SPIRIT 11  昼休み


 キーンコンカンコーンと12時が鳴った。

「ねえ、今日どこ行く?」

「あのう、この書類を申請にきたのですが…」

 
5名の係員は、市民が来所したのを横目で見ながら、知らない顔

をして事務室の外へと消えて行った。


「はい、何でしょう?」

 昼休みの窓口はいつも俺だ。かろうじて課長も残っているが、『おもいっきりテレビ』を食い入るようにして見ていて窓口業

務はまったくしない。

 悲しいことにうちの係員は、昼休みとは事務室にいないときだと理解しているのだ。全体の奉仕者であるべく公務員がだ!

30・40代の♀公務員は、まさに無敵艦隊である。出世とは無縁の存在だから、怖いものなど何一つない。権利だけを主張

し、義務は平気で破るのだ。このクサレ権利ダニどもが!

 
13時過ぎ、ほとんど人のいなくなった職員食堂で、俺は1人飯

を食らう。食べるのは決まってカレーライスだ。
なぜなら定職やランチはすべて売り

切れてしまうからだ。周りを見ると、ポツポツと残って食べているのは、皆どこかで見た係長だけだ。俺だけじゃない!

しかしその姿はあまりに悲しい。いや、俺の背中も同じように寂しいのだろう・・・

 あゝ、皆さん!公務員っていう組織は、係長が魂を削ってなんとか保っているんです。
 

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