SPIRIT 30  乱入


 B樹は前バイトI美に比べたらまだまともだった。何せ「係長。」とお茶を入れてくれる。

「B樹さん!お茶は朝一回だけでいいのよ!わかった!」
 
…S江!よけいなことをいうなあああああああああ!(泣)


そんなこんなで1週間が経った。B樹はすっかり朝1のみのお茶入れになってしまったが、まあなんとか平穏無事な職場がよみがえった。

その矢先のことだった・・・。

「こんにちわあ!」

どこかで聞き覚えのある嫌な声・・・そう、I美だった。

「どうしたの?」

「ちょっといいですか。お願いがあってきたんです。」

「まあいい。ちょっとケーキ買って来いや。」

課長相変わらずですか。


「ちょっと聞いてくださいよお。今度の職場があんまりひどいんで、わたし止めちゃったんです。」

「へっ?!」

「1週間しか経っていないじゃない?」

「だって、夜9時までなんですよ。休みが取れないんです。他の子も止めちゃうんですよ。」

「もう少し頑張ってみたら。」さすがに我が係員もまともに諭す。

「いえ、今止めて来たんです。それでお願いがあって。」

あまりのことに我が無敵の係員も固まってしまっていた。

「また、ここで働かせてくれませんか。それと通勤のために買った車が不要になるので返したいんです。手伝ってくれません

か。」

「・・・。」

「だめだ。ケーキでも喰って帰るんだな。」

「ええ!なんでだめなんですか!」

「ダメなものはダメだ。帰れ!」

このときばかりはさすが体育会系の課長と思った。ドスの聞いた声。さすがは元全日本柔道高校選手権の覇者だ。

I美はしばらく未練たっぷりに居残っていたが、係員の誰も相手にされず、新しい臨職B樹を根目付くような視線で見るとすご

すごと帰っていった。


おい、I美これは俺からの忠告だ。人生なめるんじゃないぞ。この役所ゴロが。働くっていうのはな、そうたやすいものではい

んだぞ。汗をかいて報酬を得る行為をなんだと思っているんだ。新しい仕事のために頭金もなしに新車を買って、仕事やめ

たので車も返したいだと!このボケがああああああああ!きさまのような奴がなあ、やがておかあちゃんになるからなあ、

子供邪魔だからと虐待するんだあ!この夫合わないといって離婚するんだあ!ブランドもの欲しいといってローン組むんだ

あ!そして行き着く先は、自己破産で、生活保護を受けるんだあ!そして働くといって保育所に子供を預けてパチンコ三昧

で変な男に引っかかり、子供が邪魔になって虐待だ。ああ、目に見える。目に見えるなあ。お前には絶対幸せは訪れない

!せいぜい何の裏づけもない自分探しに精進するんだな!このくそ馬鹿娘が!(辛口)


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