苦労だったな。
良かったな、係長ポストに昇進だ。

君には区役所の保険センターに行ってもらう。
庶務係長だ。頑張ってくれたまえ。」

 「は、はあ?」

 「よしっ、つぎ!」

 こうして、義務的かつ機械的にスロケンという中間管理職が世に誕生した。 

                                                                                     
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